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刻印のアレリア  作者: 砂ノ城
第一の物語・月の姫
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3部4章《923年》ルード②

 魔族フラウロスの出現。


 それによって、予定より遅くなってしまったが、オババの協力も得て、城へと攻め込むことを決めた。



 城を襲撃する当日、日が落ちてから皆と合流した。


 城を包囲するための兵は、王都の民に紛れて準備してる。私の合図で城の出入口を押さえる手筈になっている。


「で、どう攻めるつもりなんだ?」


 城の正門前には例のローブの者達と兵士がいる。


 そこから、少し離れた正門からは見えない位置にレオス将軍、父、オババ、レクス、ライ達三人と私はいた。


「親父、あんま焦んなって、もういい歳なんだから落ち着けよ」


 父のレオス将軍にたいしてそう言ったレクスは拳骨を喰らい頭をかかえることになった。


「痛ってえなくそ親父! 殴ることねえだろ!」


「黙れ小僧、誰に向かって口聞いてんだ」


「お前も黙れレオス、話が進まんだろう」


 掴み合いの親子喧嘩に発展しそうになった二人を、腕を組んだ父が威圧して黙らせる。


「続けろ」


 父に促され、話を続けることにするが、何から話すか。


「魔族の出現については聞いているかな?」


 頷く父とレオス将軍。


「フラウロスという魔族と戦ったその後、ライに城を探ってもらった。コウのことがあるから、直接ではなく城に出入りしている人間を使って、だが。そして、いくつか分かったことがある」


 ライに目を向け、話を振った。


 言いたいことを察したのか頷く。


「じゃ自分が続けるっす、城には少なくとも三人の魔族が居ます。それと人型に化けれる魔物が数体と、操られてると思われる人間が数十人。ローブの奴らのことは知ってると思いますが、そいつらはほとんどがまともな人間ではないっす」


「魔族だの魔物なんて二十年くらいまえに見たっきりだと思ってたが、王の周りにはずっと居たってことなのか?」


 レオス将軍の問いに、私は答えることが出来ない。


 ローブの不審な者達は確かに王の周りに居た、しかし魔族の気配を知った現在、あれに気づかずにいたとは思えない。


「私やレオスも出入りしていてあの気配に気づかなかったのだ、魔族に関しては城に入ったのはここ最近なのかもしれないな。奴らの生態などわかったものではないし、城に居た魔物が呼び出したのかもしれぬ」


「ずっと居たかどうかなんて大きな問題はありません、今居るかどうかが問題で。今は居るのです、間違いなく」


「相対してみてどうだったのだ、お前なら勝てないまでも相手の力くらいは把握出来ているんだろう」


 父に頷く。


「フラウロスという魔族は私とレオスでなんとかなるかと、ですが他にあと二体はいると考えてます。同時期に出現する魔族にそれほど力の差がないという話が本当であるなら、父上とレオス将軍の二人がかりなら戦えると思います」


「そうか、なら一体は俺とオウロに任せとけ」


 胸に手を当て請け負うレオス将軍。


 問題はもう一体はいるであろう魔族だ。


「オババ、本当に危なくなったら逃げてかまわない、魔族を一体引き付けるだけ引き付けてもらえるか」


 こんなこと頼みたくはなかった、だが……。


「わかっておるよ、友人の部下を危険な目には合わせられぬということであろう、ワシに任せておくのじゃ」


 オババはおそらく命懸けで引き受けてくれるだろうことは分かっていた、だからこそ頼りたくなくて、それでも頼らざるを得なかった。


「ルードさん、私達も……!」


 コウの言葉を手で遮る。


「コウ、ライ、オウ、三人にはフローラ様と王妃であるルナ様を救出してほしい」


 父やレオス将軍も、フローラ様と王妃様のことは助けたいと思っている。


 ローレル様とフローラ様の曾祖母で、王妃の祖母であるオババもそうだ。


 ヴォイドの部下を危険に晒したくないというのも本音だが。


 納得出来ない様子のライとコウにオウが無言で何かを伝えてる。


「……わかりました、お二人のことは任せてください」


 ライはそう言うと、私を強く見つめた。


「ですが、二人を助けたあとはかけつけてみせます、ルードさんは殿にとって大切な友達です、殿を悲しませるわけにはいかないんで」


 これ以上は何を言っても無駄だとわかった。


 それにこれから先は時間との戦いにもなる、二人を助け出した時にはすべてを終わらせているくらいでないといろいろとまずいことになる。


「わかった、その時は頼む」


 皆で顔を見合わせて、突入の決意を固める


「正面から攻め込み、現れるであろう魔族にまずオババ、そして父上とレオス将軍、次に私とレクスが当たる。倒し次第、王の元へ向かい捕らえる」


 魔族が三体というのも甘い予測かも知れない。


 同時に各門から攻め込む兵士たちでは相手はできない以上、各自が状況で動きを変えねばならないだろう、しかしこれ以上は話して決めれることではない。


「行こう、みんな死なないでほしい、国を取り戻せても皆が居なかったらローレル様も悲しむ」


 優しい方だ、誰かが傷ついたことを知ればきっと自分を追い込んでしまう。



 城の周囲に潜ませてある味方の兵に各門からそれぞれ攻め込ませる指示を出し、私達八人と兵士十人で正門から攻める。


「正門突破後、ライ達三人は状況次第では別行動でもかまわない、フローラ様と王妃を頼む」


 私の言葉に頷く三人。


 では行くか、と声をかけようとした私にオババが制止をかける。


「待て、正面から行くにしても認識されにくくする魔術をかける、少し待つのじゃ」


 月の天刻印の力は既にローレル様にほとんど渡っているが、数々の刻印を特殊なインクで描いた三枚のカードを使った魔術を使うことの出来るオババ。


「影のカード、森のカード、亀のカードよ」


 三枚のカードは光を放ち、この場にいるもの達を暖かい光が包んだ。


 カードの魔術もオババに教えは受けている私だが、三枚のカードの組み合わせで発動させる魔術は奥が深く総てを学べてはいない。


 いずれ失われる天刻印であったためにオババは失ったあとのことも考え学んだそうだが、私の地刻印は死ぬまで磨き続けられるため、そちらを極めることを勧められたからだ。


「この魔術で敵対的な者、こちらが気づかれたくないと思う者には認識されにくくなるのじゃが、勢いよく動く、攻撃的な行為を行うと気付かれおるし、その時点で魔術の効果を失うのでな、気を付けるがよかろう」


「ありがたい」


 私よりオババとの付き合いの長い父が礼を述べる。私も頭を下げておく。


「あらためて、行くとするか」


「おうよ!」


 返事をしたのはレクスだけで、他の皆は頷きで返した。



 両脇に兵士の居た正門を何事もなく抜けたあとは、庭を通り城内へと向かう。ライ達三人とはここで分かれ、フローラ様と王妃の元へ向かってもらうことにする。


 オババに兵を預けようとしたが、一人の方が時間を稼いで逃げるにしても楽だということなので、父達と私達にそれぞれ五人ずつ割り振る。


 魔族との戦闘には参加出来ないまでも、関係のない周りの人間を戦闘から遠ざけることは出来るからである。


 魔物や魔族の居ることを私達は知っているが、操られても気づいてもいない文官や使用人、貴族達も中には居るのだ。


「オババ」


 城を進むとまず一人目と思われる魔族と遭遇した。


 例のローブ姿であるが、体格が今まで見た者達より大分良い。レオス将軍よりも大きいくらいだ。


「わかっておるよ、お主らはその前進むのじゃ。通り抜けたあとはワシが相手をする」


 階段前に陣取るように立つ魔族の横を通り、階段をあがる。魔術が解けぬよう、ゆっくりと進むのは心臓に悪かった。


 そして私は気づいてしまった。


 この魔族は私達に気づいていて素通りさせたことに。


 すまない、オババ。死なないでほしい。


 任せると決めた以上、ここに残って戦うことは出来ない。それでもせめてオババが無事生き残ってくれることを願う。


 私達が階段を上りきり振り返ると、ローブの者は魔術のようなものを発動し、黒馬を召喚すると飛び上がるように跨がり、ローブを外した。馬と同じく召喚したものなのか長く大きな馬上槍を構えた黒の鎧の騎士となった。


「ルード……」


 心配そうに言うレクス。


 オババのことをどうするかではなく、オババの元へ駆けそうになる私にかけた言葉だろう。


「分かっているさ」


 唇を噛みしめ、前を向く。王の元へ向かうのだ。



 二階部分を気付かれず抜け、三階への階段へと到達すると二人目の魔族との遭遇が待っていた。


「奴が二人目か」


「俺達が相手をすればいいんだろう」


 父とレオス将軍に任せて、先程と同じように脇を通り抜ける。


 が、殺気を感じて飛び退く。


「ルードっ!」


 レクスが大声で私を呼ぶ。


「大丈夫だ、当たってない」


 まくり上がるローブから飛び出てきた無数の剣は私の方へと向かってきた、咄嗟に影と棍で払うことで直撃したものはなかったが、床や壁に突き刺さっている。


「やはり認識阻害の魔術でも魔族を相手には通じていないか」


「それに戦ってしまった以上は」


「ああ、ここから先は魔族だけでなく他の者にも気付かれずとはいかないな」


 避けるためにバランスを崩し膝をついていた私は、駆け寄ってきたレクスの手を借り体勢を立て直す。


「ルード、レクス、そのまま行け」


 ここで残って戦うべきかと思っていた私に、レオス将軍の言葉がかかった。父の方を見ると、父も行けと伝えてきた。


「孔雀みたいだが、すごい羽だな、全部剣かそれ?」


 魔族相手に臆することなく話しかけるレオス将軍。


 ローブを取った魔族の姿は人の形をした孔雀のようであり、背中には羽のような剣を無数に背負っていた。


「私の翼に興味がおありとは、いい趣味をしておりますね」


 言葉を返す魔族。


「そいつら通してやってくれるか? まだ先にも魔族、いるんだろ」


 ここで通してもその魔族が始末するだろ、とレオス将軍が言うと孔雀のような魔族は笑った。


「確かに確かに、私が独り占めしてしまっては彼がつまらないでしょう、どうぞお通りください」


 階段の端へ寄ると本当に道を開けてくる魔族の横を警戒しながらも抜ける。


「親父! 死ぬなよな」


 振り返り叫ぶレクスに、レオス将軍はにやりと笑みを浮かべた。


「お前らもな」


 私も何か父に声を、とも思ったが目があったことですべて伝わった。


 ここから先、隠れて進めない以上は危険だと兵士達とはここで分かれ、レクスと二人で先へと進む。

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