■■■ 勇者召喚
ある日、光に包まれて、ものすごい美少女と出会った。
ああ、ふざけた話だ。わかってる。およそまともな人間なら、心の中で想像はしても、ベッドで夢想しても、実際にあり得る話ではないと一笑に付す。俺がまともであるかどうかは置いておくとして、だ。
しかし、俺の目の前にはそれがある。
まず、さらりとした銀色の髪が見えた。
視線をさらに下に向けると、零れ落ちんばかりのマリンブルーの瞳、柔らかそうな唇をのせた、少し幼さの残る顔がある。そこから下は……キリスト教あたりが着ていそうな法衣に隠れて見えなかったが、少なくとも見るに堪えないほど崩れているわけではないだろう。
顔だけで人を判断するのもどうかと思うが、この少女が絶世の、という形容詞が頭につく美しさを持っていることは疑いようもなく真実だ。
知り合いと比べてもそん色ない女の子は初めて見たな。
ちなみに、その知り合いは「私は神だもの。美しいのは当然よ」と言っていた。冷たい視線をプレゼントしてやったのでよく覚えている。あれが神だったら世も末だ。
そんな馬鹿らしいことを考えている間に、少女と周りにいる鎧を付けた方々は驚きから脱したようだ。ざわざわガチャガチャと動き始めた。
人数はそう多くないが、俺たちがいる部屋が狭いせいで反響してとてもうるさい。できれば早く止まって――
「静まりなさい!」
――ほしいのだが、と思った瞬間、目の前の少女が叫ぶ。
その一括で、鎧の方々は声も出さずに動きを止めた。一瞬だ。
ちなみに、一番近くにいる俺も体が硬直していたが、少女が突然頭を下げて来たので我に返ることができた。
「はしたない真似をしてしまい、申し訳ありません、勇者様」
「いや、別にそれはいいんだけどな」
はしたないというのは鎧の方々のことだろうか、それともさっきの大声の事だろうか。
その他にもいろいろと聞きたいことはあるが、まずはお互いの名前ぐらいは知っておかなければなるまい。
ああ、いや、人に名前を聞くときはまず自分からだな。
「とりあえず、俺は佐々木永見だ。そちらは?」
「え、ええ、私はエリザベータ・ワラニリアと申します」
エリザベータ……ふむ、とりあえず日本人の名前じゃないな。英国あたりか?
「それで、ワラニリアさん。なぜ俺がこんなところにいるのか、あなたたちは一体どういった者なのか、その辺のことは説明してもらえるのか?」
「はい、もちろんです。ですが、まず部屋を移しましょう。さすがに立ちっぱなしというのもなんですから」
「ああ、わかった」
眩いともいえる笑顔と共に部屋の移動を提案された。いや、この言い方は命令と言った方がいいか? 笑顔の方が打ち勝って反抗する気も起こらないが。
それに、文句を言ったら先ほどから物言いたげにしている周りの鎧たちに何をされるか分かったものじゃない。
……ああ、でもこれだけは聞いておいた方がいいか。
「ワラニリアさん、一つ聞いていいか?」
「勇者様、私のことはどうぞエリザベータとお呼びください」
なにその可愛い笑顔。そんな顔で言われたら聞くしかないじゃないか。
「そうか。それじゃエリザベータ、その勇者っていうのは何なんだ?」
「言葉通りの意味です」
言われた通りの呼び方に変えて質問すると、エリザベータは即答する。様子が、今までと幾分か違って見えた。
「……言葉通りというと?」
訝しく思いながらも、俺はもう一度問いかける。エリザベータの笑みが、気のせいか深くなっていくような気がする。
可愛い笑顔というより……妖艶、に近いだろうか。そんな笑みを顔に刻んで、エリザベータは口を開いた。
「あなたは、この世界を救う救世主――【勇者】として、我が国に召喚されたのです」
――これが、【聖女】エリザベータ・ワラニリアとの、初めての出会いだった。
私は帰ってきたあ!
はい、申し訳ありません。大変お待たせいたしました。
約半年ぶりの投稿でございます。待っていただいた方々がいるとすれば、ほんとうにありがとうございます。
また三日投稿で行くと思いますが、おそらくよほどのことがない限りノンストップで更新していくと思いますので、平にご容赦を。
楽しんでいただければ幸いです。




