第1章19 「催眠術師クロネコ」
俺は早速、地図に書かれてた「研究所」と呼ばれる場所に行く事にした。
送り主の名前はニックネームで「クロネコ」と書かれていた。男性らしい。
でも、よく見たら見た事ある地図だなと思っていた。
で、行ってみて途中で気付いたのだが、俺が入院していた病院だった。
中に入ってメールを送り、暫く待ってた。
「青柳君待っていたよ」
俺は目を疑った。男性だと言っていたのに、そこに立っていたのは、女性だった。
「えーと、もしや貴女が「クロネコ」さん?」
「そうだよ?」
もう1つ目を疑った事がある。それは、どう見ても小学生にしか見えないのに、白衣を着て、しかもスタッフの名札まで下げているのだから。
「えーと、それ本物ですか?」
「失敬な!!私は30だぞ!!」
「そんな大きな声ださなくても」
そして、「クロネコ」と呼ばれる女性は静かに息を吐くように話を切り出した。
「で?君は異世界に行きたいのかい?」
そう言われると、俺の表情も自然と真剣になった。
「ええ、行きたいのではなく、行かなきゃ駄目なんです」
「ちょっと来たまえ」
そう言われ、案内された先に1つの部屋があった。
入るとまるで、図書館の様だった。入院していた時にはこんな部屋想像もしなかったのに。
「驚いたか?まぁ座って、コーヒーでも飲んでくれ」
そう言いながら差し出したコーヒーの味は異世界で飲んだコーヒーに似ていた。
「まず、始めに…」
「私の名前は、黒川 茜だ」
「ああ、だからクロネコ…」
「まぁ、そうなる」
「青柳君…」
「はい」
「君の異世界はどんな国だった?」
「国ですか?」
「正確には国名を教えてくれ」
「バーンクロス国です」
「…」
「どうかされましたか?」
「いや、やっぱりなと思ってな」
「え?黒川さん知ってるんですか?」
「知ってるも何も、私も行った」
「え?」
それは衝撃的な言葉だった。茜の「行った」という言葉に。
そう、あれは俺の空想の世界ではなかったという事。それが今、はっきりと分かった。
「じゃあ、俺が行ってたのは…」
「君の空想ではなく、本物の異世界だ」
「もっと詳しく言うと、異世界のまた昔という事だ」
「昔?」
「異世界にも我々が住んでいる世界みたいに、過去と未来がある。バーンクロスの時代は過去の世界なのだよ」
「そんな事まで分かっているなんて…」
「私は、5年居たからな」
「5年!?」
俺の4ヶ月でも長いと思ったのに、茜は5年も居たのだ。
そら、あの世界についても詳しくなるはすだ。
「で、帰って来てから情報を集めた。そこで同じ異世界に行ったという人から話を聞いて、その人の場合はバーンクロスが昔の国名だったという事らしい」
「まぁ真意は分からぬがな」
「本当に不思議な世界だったんですね…」
「不思議といえば、青柳君、君はあの世界で異変に気付いたかい?」
「異変ですか?」
少し考える素振りをしながら、茜はこう答えた。
「例えば…銃の作り方…とか?」
俺はこの後、茜の本当の正体を知るのだった。
to be continued…




