プロローグな日常ー2
なんか、もう一つのほうより書けるような......おぅふ
キィキー!!! ドォン!
その音が全ての始まりだった。
俺は17歳の誕生日に両親とドライブに出掛けた、その帰り道。
「優一。お前もあと1年で18歳か......早いものだな。」
「そうね、子供の成長は早いものだわ」
「そうだね。あっ、そうだ! 父さん母さん次のパーキングエリアで飲み物買ってもいい?」
「俺も喉が渇いていたところだ、お金あげるからお父さんのぶんも買ってきてくれないか?」
「いいよ」
そして、俺達一家はパーキングエリアに着き、俺は一人自販機へ向かった。その時だったーーーー
キィキー!!! ドォン!
突如後ろの方で爆音が鳴り響いき、熱風が肌を撫でる。俺は何事かと後ろを振り向いた。そこにはーーーー
「う、嘘だろ? 父さん? 母さん?」
大型トラックに衝突され、大破し炎上する我が家の車が目に写った。俺はそれを見て我を失い車の方へと走り出した。
そして、車内には気絶し炎に焼かれる両親の姿が、
「熱っ、クソが! 今助けるぞ」
火事場の馬鹿力とはまさにこの事、俺は割れた窓ガラスを蹴りで粉砕しそこから、父親を掴み外へと放り投げた。続いて母親を助け出そうと、逆方向へ回り込もうとしたその時だった。
バァン!!
「・・・えっ?」
火によりガソリンとエンジンが引火したかは分からないが大爆発が起こり俺は吹き飛ばされ、そのまま意識を失った......
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
「ここは?」
目を覚ますと、そこは真っ白な空間だった。一瞬病院かと思ったがそうではないらしい。何故なら、
「やあ、気分はどうだい?」
「あ、貴女はいったい?」
目の前には、この世のものとは思えない程の美少女がいたからだ。その流れるような艶やかな金髪の輝きは黄金すらも霞んで見える。そして、まるで職人が精巧に作った人形のように整った顔は一つの美術品のようで、その瞳は美しい深紅で見つめるものを魅了する、そんな美しさを秘めていた。体は、貫頭着の上からでも分かるほどのモデル体型で胸もほどよくあり、上品さを醸し出し、その全身からは神々しさを感じられる。ただーーーー
「その、鎖は何なのですか?」
「ん? これかい」
その女性は俺の問いに対して、体に繋がれた鎖の一つをジャラリと持ち上げて見せた。その鎖は、四肢に胴体、首、そして心臓がある部分、系7つの鎖が女性には繋がっていた。
俺が不思議そうに見詰めていると、
「これはね、私を封印した神達が付けたものなんだ。君には、この鎖を取って貰いたくて、呼び出したって訳。」
「呼び出すって、何で俺なんですか? それにどうして封印なんて? それに貴女の名前は?」
女性はそんなにいっぺんに答えられないよとやれやれという感じに首を振ると、
「じゃあ、順を追って話そうか。私の名前は邪神サタナエル。かつて、他の神々を滅ぼそうと神界を荒らし回った邪神さ。」
「はい? じゃ、邪神!?」
何を言ってるんだこの人、いや女神か。というより、邪神ならあの鎖はどう見ても封印するための物。取ったらマズくないか?
サタナエルは俺が警戒したのを察したのか、優しく微笑むと、
「君、涼乃優一君だっけ? 両親を助けたくない?」
「それはどういうこと......?」
「これをご覧」
そう言うとサタナエルは一枚の鏡のようなスクリーンを取り出す。俺はそこに映った映像に言葉を失った。何故なら、そのスクリーンには火傷により皮膚が爛れ、チューブに繋がれ眠っている両親の姿が映っていたからだ。二人とも包帯に巻かれ顔はよく分からないが、あれは俺の両親という確信が何故かあった。
「うっ......!」
俺はその映像を見て、喪失感と絶望感を交ぜ合わせたような気持ち悪さに吐き気を覚える。あまりにもリアル、でも信じられない、これは嘘だ、どうして? 様々な葛藤が頭をぐちゃぐちゃにする。
そういえば、両親がここに居るということは俺は何処に居るのだろうか? まさか死んだ?
「はぁっ......はぁっ......。ふー、さ、サタナエル。こ、これはいったい? それに俺は何処に?」
「目の前でリバースは困るよ。まあ、堪えたみたいだけど。」
俺はなんとか吐き気を堪え質問を口に出す。その姿を見てサタナエルは痛みを堪える子供を褒めるように言うと、質問に答えてきた。
「この映像は君の両親の現状さ、いやーもっと軽くするつもりだったんだけど、私この状態だろ? 加減間違えちゃってごめんごめん」
「ーーーーはっ? サタナエル、それはいったいどういうことなんだ?」
「あっ、言ってなかったね。簡潔に纏めて話すと君達涼乃一家が事故にあったのは私のせいってことだよ。それと君は今、火傷して治療中だけど命に別状は無いようだよ。でも、君の両親は風前の灯って感じかな~。このままいけば確実に死ぬ」
俺はその言葉を聞き、一瞬にして頭が真っ白になり心の奥底からタールのようにどす黒く、溶岩のように燃えたぎる怒りと殺意が沸き上がって来るのを感じた。
そうか、こいつが、こいつのせいで......父さんは......母さんは......許せない......殺さなきゃ。
「おや? そんな怖い顔してどうしたんだい?」
サタナエルは俺が顔を怒りに染め、殺意の籠った視線を向けるとまるで、おどけるように飄々と此方を見てきた。
とても愉しそうに。
「ああ゛ああ"あ"ああ"ああ"あ"あ"ぁあ!!!!! お前のせいかぁ!!!!!」
俺はサタナエルに向け拳を振りかぶる。こいつは鎖に繋がれて動けないはずだ。なぶり殺しにしてやる。
「全く、せっかちだな。神様の話は最後まで聞くものだよ。ーーーー『ひれ伏せ』」
サタナエルは拳が自身の顔に当たる瞬間、呆れたように言うと一瞬目を瞑り言葉を口にしたーーーー『ひれ伏せ』と。
その瞬間、体が言うことを聞かなくなりどんなに力を振り絞ろうとしてもまるで体が石のように硬直し俺は床に四肢を着き倒れることになった。
サタナエルの眼は白目の部分が禍々しい黒に染まり、俺のことをまるで道端に落ちているゴミを見るような凍てつくような視線を向けると、
「さて、涼乃優一よ。お前には2つの選択しがある。
1つ目は、このまま両親の死を待つ。
2つ目は、私の封印を解くための道具となる。
私は慈悲深いからな。選択させてやる。選べ。」
「も、もし、2を選択してお前を復活させることが出来れば?」
サタナエルは、俺の問いに対してフッ、口を微かに歪め嗤うとさも当たり前のように続ける。
「お前の両親を助けてやろう。勿論、後遺症が残らないようにしてやる」
このまま二人の死を待つ? 冗談ではない。最愛の両親を救うためならこの邪神に魂を売っても構わない。もし、他の誰かが邪魔をするというのなら、神であろうと相手になってやる。
俺はサタナエルの拘束からなんとか頭のみを上に持ち上げ答える。
「2で頼む! 二人を助けるためならなんだってしてやる!」
「フフッ。交渉成立だな」
サタナエルはその美しい顔を醜悪と思えるほど、口を釣り上げて嗤うと手をかざし俺の拘束を解く。俺を見詰めるその瞳は元に戻りさっきまでの禍々しい雰囲気が嘘だったように消え失せ、優しく飄々とした雰囲気へと変化している。
「では、改めて。ごほん! 我が下僕、涼乃優一いや......アルスよ! 我の為にその身を、魂を捧げるがいい!」
こうして、俺は両親を助けるため異世界に転移することになったのだ。
アドバイスや指摘等頂けるとありがたいです!
次の話も頑張ります! よろしくお願いします