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的中するの早くない!?

今までの話をいろいろ変えたり訂正したりしました。

本編に大した影響はありません。

「ん……うー」


 ああ、目の前が暗い。って、なんかこんなことを前にも言った気がする。

 えーっと、その時は何があったんだっけか。……ああ、そうだ。確か銀髪の男に起こされたときだ。ははは、あの時は本当にびっくりしたもんだ。

 さて、それはいいとして、さっきからめっちゃ頬が痛い。いや、本当に。まるで誰かが引っ張っているかのように。

 その上、さっきから俺の頭上から声がする。『起きろ、起きろ』と。

 え? うん、そうだよ。わざとだよ。まあ、ずっと起きようとしてるんだけどさ、どれだけ引っ張られても、ものすごく眠くて、こうしている間にも意識が向こう側に引きずられ……て……。


「よっと」

「ぶへっ!?」


景気のいい音とともに、顔が真横を向いた。ついでに首のあたりの骨がめきって鳴った気がする。


「何をのんきにグーグー寝てんだ、お前は」

「ぐああ……。だからって、起こし方がダイナミックすぎるでしょうよ。サイラスさん」


 頭上から声をかけてくるサイラスさんに、文句を言いながら体を起こす。くそ、頭がふらふらする。

 うん、寝ていたのは俺が悪かったが、まさか首の骨を折られかけることになるとは思わなかった。今まで経験した中で一番乱暴な起こし方でも、せいぜい上に飛び乗ってくるぐらいだったのに。


「俺がわざわざ朝早くに迎えに来たのに、世話になる側の奴が起きてなかったら、普通は引っぱたくだろ」

「わあ、なにその乱暴な思考回路。昨日は疲れてたんだから仕方ないじゃないですか」


 せめて体を揺らすとかにしてくれたら良かったのに。……それで起きたかどうかはわからないが。あ、もしかして、それで起きなかったから張り手かましたのか? 


「なにはともあれ、おはようさん」

「すごく今更なきもしますが、おはようございます」


異世界生活二日目は随分と騒がしく始まりました。


「まずは朝飯な。パンとスープと水だ」

「それだけ聞いたら多少貧相な程度に聞こえますね」


 現実は固い黒パンと、薄いスープと、まあ、水はそのままだな。そういえば、パンが柔らかくなるのはなんでだっけ。色と何か関係してるのか?

 そのあたりの事がわかっていれば、何かしらの改善もできるんだろうか。今のところ自分の明日の命すら危うい状態だから、考えるだけ無駄かもしれないけど。


「そういえば、今日の予定ってどうなってるんですか?」

「ん、ああ。今日は少し遠出する予定だ。お前のレベル上げと、魔物の捕獲も兼ねてな」


 ほうほう、遠出か。不謹慎かもしれないが、ちょっと楽しそうだな。広い平原とか、変な姿の生き物が歩いているところとか、そんな光景が思い浮かぶ。

 まあ、そんな甘い幻想はすぐに叩き潰されそうな気もするが。


「そんじゃ、行くか」

「ういっす」


 スープの皿を片づけて立ち上がる。

 あ、これから魔物を殺しに行くんだったら、食事は後に回した方がよかったんじゃないか。いや、いまさら言っても手遅れなわけだが。

 ……なるべく吐くのは我慢しよう。うん。


「あ、そうそう。お前の防具と武器も一応見繕っておいたから、取りに行くぞ」

「それはありがたいんですけど……金属鎧とかじゃないですよね?」


 いや、有り得ないとは思うけど、一応ね。


「んなわけねーだろ。けど、しっかりと替えになる物もなかったからな。防具の方は、基本的に要所を守るだけだ。それ以外はむき出しになる」

「そういえば、サイラスさんも今日は鎧じゃないですね」


 そう、今気づいたが、サイラスさんは昨日の人間バーベキューができそうな金属鎧ではなく、肩、腰、膝などを覆う軽そうなものだ。

 俺もこれと似たようなものを着るんだろうか。確かに、これならなんとかなりそうだ。

あまり手間もかからなさそうだし。


「まあ、そういうことだ。ほら、これな。一人で着れるか?」

「やってみます。できなかったら手伝ってください」


 渡されたのは、鎧ではなく皮で作られた装備だった。よかった、鉄だったら歩けなかったかもしれない。

 それでもこんな装備付けたことないからな。えーと、ここを外して、こっから手を通して……うん? いや、ここも外さないとだめか。で、肩の方は、ってあれ、こうでいいのか?


「……すみません。手伝ってください」

「わりと面白いから、もうちょい一人で頑張ってみねえ?」


 ああ、そうだ。この人は他人が苦しんでいるのを爆笑しながら見れる人だった。

 いや、冷静に思い出してる場合か!


「早く助けてください!」

「へいへい」


 強く叫ぶと、笑い声を漏らしながら手伝ってくれる。なんで、わざわざ面倒くさい一幕を挟むんだか。

 そんなやりとりをしながら、なんとか皮装備(と言っていいのだろうか)を付けることができた。うん、これでも結構重いな。それでも、歩けるだけましだろう。


「あ、そうだ。一応聞いとくけど、お前、武器系のスキルとか持ってるか?」

「もちろん持ってません。なるべく軽くて扱いやすい武器をお願いします」

「そういうとは思ってた。んじゃ、これな」


 そう言って手渡されたのは、三十センチほどの短剣、というかナイフだ。持ち手は十センチぐらいだろうか。刃の部分は皮で作られた鞘に入っている。

 おお、別に刃物マニアでもないけど、こういうのはテンション上がるな。男子として。鞘から抜いてみると、刀身は鈍い銀色に光っている。よく手入れされている……んだろうか? よくわからないが、多分そうだろう。

 なにせ、持ち手の尻のあたりに少し血がこびりついてるのに、刀身には何もついていないのだ。


「扱い方は実戦で教えるから、とりあえず行くぞ」

「あ、はい」


 あー、これからものすごい量の血を見ることになるんだろうなー。こんな形で、ゲームでやってた作業がどれだけ過酷なものなのかは知りたくなかった。

 そう考えると、ゲームの主人公たちってすごいな。基本的には、自分からそういうことをやろうと思ってるんだし。まあ、ゲームはゲームだけど。


「って、そういえばどうやって移動するんですか。徒歩?」

「遠出って言っただろ。馬だよ、馬」


 ふむ、遠出の時は基本的に馬なのか。それが騎士だからなのか、世界的に馬が普通なのかも知っておかないとな。運搬に使える魔物とかがいれば、そいつを仲間にすれば簡単に移動手段が確保できる。

 商人にはなる気はないが、やれることは多い方がいい。


「おーい、馬、一頭貸してくれ。少し遠出してくる」


「おはようございます、サイラスさん。団長から聞いていますよ。今、引っ張ってきます。……一頭でよろしいんですか?」


 サイラスさんに話しかけられた人が、俺の方を見ながらそう付け足す。

 軽く頭を下げると、手をあげて答えてくれる。印象は、気さくそうな青年、という感じだ。まだ若そうだが、この人も騎士なんだろうか。


「ああ、後ろに乗せていく」

「了解しました」


 青年が、馬をつないでいるところまで早歩きで歩いていく。

 それにしても、さすがは団長さん。手をまわすのが早い。というか、サイラスさんは他の人からもさん付けなんだな。やっぱり、そこそこ偉い人なんだろうか。……そうは見えないけど。


「ああ、ジン。一応聞いとくが、乗り方わかるか?」

「まあ、一応は。ただ、俺のステータスでどこまで持つかはわかりません」


 乗馬体験とかはしたことあるから、全くの未体験というわけではないが、所詮それだけだ。本格的な訓練を受けたわけでもないし、なにより体力的なこともある。

 うん、心配事しかないな。


「……ま、なんとかなるだろ」

「そうですねー」


 行き当たりばったりにもほどがあるが、どのみちなるようにしかならないだろう。知らないことに対して予測はできても、断定はできない。最低限の安全マージンを確保したら、あとはなるようになれだ。サイラスさんも俺のレベルのことは知ってるし、そこまで無茶なことはしないだろう。

 青年が馬を引っ張ってくるのを見ながら、そんなことを考える。それにしても、結構でかいな。馬。

 大体二メートルぐらいか。俺の身長よりも、渡されたナイフ一本分以上はでかい。

馬って、時速何キロぐらい出るんだっけ。えーと、大体、公道を走る自動車ぐらいの速度が出るとして、五~六十キロぐらいか? それをこのでかさの奴の上に乗って走るのか。

 当然、屋根も何もないから風もモロに受けるわけで。


「……あれ、これ本当に大丈夫か……?」

「ほら、さっさと乗れ」

「あ、はい」


 ま、まあ、なんとかなるだろう。多分。

 不安を覚えながらも、青年に手伝ってもらいながらサイラスさんの後ろに乗る。


「じゃ、しっかりつかまっとけよ」

「わかってます」


 心の中で、死にたくはないので、と付け足しておく。

 え? なんで心の中でなのかって? しっかり集中しておかないと落ちそうだからだよ。高所恐怖症でもないけど、生き物の上に乗るのはやはり勝手が違う。安定感はあるのにあまり落ち着けない。


「行くぞ」


 サイラスさんがそういうと、ゆっくりと馬が歩き出した。

 お、おお。ちょっと揺れるな。いや、でも、ここから慣らしていくのなら大丈夫か? まだキャンプの中なんだから、いくらなんでもいきなり飛ばしはしないだろう。

 ……あれ? なんだろう、嫌な予感が。


「さて……飛ばすか」


 的中するの早くない!?

 

「ちょいちょいちょい待ってください! 俺、まだ慣れてないですから! しかもここはまだ他の人たちがいるでしょ!?」

「いや? 他の奴らはもう自分の仕事にいってるぞ。だから大丈夫だろ」

「俺が大丈夫じゃ――」

「もう一回言うぞ。しっかりつかまっとけよ(・・・・・・・・・・・)」


 だめだ! こうなったらこの人は絶対に止まらねえ!

 この状況で俺にできることと言ったら、せいぜい、落ちないように全力でしがみついておくことだけだ。

 そう思って、改めて腕に力をこめた瞬間、ドン、と下から衝撃が来た。といっても、車と正面衝突した時のようなものではない。跳ねたのだ。体が。

 しかし、いくら馬といえど、それなりの重さの人間を二人も載せていて、いきなりトップスピードに加速するわけではないらしい。飛ばすと言っておきながら、速さはそこまででもない。


「ぐっ!?」


 とか思ってた時が俺にもありました! 

 速い速い速い速い!? さっきの助走だったのかよ! いきなりグンって加速した!グンって!

 っていうか、さっきので腕痛めたよ!? ちょっと痛い!


「っ!? いっ!?」


 しかも下からもガンガンくる! 止めてくれとも言えない! 今しゃべったら絶対に舌噛むぞ!

 あ、やばい。腕の痛みがいよいよ本格的になってきた。あれ? ここから落ちたらどうなるんだろう? いや、聞くまでもなく死ぬだろうけど。しかもどこから落ちようが、乗り物でいろいろな場所を駆け抜けるハッピーなゲームみたいな死にざまになるだろうけど。

 落ち着いてる場合じゃねえええぇぇぇ!? 耐えろ、俺の腕! せめて俺が捕まってる人がこっちの事に気づいてくれるまではもってくれぇぇ!!



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