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バルラ 対 シグルド


 

「……っ!? がはっ、げほっ」


 ……なんで、生きてる?

 誰かのせきこむ声を聴いて最初に疑問を感じた。

 その後に痛みが体を貫き、ようやく自分が地面に倒れていることにも気づく。光が直接、顔にかかっていることを考えると俺は森の外まで吹き飛ばされたらしい。

 他の奴らはどうなったんだ?


「死ぬかと思った……」

「ジン!?」


 起き上がって辺りを見回そうとすると、すぐ後ろからグリーンウルフに乗っていたはずのジンの声がした。

 振り向けば体を震わせながら起き上がろうとするジンと這いずる黒いスライムの姿があった。スライムの方はジンの使い魔だったか。


「おい、大丈夫か!」

「だい、じょうぶです。かなり痛いですけど。それより……」

「それより?」


 駆け寄り声をかけるとジンは一方の手で自身の体を押さえ、もう一方の手で俺の後ろを指差した。

 その先には、横たわるグリーンウルフと女の子たち。彼女たちも吹き飛ばされたらしい。俺たちとは反対の位置に倒れていた。

 そういえば、この事態を引き起こした原因は……いた。

 少し探せばそれはすぐに見つかった。

 白に近い灰色の体と銀のたてがみ。言われた通りの姿を持つバルラは俺たちとそれほど離れていない場所に留まっていた。こちらに攻撃を仕掛けるわけでもなく、ただ突っ立っている。


「……何で動かない?」

「わかりません、俺たちが出会った時もそうでした。何かを警戒したように動かなくて」


 思わず漏れた呟きにジンが答えた。一体、なぜ動きを止めているのかはわからないか。なら今は考えても仕方ないな。


「動けるか、ジン」

「難しいです。足がすっげえ痛いんですよね、動かないぐらい」

「……そうか」


 ジンの隣に佇んでいるスライムも動く気配はなく、グリーンウルフも未だ横たわったままだ。こいつらだけを避難させることはできないか。

 そうすると俺一人でバルラを相手取ることになるか。それもこいつらを守りながら。

 ……よし。


「ジン、これ飲んどけ」

「これって回復薬ですか」

「ああ、今日たまたま買った」


 まさか情報量代わりに買った回復薬をこんなところで使うことになるとは思わなかった。


「動けるようになったら何とかお前だけでも逃げて、バルラが襲ってきたことを衛兵に知らせてくれ」

「……わかりました」


 俺よりも一回り近く年下の少年は、遥か格上の魔物への恐怖など感じていないかのように力強く頷いた。それを見てわずかに口角が上がる。

 強いな、こいつは。俺とは大違いだ。


「いや、自虐は後だ。全力であいつを足止めする、それか倒す」


 いつもは内心で留める言葉を口に出す。

 それだけで何となく覚悟ができたような気がした。

 バルラもようやくこちらを向いているし、ちょうどよかったな。


「シグルドさん。俺はギフトがあるので少しわかるんですが、あのバルラは強い奴と戦いたいようなんです。なのである程度つき合えば満足して帰るかもしれません」

「へえ、そんなことまでわかるんだな。わかった、ありがとう」

「いえ、俺はこれぐらいしかできないので」


 魔物の意思が分かるだけでも十分に凄いと思うんだがな。

 まあいい、これ以上話をしている暇はなさそうだ。完全にバルラが戦闘態勢に入っている。

 俺たちに突進してきたときの速度をずっと出せるなら危ないな。周りに被害を出さないようにと考えるなら離れたところに誘導するのが無難か。


「行くぞ、バルラ」


 そう判断してまずは声をかけてみた。

 元々顔は俺たちの方に向いていたが、視線もしっかりと俺に固定された気がする。

 とりあえず、突撃してみるか。


「ふっ!」

「ブオオ!」


 真正面から突撃していく俺にバルラは同じく突進で返してきた。

 速度が目で追えるということは、あの超速突進はある程度の助走をつけないと出せない速度なんだろう。

 よし、とりあえずそれだけわかれば十分だ。

 バルラと体がぶつかり合う直前に横に跳び、突進を回避する。バルラはその場に停止すると、たたらを踏むこともなくすぐに方向転換して俺に向かってきた。

 反応も早いな。こうなると離れて戦うより近づいて取りつき続ける方がいいか。


「よっ」

「ブオオオ!」


 先ほどよりも速いバルラの突進。その横をすり抜けて、通りがけに軽く剣で切りつけておく。

 帰ってきたのは岩を切ったかのような手ごたえだった。刃が通らないどころかこちらの剣が折れそうだ。しかも躍動している分、動かない岩よりも剣への負担がでかい。

 バルラも後ろに向けては突進ができないだろうが、これじゃ傷をつけることもできないな。

 そんな風に剣の調子を確かめていると、さっきまで突進を繰り返していたバルラが後ろを見せたまま立ち止まった。

 突進後の体勢は隙だらけで、思わず足を踏み出しそうになる、が。


「っうお!?」


 俺が足を浮かせかけた直後に、バルラの後ろ脚が俺の頭へと恐ろしい速度で突き出された。

 間一髪で回避したものの、かすりかけたこめかみが裂け血が垂れる。……かすってもないのに怪我するのかよ。

 というか俺は馬鹿か。そりゃあ四足歩行なんだから後ろ脚も武器になるだろう。

 すぐに振り返って突進を繰り出してくるバルラを転がるように避けつつ気を引き締める。


「っと、おお!」


 気を引き締めた瞬間に、今度は前脚で踏みつぶそうとしてきたバルラ。それを後ろに跳んで避けると、前脚が触れた地面が衝撃と共にクレーターを作った。

 幼体といえども膂力はかなりのものらしい。近寄って戦うにしても命懸けだな!

 くそっ、障害物も何もない平原じゃ絶対的にこっちが不利だ。森の中にでも誘導できればいいんだが、下手に離れるとまたあの突進が来るだろうしな。

 横腹で体当たりをかましてくるバルラの体を飛び越えて回避しながら対抗策を考えていると、ふと倒れている女の子たちを視界の端に捉えた。

 ……そういえば、トランもあの子を探しに来ていたはずだ。もしもこの近くにいるなら何とか手を貸してほしいんだが。

 それにしてもどこを探してるんだトランは。結局森でも合わなかった、し?


 バルラと戦っている人 女の子を探しに来た 先に向かって トランが バルラに一人で喧嘩を売った

女の子を守るため?


「……ま、さか」


 一瞬でそれらの言葉が頭の中を駆け巡った。

 心の中ではそんなことがあるわけが、と否定をしている。

 だが、一度考えてしまったらもう無視をすることはできない。自然とレインが死んだ時の事が思いだされた。

 

 ――あの時も、俺だけがそこにいなかった。


「ブオォ!」

「っ!?」


 最悪の可能性に思い当たり体が硬直したその時、目の前でバルラが体当たりの体勢を整えていた。何とか回避しようとするがそれよりもバルラが走り出す方が早い。

 駄目だ、直撃したら確実に動けなくなる!


「う、おあっ!」


 俺は、バルラの体が突き出されるより前にその体を全力で蹴り付け、反動を利用して後ろへと跳ぶ。躱しきることはできず吹き飛ばされたが、それでも直撃するよりずいぶんとマシだ。


「ぐっ……げほっ、がはっ」


 ああ、やばいな。恐ろしいぐらい体が痛い。これだけの激痛は久しぶりだ。

 寝転んでいるわけにもいかず立ち上がり、次の突進に備える。バルラは何故かすぐに追撃はしてこないで、俺が立ち上がったのを確認して突進の構えをしていた。

 ……ああ、強い奴と戦いたい、とか言ってたな。だから待ってくれたってか。


「げほっ……ふうー」


 一度、軽く息をついて心を落ち着ける。

 トランが眼前のこいつにやられたかどうかは、今考えてもしょうがない。まずはここにいる奴らを守ることを優先しないとならない。

 突進してきたバルラの横をすり抜け、その体に剣を滑らせる。

 動くと痛いが、剣は振れるし躱すこともできるな。

 

「割り切れよ。じゃないとみんな死ぬぞ」


 もう一度、自分に言い聞かせて剣を構える。

 怪我をしてしまった以上、長く戦い続けることはできないからな。悠長なことはできない。どうにかあいつに傷をつけられる場所を探そう。そうだな……目や、体の中なら通りやすいか。

 まずは目を狙ってみよう。


「よし、来い」


 俺の言葉を理解しているのかは知らないが、バルラは短く嘶きを上げて突っ込んできた。


※主人公はジンです


1日で書き上げるのは無茶でした。

遅れてしまって申し訳ありません。

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