四部二章《923年》オウロ②
全身を回転させながら無数の剣を叩きつけてくるアンドレアルフスの攻撃を防ぐレオス。回転しながら前進してきてたが、レオスの大剣を前に止まりその場で回転を繰り返す。
「あれってどっちよ、ダブルの方か」
あれとしか言わなかったが言いたいことは伝わったらしく、攻撃を防ぐ体勢のまま、合わせ技のどちらかを尋ねてきた。
「いやクロスの方だ」
私は剣の人刻印の力で弱めの斬撃を飛ばし、アンドレアルフスがそれをどう弾くか、どう防ぐかを試しつつ確認しながら答える。
「まあ、ダブルが出来るならその方がいいんだがな」
動きの鈍い敵が相手ならダブル、つまり同じところに同じ太刀筋の刻印の力を込めた斬撃を打ち込むことも可能だが、こいつ相手では難しい。
「わかった、クロスの方か」
クロスは交差させるように打ち込み、斬撃を相手の中心にて交わらせることで威力を上げる技だ。どちらにしても、呼吸を合わせられる相手とでないと出来ないものだが、長い付き合いだからそこら辺はお互いに相手に合わせられる。
「あー、クロスの理由を聞いてる余裕はないか」
話すにしても、この騒音で聞き取りにくいしな。
防がれてることが気にさわったのか回転の速度を増してきていて、アンドレアルフスの無数の剣の翼がレオスの大剣に弾かれる音で賑やかだ。
「いったん距離を取れるか、レオス」
「難しいな、離れようにもついてくるだろ」
そうだろうな、前進を防いでるといってもアンドレアルフスの攻撃を止められているわけではない。
「ふふふ、何をする気かはわかりませんが、距離を取るのが狙いと分かっていて、そう簡単に思うようにはさせませんよ!」
回転しながらなのでぼやけた声になっているが、アンドレアルフスが言葉を発す。
「あ、聞こえてるのか」
「もちろんですとも」
回転をゆるめることもなく答えるアンドレアルフス。
そんなアンドレアルフスを興味深げに観察しているレオス。チャンスを見計らってるのかと思ったが、
「ところでさ、それ目が回ったりしないのか?」
との言葉に、心の中でツッコミを入れる。
レオスよ、疑問にもつのはそこなのか。
自分も昔似たようなことしようとしたことあったからか。
「面白いことを言いますね、自分の技で目を回す馬鹿もいないと思いますが」
「……ああ、そうね、うん」
言わないでやってほしい、乱戦でぐるぐる剣を振り回して、目を回して倒れたやつがここにいるので。
さて、どうするか。距離を取らずにあれをやるにはリスクも大きいのだが。
くそ、一瞬でも奴が何かに気を取らてくれれば。
その願いは叶った、思いもしなかった形で。
光の渦のようなものが衝撃をもって階下から階上へと突き抜けていった。
「なん……だ、ありゃ」
声をあげるレオス、私も声を出さないまでもそちらに注意を払ってしまう。
そして気付いた、目を向けていた方角でそれが起きた私たちと違い、自分が攻撃によって前進をしようといていた後方での出来事に、回転していたアンドレアルフスは動きを止め、こちらに背中を向けている。
私が一足先に剣を振りかぶり刻印の力を高めていくと、レオスも私に気付き、剣を振りかぶり、同じ力を高めていく。
それは一分にも満たない時間だったが、アンドレアルフスの見せた隙をついて私達は技を放つ。
「レオス!! ダブルでいくぞ」
動きを止めているアンドレアルフスならば、クロスでなくても合わせられる。
「おうよ!」
声を出したことで、私達の存在を思い出したのか振り返ったアンドレアルフスは剣を振りかぶっている私達を見て六本の剣を頭上で交差させるように防御の構えを取った。
『喰らえ!!』
懐かしいかけ声と共に振り下ろされる剣は刻印による衝撃を、飛ぶ剣撃として形にした。
二人から放たれたそれは、混じりあい、大きくなり、直進していく。
「これは……まずいですね」
声をあげたが、慌てる様子のないアンドレアルフス。
「おい、ギリギリ避けられるんじゃないかこれ」
逆に慌てているレオスの言葉に私は笑みを返す。
「なにっ」
足を影に捕らわれ、動けないことに気付いたアンドレアルフスだが、もう遅い。
「そんな……馬鹿な……」
避けられないと悟り、防御の覚悟を決めたようだが、防げるものではない。
構えた六本の剣ごと、体の真ん中から一刀両断にされたアンドレアルフスはそのまま倒れた。
「俺達をナメたからだな」
「いいや、駆けつけてくれたコウのおかげだな」
調子に乗りカッコつけるレオスは私がそう言うと、コウの存在に気付いたらしく手を振った。
それに少し恥ずかしそうに手を上げ、コウは応じた。




