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悲鳴

今日、二話連続で……いや、無理か。

これからまた、更新遅くなるかもです。

 俺の目の前で、トカゲが体を震わせている。

 こうしてみると、本当にトカゲのようだ。


「さて」

「グゥ……!」


 俺が一歩を踏み出すだけで、トカゲは恐怖をあらわにしながら後ずさる。さっきまでの威勢はどこにいったんだか。

 まあ、このためにわざわざ追い詰めたんだから、怯えてもらわなきゃ困るがな。

 本当に誇りある竜なら最後まで抵抗したかもしれないが、こいつがそんなに殊勝な精神を持っているとは思っていない。そもそもが、そんな奴が無抵抗の村人を虐殺するはずもないしな。

 

「どうするかな」


 今までさんざん暴れておいて言うことでもないかもしれんが、本当にどうしようかね。

 死ぬほど怯えているこいつを殺すのは簡単だ。

 武器も使って、本気で叩きつぶせばそれで終わり。それは怯えてよういまいが関係なくできる。

 だが……。


「お前を殺したいのは俺だけじゃねえんだよな」


 ルイディアさんは、俺が殺すのを止めはしなくとも、自分ではやらないだろう。殺すぐらいなら利用しようとか言う人だし。

 団長は、たぶん殺すのならだれがやってもいいって感じだろうな。首は持って帰って晒すだろうけど。

 他のやつらは俺に譲るとして、アンはどうだろうな。

 竜に恨みがあるわけじゃなくとも、仇討ちは自分でやりたいとか言い出しそうだ。

 ちらっと、団長の斜め後ろに立っているアンを見る。


「………………?」


 長考した末に首かしげてんじゃねえよ。

 まあ、いい。今、前に出てこないってことは、特にやる気はないってことだろ。面倒だからそう解釈しておく。


「喜べ、お前を殺すのは俺ってことになったぞ。ま、誰がやろうと一撃で殺しゃしねえけど」


 それは確定事項だ。一撃で殺せる状態だろうが、わざと死ぬのを遅らせるぐらいはやる。少なくとも、俺が知ってる奴は全員そういうことをやる。ここにはいないけど副団長とか特に。

 にしても、全員俺のこと化け物とか好き勝手言ってるけど、あんたらも大概だろうが猫かぶりめ。ジンですら魔物と会話できるくせに。


「あと、少しずつ距離とろうとしてもわかってるからな」

「……!」


 竜の体が大きく震える。人間なら少し肩が跳ねたぐらいなのかもしれんが、図体がでかいと反応もでかい。

 本気で気づかれないとでも思ってたのか。だとしたら随分となめられたもんだ。

 わざわざ隙見せてんだから決死の覚悟で殺しに来るぐらいはしてこいっての。


「お前にそんなもん期待してもしゃあねえか。ま、死に方ぐらいは選ばせてやるよ」


 どれ選んでも悲惨になる……いや、する・・けどな。

 

「グオ、ォ」

「どれがいい? 殴り殺されるか、蹴り殺されるか、それとも――」

「グ、ゴアアアアアアア!」


 とうとう恐怖が限界に達したのか、トカゲは思いっきり前脚を振りかぶり、俺に叩きつけてくる。

 ああ、そうこなくちゃな。


「俺が選んでいいってことだな?」


 これ以上ないぐらいの笑みを向けてやると、またトカゲの体が震えた。それでも前脚の速度が落ちないのは褒めてやろう。

 無意味だがな。

 叩きつけられる脚に、こちらも同じく脚をぶつける。

 結果は


「グギャア!?」


 トカゲの脚がぶつかり合った箇所からあらぬ方向に曲がり、俺は一歩も動かずに立っている。

 当然だ、鍛え方が違う。

 どんだけ鍛えたところで、これができるのは人の中じゃ俺ぐらいだと思うが。

 ……けど、結果だけなら似たようなことを起こせる奴らがいるんだから、やっぱり俺だけ化け物扱いは納得いかん。

 後でジンに団長たちの過去でも話してやるか。たぶんルイディアさんやアンあたりは化け物って言われるようになるはずだ。

 

「おっと」

「ゴぼぁ!」


 考え事をしている間に、トカゲが今度は噛みついてきた。

 ので、顎を蹴り上げて空を噛ませる。顎の近くにあった歯が肉ごと抉れて、周辺に飛び散った。

 うわ、きったねえ。しかもちょっとかかった。

 なんてことしやがるこの野郎! これ騎士団の備品なんだぞ!


「洗浄代よこせコラァ!」


 仕返しと代金の徴収のため、まだ宙に浮いている顔に横から飛び蹴りを叩きこみ、歯をさらに何本かへし折る。竜の牙って一本いくらぐらいで売れんだろ。

 ああ、ついでにもう片方の脚も折っとくか。

 もう反撃する気力もなさそうだしな。


「ふん」

「ガギャアァ!」


 いちいち悲鳴がうるさい。もっと耐え忍ぶってことを覚えろよ。

 泣いてても誰も助けに来てくれねえぞ? 

 お前が焼き払った村人たちは、今と同じような状況でも立ち向かってきたやつもいただろうに。


「……あ、そうだ」


 そうそう、聞かなきゃいけないこと忘れてた。うっかりこのまま殺すところだった。

 ミリアのやつ呼ばなきゃな。竜の言葉がわかるのはあいつぐらいだ。


「ミリア! ちょっと来て……?」


 キャンプの方を向いて叫んだところで、向こうに何か異常があったのがわかった。

 ジンは見覚えのある麻袋のそばに絶望的な表情で跪き、エドは厳しい顔でジンの肩に手を置いている。

 ミリアは……ジンの頭をはたいて何かしら叫んでから、こっちに走ってきた。

 え? どういう状況? 何であいつ怒られてんの? 

 見たところ、リンに何か問題があったのはわかる。そのせいでジンが取り乱してんのも。けど、はたかれる意味がよくわからん。ジンのやつ、特に何も言ってなかったよな?

 首をかしげているところに、ミリアが走り寄ってきた。


「翻訳?」

「ああ、そうだけど……あれ、どうしたんだ?」


 ミリアは、ジンのことに関して何か言ってくるわけでもなく、平常に自分の役割を確認してきた。

 たぶん問題ないからなんだろうが、何があったのかすげえ気になるぞ。


「何とかなる。ならなきゃ終わり。そんだけ」

「話す気ないってことな」

「それよりこっち」


 俺の言葉を聞いているのかいないのか。

 ミリアはトカゲを指さしてこっちを見上げる。へいへい、わかってるよ。


「今から言うことはそのまま訳してくれ。こいつの言葉もな」

「了解」


 んじゃ、質問始めるか。つっても大したこと聞かないけど。


「トカゲ野郎、お前に聞きたいことがある」

「……!」


 俺が話しかけると、トカゲは両前脚をひきずりながら、みっともない顔で後ずさる。

 たかが何度か蹴られただけで、完全に心が折れているようだ。今まで自分と同格以上の相手と戦ったこともないんだろう。

 道理で攻撃の種類が少なかったわけだ。そりゃ、弱い相手なら体適当にふってるだけでも倒せるしな。

 納得すると同時に、少しだけ苛立ちが湧く。


「お前、ここに来る前に別の村を襲ったか?」

『……襲った』

「ふむ」


 そうか、襲ったのか。

 なら、どこを竜が襲来したって情報はそのうち来るか。


「じゃあ次の質問だ。お前、何でわざわざここに戻ってきた? 村襲って逃げてりゃ、こんなことにはならなかっただろうに」

『…………』

「だんまりはよくねえなあ」

『ぎゃ、あああああ!!』


 牙をもう一本、今度は根元から蹴り折る。ミリアは悲鳴までしっかりと訳してくれた。


竜王国・・・からの命令だ! 国の奴が、少しでも人間どもの戦力を減らせって! そう言ってきたんだよぉ!』


 トカゲは悲鳴を上げながらそう言った。随分と簡単に吐くもんだ。

 しかし、竜王国、ね。

 嫌がらせの一種と捉えていいんなら、楽だったんだがな。


「あの国がそんなみみっちい真似するかねえ」


 ……まあいい。

 とりあえず、竜王国の名前をこいつの口から出せたのなら、もうこいつに用はない。

 何か、まだ命乞いのようにぎゃんぎゃん騒いでるが、知ったことじゃない。これ以上の情報はもういらないし、何を言われようと生かして返すつもりはない。

 

「呪うなら、自分の浅はかさを呪え」


 俺はトカゲの頭が動かないように押さえる。どうにか逃げようともがいているが、こいつ如きの力で俺の力から逃げ出せるわけがない。


『い、いやだ……助け、助けてくれえぇ!!』


 ――いい悲鳴だ。

 情報より何より、それが聞けたことが一番の収穫だな。


「ガばっ」


 これ以上は雑音にしかならないので、速やかに首を落とす。

 竜の目は、信じられないものを見るかのように見開かれていた。自分が死ぬことぐらいわかってただろう? 見逃されるはずないんだからよ。


「さすが化け物」

「褒められてんのか貶されてんのか」


 その後、数分ほど待って胴体が起き上がってこないことを確認し、俺はミリアを連れてキャンプに戻った。

ちょっとずつ付け足しました。

本編に影響はありませんが、少し読みやすくなったと思います。自分的に。

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