別話 騎士団の日常
何故いきなりこんなものを投稿したのかと思われたことでしょうが、完全に作者の都合です。
試験や検定、もう一つ試験と忙しくなってしまい、小説を書くことができませんでした。
なので書いていたSSのようなものを投稿させていただきます。
そして、これから一週間か二週間ほど投稿することができません。
こんなところで止めてしまい申し訳ありません。
「すみませんでした」
アンジェリカが頭を下げる。
「……何が?」
サイラスは訳が分からずに首を傾げた。
ここは騎士団が生活をしている宿舎内。その一室にあるサイラスの部屋の前。
サイラスが部屋を出ようとドアを開けた瞬間に、アンジェリカが頭を下げた状態である。
少し待ってみてもアンジェリカは一向に説明を始めない。一度頭を上げさせようとサイラスが行動しかけた時、アンジェリカがそっと、手に持っている折りたたまれた布を掲げた。
「……? なんだこれ」
「サイラスさんの服です」
「ああ、そう。で、これがどうしたと」
未だに意味が分からず首を傾げているサイラスの言葉にアンジェリカはようやく顔を上げる。眉間にしわを寄せて、いかにも無念そうな表情だ。
そしてまた少しの間を置いて、ゆっくりと壊れ物を扱うかのように持っている服を広げた。
長いこと着用されているのだろう、ところどころ糸がほつれてくたびれているその服は、腹のあたりが引き裂かれたように破れていた。
「私が破ってしまいました。本当にすみません」
自身の服の無残な姿をまじまじと見ていたサイラスにもう一度、いかめしい表情で頭を下げるアンジェリカ。
「これ本当に俺のか?」
しかし、当のサイラスは全く気にも留めていない。
アンジェリカはサイラスの言葉を疑問に思って顔を上げる。
「サイラスさんの服ではないんですか?」
「いや似たようなのしか持ってないからわからん。まあ、こんだけボロボロなんだし破れたとしても寿命じゃねえの?」
「そういえば……」
この時、アンジェリカはサイラスが無地の目立たない服と戦闘時の鎧姿ぐらいしか着ているのを見たことがなかったことを思い出していた。
アレは偶然ではなく、本当にそれ以外の服を持っていなかったらしい。
アンジェリカは少し肩の力が抜けるのを感じた。
「ではお気に入りの一着ではないと?」
「はっはっは、面白いこと言うな? こんなおしゃれって言葉を彼方に投げ捨てたような服、お気に入りにするわけねえだろ」
「なんでそんな服をこれほどボロボロになるまで着ているんですか……」
「楽だから」
アンジェリカの問いかけに一言であっさりと返すサイラス。実際、サイラスは他人から自分の格好をどう見られよう時にしないだろう。
もし笑われたところで、笑った奴よりもでかい声で狂ったように笑い続けるのがこの男だ。
その答えに脱力しているアンジェリカに、今度はサイラスが問いかける。
「そもそも何で破ったんだ? まさか洗濯物の前で剣なんざ振り回してたわけでもないだろ」
「いえ、その……洗濯を、しようと思いまして」
非常に気まずそうに告白するアンジェリカ。サイラスは再度首を傾げた。
「選択……何を?」
「何でしょう、あなたが思い浮かべているものは違う気がします。衣服を洗うという意味の洗濯ですよ」
「ああ、そっちか」
「逆に何を思い浮かべていたんですか」
「はっはっ。それはそれとしてお前、家事ド下手くそだったよな」
「ぐっ」
明後日の方向を向いて笑うサイラスの言葉に、アンジェリカは痛いところを突かれたと声を漏らす。
「……ええ、そうです。ですから練習をしようと」
「いや人の服使うなよ。自分のでやれ」
「今度はできると思ったんです!」
「うん、洗濯ってそんなに難しいことじゃないからな? 賭け事みたいな感覚で言うなよ」
「だって服なんて柔らかいもの、いつ破れるかわからないじゃないですか……」
「普通は破れないんだよ。俺だって破ったことなんぞないわ」
「えっ」
「おい待て、なんだその意外そうな顔は」
騎士団、どころか世界でも並ぶものがないといわれるほどの剛力を誇るサイラスだが、その力と適当な性格とは裏腹に手先はそれなりに器用だったりする。
アンジェリカはサイラスにすらできることが自分にできないと知り、床に膝と手をついてしまった。
「そんな……」
「失礼じゃね? さすがに俺に失礼じゃね? ねえ傷つくんだけど」
「サイラスさんに、騎士団一の奇人に負けた……」
「お前、俺に謝りにきたの? それともけなしにきたの?」
「うっ、ううっ。サイラスさんの変態……!」
サイラスの抗議など聞く耳もたず、アンジェリカは今にも泣きそうな顔で捨て台詞を吐きながら去っていった。
残されたサイラスは。
「なんか突っ込みっぱなしだったな……ジンやルイディアさんといた時が懐かしいぜ」
見当違いなことをつぶやきながら宿舎の廊下を歩いて行った。




