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刻印のアレリア  作者: 砂ノ城
第一の物語・月の姫
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四部六章《923年》ライ①

 王妃とフローラ姫の救出をルードさんに頼まれた俺とオウ、コウは、城への突入後すぐにその任を果たした。


 二人には魔族の護衛がつくわけでも、兵士の警備が厳重なわけでもなかったから、二人を連れて抜け出すのも難しいことではなかった。


 妹分の借りを返す意味でもフラウロスという魔族に用のある俺は城を出たあと王妃と姫をコウとオウに託し、城へ再び戻ることにする。


「ライ、私も……」


 ついてこようとするコウには、折れた腕を指差し、足手まといだと伝えて、止まらせた。


 戦闘が行われてるであろう正面からのルートは避け、脱出時と同じ道を逆へ戻り、王妃と姫のいた部屋の前へと戻る。


(この先か?)


 王の間はこの先のはずだが、狙いのフラウロスがいるとも限らない。もちろん、ルードさん達の敵は俺にとっても敵だから違うからと言って見逃すことはないのだが。


 フラウロスがいないとしても、王を確保することを目的としてるルードさんの手助けになるかと、王の間へと向かうことを決め、そちらに向かって走り出したが、その先から莫大な力の爆発のようなものを感じ、立ち止まる。


 なんだ今のは、そう思ったが邪悪なものは感じなかったため足を早めた。


 そして王の間へと続く広間についた時、広間には大穴が開き、奥には走るルードさんとレクスさんの姿、その手前には豹顔の魔族がいる。


「フラウロスーー!!!」


 手に持った槍に、槍の地刻印の力を込め、突進の勢いを込めてつき出す。


 振り返り咄嗟に両手の爪を重ねて防ごうとしたが、衝撃までは防げず、吹き飛んだフラウロスは穴へと落ちることとなる。


 俺は躊躇うことなく飛び降り、槍を上から突き出す。


 重力の力に、飛び降りる勢いも乗せ、放たれる一撃はフラウロスの左肩へと突き刺さり、腕を弾き飛ばした。


「ぐっ……」


 バランスを崩し、着地にも失敗するかと思ったが、猫科の獣のように器用に着地したフラウロス。


 そのように着地出来るわけもない人間の俺は、床へと槍の刻印の力で衝撃を放ち、その反動を利用して着地する。


 落ちてくる途中、視界に一瞬ルードさんの父上と将軍の姿が見えた。勝利をおさめたように感じた。


 だが、そんなことを気にする余裕もなく武器をかまえる。


 フラウロスも片腕を失いながらも、それほどダメージを受けた様子もなく立ち上がるとこちらへと駆け出す。


「きさまァァァ、よくも私の腕をォォォ」


 怒りの感情を全身で表すかのような勢いを持った突進を槍でいなして避けるが、すぐにこちらへと向かい、再び突進してくる。


「妹分の借りは返したが、それだけじゃ終わらせるつもりはないぞ」


 コウの折られた腕の借りは返したが、ここで退却して倒さない選択肢はない。


 しかし不意をうち腕を奪ったが、それでも奴の戦力は俺一人よりは遥かに上だ。せめてもう一人味方がいれば。


(コウを連れてくるべきだったか)


 そう一瞬頭をよぎったが、頭を振って否定する。


 あいつをまたこんな危険な目に合わせてたまるか。


「妹分、先日城でお会いした彼女のことですかねェェェ」


 叫びながらも、フラウロスの猛攻は止まることを知らない。


「ああ、そうだ。妹分の折られた腕の借りは代えさせてもらったぞ」


「折った程度で腕を吹き飛ばされるのでは割には合いませんねぇ」


 まあ、そりゃそうだろうが敵同士なんだ。


「どうせ生えてきたりするんじゃないのか」


 余裕こそないが、軽口を叩くと鼻で笑ってフラウロスが答える。


「魔族をなんだと思ってるのかしりませんが、失った手足が生えてくるわけないでしょうが」


 生えてきてもなんも不思議じゃないけどな。


 次々と槍を突き出すが、残った右腕の爪で器用に払いのけられる。


「おっと……」


 唾を吐くように、勢いよく吐き出したのは小さな炎の塊だった。


「危ない真似をしてくれるじゃないか、床……溶けてるぞ」


「よく避けましたね、普通の人間なら当たれば貫けるだけのものなのですが、唾だと思っていては戦闘中に気をそらしてまで避けようとはしないものなのです」


 そうでもないと思うが、こいつが以前戦ったのは千年前の勇者たちだろう。物語に語られるような勇猛果敢な勇者たちなら、そんなこともあるのかもしれない。


「単なる唾だったとしても避けるよ、俺は。それで結果的に助かったわけだし」


「あなたは思った以上にやるようだ、ルードといったか、彼と同等かそれ以上といったところでしょうか」


 単なる感想なのだろうが、それは買い被りすぎだ。


「あの人は俺なんか足元にも及ばないくらい強い人だ」


「謙遜なさらずともよい! この私が認めてさしあげますよ」


 口から大きな炎を球状にして吐き出す。


 それはふわふわと浮き上がり、そこへ停滞した。


「なんのつもりだ」


 それを2つ、3つと生み出していくフラウロス。


「まあ私の必殺技とでもいいましょうか」


 そう言った時には九つの炎の球が、私に向かって放たれた。


「どうぞ、お召し上がりくださいなー!!」

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