四部三章《923年》ルード①
城への突入時とは違い、三階へ到着した時には私とレクスの二人となっていた。
二階では父達と魔族……孔雀のような姿をしていたことから、おそらくアンドレアルフスだと思うが……の戦闘音が響く。
同じく一階ではオババが魔族を引き付けてくれてるはずだし、ライ達は王妃とフローラ様を助け出そうと動いてくれてるはずだ。
「ルード、みんなが気になるのは分かるが先を急ぐぞ。こっから先、俺達だけでってなると敵に時間を与えると正直しんどいんだ」
城の階段部分にそれぞれ一人ずつ魔族が待ち構えてたことから、こちらの突入に備えてたことは明らかだ。この先、王へ向かう道にも当然、魔族、もしくは多くの魔物がいるのだろう。
だが、それでも今はまだ少ないはず、これから時間をかければかけただけさらに多くの魔族などが集りかねない。
「ああ、わかってる」
オババのかけてくれた認識阻害の魔術もアンドレアルフスとの戦闘のせいで解け、魔物の類いにも認識されるのだ、後ろを気にしてる場合ではない。
もしオババが、もし父達が敗れればその魔族達も当然上へと向かってくるだろう。
だから、時間を稼いでくれてる間に王を押さえなくてならない。
「なら、急ぐぞ」
早足から、駆け足へとシフトするレオスに続く。
たどり着いた王の間へと続く広間にはローブ姿の二人、いや二体が居た。
「おいおい、こいつら魔物じゃなく魔族だよなぁ。それが二体とは」
レクスも気配で両方魔族であると察して警戒を強める。
そのうちの一体は私には感じたことのある気配だった。
「フラウロス、ですね。もう一人はどなたですか?」
尋ねると笑い声をあげてローブを外すとフラウロスが豹の顔をこちらへ見せた。
「私のことを覚えていていただけたようで何よりです。あの時、あなたときちんと戦えなかったのは残念だったので再会できて私も嬉しい限りですよ」
「逃げた私にたいする皮肉か?」
「いいえ、本心ですよ。もちろん、今度こそ討たせてもらいますが」
棍を組み上げ、フラウロスと対峙する。フラウロスも同じく爪をかまえた。
そんな私とフラウロスに呆れたレクスの声が届く。
「あのさー、そっちの魔族さんつまらなげだけど、別にいいのか?」
言われて気づいたのかフラウロスはローブ姿の魔族の方を向いて頭を下げた。
「おっと、失礼しましたアンドラス、では自己紹介の方をどうぞ」
言われたローブ姿の魔族はおおげさに頭をかくと、ローブを脱ぎ去り、その姿を現す。
体格のいい人間に近い体つきに翼を生やし、顔は烏、その手には黒い剣が握られていた。
「話の振り方下手くそかよ、というか先に名前を呼ぶな」
「おっと、これまた失礼しました」
「まあ、いいけどな。俺の名はアンドラス、強い剣士と戦えることを楽しみに生きてる男だ、そっちの剣の、期待してよいか?」
私ではなく剣を持つレクスを標的に選んだようだ。
二対二のこの状況でも不利だが、一対一はさらに不利に働くだろう。
元々、私とレクスの二人でフラウロスと互角という見立てだったのだ。
「おう、俺の相手はお前か」
剣を構え、アンドラスと対峙するレクス。
まずいな、このまま一対一でっていうのは。だが、アンドラスに関しては伝え聞く話とは少しズレがある……まずは様子を見るか。
アンドラスに警戒はしつつ、フラウロスと向かい合う。
「始めてもよろしいですかね?」
律儀に尋ねてくるフラウロスに苦笑を返す。
「ああ、やろうか」
棍を構える。あの時も感じたが、こいつは私より強い。
だが今回は撤退することを考えて戦う訳にはいかない。
「では行きますよ!」
獣の瞬発力を持って飛びかかってくるフラウロス。両手の刃のような爪が左右交互に襲いかかるのを、棍で必死に防ぐ。
一本の長い棍より短く二本の方が耐えやすいかと、真ん中で分離し両手に一本ずつ構える。
棒術とは少し違うが、二刀流で戦うやり方も経験済みだから問題はない。
「やりますね、ではこれならどうですか」
左右からの攻撃を両手に持った棍で正面から弾き返してると、フラウロスは大きく開いた口から球形の炎を吐き出した。
「くっ」
フラウロスの爪を大きく弾き、横に転がって避ける。
「ほう、よく避けましたね」
「知ってはいたのでね、いつ出すかは警戒していた」
私の言葉に初めて出会った時のような興味深そうな表情を浮かべた。
「本当にあなたは私達のことにお詳しいのですね」
豹の顔をひどく歪ませて笑うフラウロス。
「ですが、ここまでですね! やれアンドラス」
フラウロスの言葉に、レクスと戦闘を繰り返してたアンドラスから影のように生み出された狼が私に向かって襲いかかってくる。




