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文章下手です


誤字脱字などが多いと思いますが、よろしくお願いします

 俺、津ヶ谷光一(つがやこういち)が小学生になって間もないころ。

俺には親友と呼べる女友達がいた。その子は、明るくてどんどん周りを巻き込んでいくような子で、俺も気づかぬうちにその子に巻き込まれていたりしていた。

 かなりの時間を一緒に過ごすようになっていた。自分にとって一番の友人だと思っていた。だから、その子が突然いなくなった時はショックが大きかった。

 今は、あれから大分時間が経ってしまっているため、その子とどんな風に遊んでいたのか、とか最後にどんな会話をしたとか、そう言う思い出をほとんど思い出せなくなっていた。

 高校2年になったばかりの俺は、たいした趣味もなく、ただ時間を消費していくだけの毎日を送っていた。

 今日は始業式ということもあって、いつも以上に気だるく感じていた。

 学校に向かっている足も重いままで、大きな欠伸をする。

 そんな俺の肩をたたいたのは中学の時から付き合いのある高崎勇(たかさきいさむ)

「いつもに増して、だるそうだな」

「まあね。学校はすぐに終わるし、することないし」

「だったら何か部活すればよかったのに。クラスの中でお前だけ部活してないんだし。ちょうどいい機会じゃねえの?」

「それは1年の時のころだろ? クラス替えがあるし、そんな状態じゃなくなるって」

「でも、俺たちの学年はほとんど部活動してんだぜ?」

「はいはい。気が向いたら考えておくよ」

「はあ。全く」

 俺たちは自分のクラスを確認するために掲示板のある方へ向かった。

 自分と同じクラスだったものが多く、昨年とほとんど変わらない顔ぶれだった。

「また同じだな。さっさと行こうぜ」

 勇はそう言って教室に向かおうとする。

「なあ。この子って誰?」

 自分のクラス名簿の一番下にある名前は、わ行で始まっていない。

黒崎麻耶くろさきまや? 知らないな。転入生だろ」

「まあ、説明があるだろうし、いいか」

 そんな軽い気持ちでそのことを流した俺たちは、教室へと向かった。

 黒崎という名字に見覚えはなかったが、麻耶という名前には憶えがあった。

 小学生の時、よく遊んでくれた女の子も麻耶という名前だった。でも、急にいなくなってしまったから、黒崎という子が麻耶だとは思えない。それに、もしそうだったとしたら、どんな顔をすればいいのかわからない。記憶があいまいになっているし、昔みたいに仲良くできるとは思えないから。

 教室に入ると、思った以上に生徒がそろっていた。

 そして、体育館に向かう時間になっても黒崎と思わしき人物は現れなかった。

 始業式も難なく終わり、帰りのホームルームになった時、担任は見たことのない女子生徒を連れて教室に戻ってきた。他の生徒が席に座り、落ち着きを取り戻したとき、その女子は口を開いた。

「えっと。……黒崎麻耶です。小学生の時はここにいたことがあるけど、あんまり覚えてなくて、その、よろしくお願いします」

 しどろもどろになりながら自己紹介をした黒崎は長く伸ばした髪をいじり始め、落ち着けない様子だった。担任はそれを見かねて、改めて黒崎を紹介し、ホームルームを終わらせた。

 終わった瞬間に、ほとんどのクラスメイトは同じ部活の連中で集まって、部活に行ってしまい、教室に取り残されたのは俺と黒崎だけになってしまった。

「勇のやつ、さっさと行きやがって。まあいいや」

 カバンに配布されたものを詰め込んだ後、肩にかけ教室を出ようとしたとき、黒崎から声がかかった。

「……あ、あのっ! その、ちょっと、いい、ですか?」

 黒崎は不安げな顔をして、胸の前で手を合わせる。

「なに?」

 そう返すと、少しだけ体を震わせ怯えているように見えた。

「……あの、あの、その、校内を案内、してくれると、う、うれしいなあ。なんて、その、ダメですか?」

 断られること前提で頼んでいるのか、自信なさげに上目遣いで俺を見る。

「それは、まあいいけど」

 そう言った瞬間に、黒崎は不安げな顔から一気に安堵の表情になる。

「よ、よかったですっ」

 嬉しそうにしている割には、手が震えている。

「他の方にも、声かけようと思ったのですが、その、みなさん部活動に行ってしまって。よ、よかった」

「あ、そうだ。昔ここにいたって言ってたよね?」

「え、あ、はい。そのあんまり覚えてないんですけど。それが何か?」

「光一って子とさ、遊んだ記憶ない?」

「こういちですか? う~ん。ない、です。ごめんなさい」

 黒崎はしばし悩んで、記憶になかったのか頭を下げる。

「じゃあいいや。あ、光一は俺の名前だから」

「え、えっとじゃあ光一君、そのよろしくお願いします」

 やっぱり違うな。もしやと思って聞いたのが馬鹿だった。

 麻耶はこんな性格じゃない。同じ名前でも性格が正反対だ。

 黒崎は俺の隣に並び、ともに校舎を回る。

「あの、ごめんなさい。光一さんのことわからなくて」

「いや、別にいいよ。俺の勘違いだから」

「勘違い、ですか?」

「黒崎さんと同じ名前のこと仲良くしてたんだ。小さい時に。でも、急にいなくなっちゃったんだけどね」

「そう、ですか。ごめんなさい。その子じゃなくて私で」

「なんで謝るのさ」

「ご、ごめんなさい」

「だから、謝らなくていいって」

「ごっ……はい」

 そのあとは場所を説明するくらいでまともな会話はなかった。

「あの、付き合わせてしまって、ありがとうございました。その、何かお礼を」

「いや、別にいいよ。どうせ暇だったしさ」

「でも……」

「いいって。じゃ」

 俺は黒崎に背を向け、帰ろうとしたとき、袖を引っ張られる。

 黒崎は顔を真っ赤にして、初めて会話を交わしたときのような様子に戻っているようだった。

「あの、ついでというか、その一緒に帰りませんか?」

「え? ああ、別に」

 そっけない返事で答えたはずなのに、黒崎は満面の笑みを見せる。

 黒崎は人目を怖がっているのか、体を小さく丸めて俺のすぐ隣を並んで歩いていた。俺が少し距離を取ってもすぐにその間を詰め、ぴったりと貼りつかれているような感覚だった。

 帰り道は意外と同じで、帰宅路のほとんどを黒崎と歩いた。

 そして、ようやく帰宅路が分かれた。

「私はこっちなので、あの、いろいろご迷惑をおかけしてすみません」

「いいよ。ほとんど道同じだし」

「はいっ。それじゃあ、また明日」

 黒崎は自分の帰り道を軽そうな足取りで帰っていった。

 その後ろ姿はどこかで見たような気が一瞬だけした。

 よく遊んでくれた麻耶は髪は短くしていたし、人に対して怯えるような性格じゃない。

 自分にそう言い聞かせても、もしや、という思いがぬぐえなかった。

 翌日、いつものように勇と登校し教室に入った時、黒崎に待ってましたとばかりに声をかけられた。

「えっとですね。昨日家に帰った時、光一君と撮った写真があるのかなって探してみたんです」

 昨日の様子とは打って変わって興奮気味に詰め寄ってくる。

「そしたら、これかなってものがあって」

 黒崎はブレザーから一枚の写真を取り出した。

 その写真には、にっこりと笑っている俺と麻耶だった。

「そうだ。この子だ。ってことは、まさか」

「はい。あまり覚えていないけど、たぶん」

「変わりすぎだろ……」

 麻耶はえへへと苦笑した。

「今までどこに?」

 そう聞くと、麻耶は場が悪そうな顔をして目線を泳がせた。

「それは……言えません。ごめんなさい」

 追及してほしくないと、つらそうな顔が物語り、それ以上麻耶に聞くことはできなかった。

「ありがとね。黒崎さん」

「あの、私が光一君をどう呼んでいたか、覚えてますか?」

「え? えっと、こうちゃん。だったと思う」

「じゃあ、こうちゃん。改めて宜しくお願いします」

 俺には麻耶の笑顔が無理をしているようにしか見えなかった。

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