-0話『世界の預言』
世界という言葉を多く使っているのですが、偉大なる魔法使いのことを、魔法使いたちは『世界』と称します。
そして、偉大なる魔法使いは、世界を創ることができる人を指します。
……へたくそですいません_(._.)_
「そう、君が一年前までいたところ。 ロンドンだ」
「いったいなにをしに?」
「君は、本当に知りたがりだね。 知識を求めるのはいいことだが、決してすべてを受け入れることなかれ、だよ」
「すみません。 また私はわがままを言ってしまいました」
「いや、いいさ。 仕事をしに、としか答えてあげれないを許してくれ」
「わかりました」
イングランド、ロンドン。
魔術師と魔法使いが数多のルールを決めた唯一と言える魔術都市。
そこにわざわざ私が呼び出された、ということは、都市になにかあったんだろう。
「ディアナ、良い子にしているんだよ。 いってきます」
「いってらっしゃい」
ディアナはいつもの声で、顔で、素振りで、私を送ってくれた。
一年前、ロンドンで大きな騒ぎがあった。
そのときも私は呼び出され、事の発端を知った。
「世界に隠し子がいる!?」
「声がでかいぞオズ」
同業者が教えてくれたそれは、とても衝撃的なもので、そして信じられないことだった。
「それで、その子は?」
「世界に捨てられた。 呪いとともにな」
「それで、この異常が起きたのか?」
「あぁ。 いくら魔術都市でも、世界の子供を留めさせるには小さすぎたんだ。 あの子を、世界の隠し子を早く見つけないと、きっとこの都市は壊されてしまう」
「ロンドンが、子供に?」
この都市を創った魔術師、偉大なる魔法使いである世界に、隠し子がいた。
それだけでも私は信じられていないのに、更にその隠し子はこの街を破壊するという。
「それで、どうすればいいんだ?」
「隠し子を見つけ出して、この世界から隔離するか、殺すかだ」
「世界は、なんて?」
「……なにも」
「……」
私は思ってしまった。
もしその子が生きたいと願っていたら。
そう思ってしまった私に、その子を殺すことはできないだろう。
「オズ、君には隠し子を任せる。 見つけたら好きにしてくれ。 僕たちは都市の異常の対処にあたる」
「わかった」
この言葉を使うのはあまり好まないが、それでも私はこのときだけは、こう言いたかった。
きっとそれは運命だったのかもしれない、と。
「こんな宵に子供一人で、どうしたんだい?お嬢さん」
昔の記憶に浸っていると、なぜか少しだけ切なくなる。
「私も年なのかな、涙脆くていけない」
私は目をこすり、足を踏み出す。
『___震え、震え、震え。 世界を震わせ真実を見せよ。 お前は私の、私はお前の世界を創るもの。 真実はすぐそこに、虚空の彼方より門を開け、光の使者よ___』
目の前に現れる門をくぐり抜け、私はディアナがいるこの世界から出ていく。
それはまばたきをするだけで終わる。
気がついたらすでにロンドンにいるような感覚だった。
そこに広がっていた光景は、教会のミサを開くための広場で、すでに椅子にはたくさんの魔術師と魔法使いがいた。
「オズ、遅かったじゃないか!」
「すまない。 少し朝食に時間をかけすぎた」
「君らしいと言えば君らしいが、あまり時間はない。 お、あそこに座ろうか。 ちょうど空いている」
同業者に連れられるように椅子に座ると、広場の中心に建っていた十字架が光を帯びる。
「あれは?」
「君は見るの初めてかい? あれは世界の預言さ。 この都市に起こる災害を教えてくれる」
「世界が?」
すると、光はますます強くなり、一つの映像を作っていく。
それは、この都市が割れて壊れて崩れていく映像で、一年前に世界の隠し子が都市にもたらした異常と同じものだった。
「これって……!?」
「まさか、またあいつが?」
「でも殺したって話じゃ?」
「じゃあ世界が?」
「世界はこの都市を守るためにこの預言を俺たちに見せたんだろ」
「じゃあ、いったいこの預言はなんなんだ?」
周りにいた人たちがざわめきだす。
「オズ、君のところにあの子はいるんだよな?」
「あぁ。 絶対に私の世界から出てはいけないと言ってあるからね」
それなのにこの預言は一年前と同じことを映している。
……まさか、ね。
たまたま読んでくださったかたは有難うございます_(._.)_