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経験者

 バルラが辺りに血肉をまき散らしながら倒れ伏し、内部からリンが這い出してきた。

 ……何というか、昔に見た宇宙生物の映画みたいだな。


『うぉおあ……』

『どうした、大丈夫か?』


 リンが頭の中で変な声を上げている。スキルとギフトの連続使用で何かしら後遺症でも出たのか。


『いや、何というか、ステータス見たらすごい勢いでレベルが上がってた』

『……あー。そりゃ、バルラなんて大物倒したんだったらな』


 あのバルラがどの程度の強さなのかは知らないが、リンより遥か格上なのは間違いない。というか、これってシグルドさんの方はレベル上がるのか?

 ……そうだ、シグルドさんは助かったんだろうか。トランさんは取り乱しているようには見えないけど。


「……ん、う」

「おや、起きそうですね」


 バルラの破裂した音を聞いたからか、少女がむずがる様子を見せている。


「ハーモニーはその子の相手しといてください」

『ノーディ、俺を運べるぐらいの体力残ってるか?』

『……ああ』


 見るからにふらふらしているノーディは、それでもためらいなく返事をして俺の方に身を寄せる。いや、そんなに無茶しなくていいからな?

 そう言ってもノーディはその場に立ったままだ。


『無理すんなよ』

『……こっちの台詞だ』


 言い返された。おいおい、俺が何やったんだよ。ちょっと折れてるかもしれない足を無理矢理に動かしてるだけじゃないか。

 呆れた目をノーディに向けていると、何故か振り落とされかけた。やめて、足痛いの。


『何を面白そうな会話してる。私も混ぜてー』

『勝ったな』

『ああ』


 羨ましそうに声を上げるリンにネタを振ってやると、楽しそうに乗ってきた。内心で笑いつつ、シグルドさん達のところまで運んでくれるようノーディに頼む。

 ゆっくりと近づいて行くと、途中で向こうも気づいたようでシグルドさんのそばで座っているトランさんが軽く手を振ってきた。様子からしてシグルドさんはちゃんと生きているようだ。あの状況から生き残るって、人外レベルの頑丈さだな。


「トランさん、シグルドさんはどうですか?」

「死にかけだが、死んではいない。回復薬を使って持ち直した。また危険な状態に戻るかもしれないから、できればすぐに助けを呼びに行きたいところだな」

「落ち着いてる場合じゃないですね」

「いや、こういう時こそ落ち着くべきだ。まずはシグルドを街まで運んで――」

「手と声が震えてるし動かしちゃだめですよ絶対!?」

 

 ちゃんと落ち着いて!


「とりあえず、俺とノーディが街まで戻って助け呼んできます。それまでは他の魔物の警戒お願いしますね」

『リンはハーモニーたちの護衛頼みたい』

『まっかせろーい。レベル上がったから体力も何もかもバリバリだぜ』

『そういえば具体的にどれぐらい上がったんだよ。6か7ぐらいか?』

『15』

『すげえな!?』


 そんなに強かったのかあいつ!? リンのレベルって俺たちの中で一番高かったのに。

 まあ、それなら安心して任せられる。


「じゃあ、行くぞ」

『……なるべく、早くな』


 無茶はするなというに。

 何を言っても聞き届けてくれなさそうなノーディに身をゆだねて、振動が来るたびにくる脳を貫くような激痛を務めて無視する。

 街まではせいぜい一時間もない程度だ。うん、心配なのは精神が持つかぐらいだな。

 ……それにしても、俺って何かに乗るたびに死にかけてるような気がするな。

 …………サイラスさんの馬に乗ったのって、いつだったかな。

 ………………そうだ、そういえば、バルラは、なんで……向きを、変え――



 ■  ■  ■



「ねえ」


 『だれか』はペンを止めてゆっくりと振り返り、こちらにその顔を向けた。


 ……――。


 いや、顔を向けたというのは誤りだ。『だれか』には確かに頭と呼べる部位はあるが、顔といえるだけのパーツはそろっていない。髪の毛以外が黒い靄のようなものに包まれている。


「ふむ、まさか顔そのものがないとは思わなかったな」


 誰に聞かせるともなくつぶやいてみる。顔が見えないことなど、特に驚きに値することではない。理由が分かっているならなおさら。


「喋れていないのも当然といえば当然だ。しかし、顔というのは意志や人生を表すものでもある。それがないんだから、君は全く中身のない人間か、あるいはまだ自分というものを掴み切れていないということになる。君はどちらかというと後者に近いかな」


 ――、――。


「何か伝えようとしているのはわかるんだけどね。君の言葉は僕に伝わらないだろうし、そもそも意思なんてものが存在することが驚きだ。よほど君の根幹は強いのだろうね。……まあ、同化している以上、君をすべて把握しているのは当然のことなのだけど」


 ……。


「おや、だんまり? 意志のかけらも感じられなくなったね。そろそろ着くのかな。じゃあ、最後に三言っておこう。――リンはどんなこともできるようになるだろう。ノーディは最強の鉾になるだろう。後は君を守る盾が必要だ。……経験者・・・からのアドバイスだ」





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