21 部活
「これとかどう?遥姉」
「うーん…ちょっと違うかな」
4月上旬。昼休みのばくばくの心臓がまだ治まらない。桜の背景はずるいよぉ…。
五限目が終わって紫を視界に入れずに、玄関ホールにある掲示板前で妹ちゃんと部活を決めようと思ってやって来た。
「量が多い!!」
優雅に多いから心してかかれといわれたのですがここまでとは聞いていません! 私の見える限りでも50はあります。マンモス校は凄い。
私は掲示板に貼られた紙一つ一つを丁寧になぞる。
駄目だ、こんな事してたら日が暮れる。ゲームでは、少なかった文化部も豊富である。へぇ、読書部とかもあるんだ。
そんなこと思ってると横からひょっこり妹ちゃんが顔をだす。
「遥姉、どうする?」
「…ん」
私は、うーんと顎の下に手をおく。
………剣道……はもう私と同等の相手いるのかな?どうせなら強いのと戦いたい。
気になるから、駄目もとで聞いてみる。
「剣道部ってどうなのかな? 強い相手とか…」
妹ちゃんは少し悩んでから首をかしげる。
「…う~ん。ごめんね。分かんない」
はにかんで役に立てなくて御免ね。と言ってしゅんと眉が下がる。
私はその様子で喉の奥まで上がった言葉を飲み込んだ。いやいや! 妹ちゃんは私の癒しだから! 幸せだから! 可愛いから許す。とは流石に口が裂けても言えない。
でも…そっか。
「ごめん、ごめん。気にしないでくれ。ところで妹ちゃんは何にする?」
私は、手を思いっきり振って「ね?」と言う。声が少し裏返ったが多分大丈夫。
「遥姉と同じの! って言いたいけど、私、剣道出来ないもん…。だから、剣道部のマネージャー!!」
満面の笑顔で胸を張ってとんっと叩く。私は周りに人がいないのを確認して安堵する。こんな可愛い笑顔見たらきっと男子が妹ちゃんに付きまとって、私と妹ちゃんの平穏ライフがおくれないから。
のふふふふ。
※
放課後
【ガララッ】
剣道部の道場の扉を豪快に開ける。ついさっき教室の扉を壊してしまったのでかなり加減したが。
「失礼します」
「誰? どうしたの?」
この声は…私のセンサーが反応します。前世でも聞き慣れた声。
彼女は、モブではない。あの緑の幼馴染みとしてライバルで登場した部長の友野実七乃さんです。
一重で無表情、日に焼けた肌に、出るとこは出てしまるところはしまっているので同い年とは思えない色気をもっています。ぼんきゅっぼんです。
彼女は、妹ちゃんを苛めはしないけど怖かった。彼女が相手をナイフで刺そうとするスチルは衝撃的過ぎて忘れられない。嫉妬に溺れるとああなるのか、と考えさせられました。
凛として無表情が怖いのか、妹ちゃんも戸惑っている。
「あの…剣道部に入部しようと思って…」
「えぇ…分かりました」
「因みに、マネージャー志願なんですけど…」
「そう…分かりましたわ。そちらのあなたも?」
そう言って私を見ると、ふわりと笑った。微笑む友野さんは、美しくて聖女みたいだ。そして、隣に天使こと妹ちゃん、前に聖女、真ん中の私はいろいろとヤバい。私は、雑巾でしょう。
「私は、剣道部入部したいのですが」
「分かりましたわ。ようこそ、剣道部へ。部長の友野実七乃です」
「よろしくお願いします」
友野さんは、姉御肌だった。素振りも一から教えてくれた。
でも、流石はスポーツパラ、全然使ったこと無い竹刀も自動で動く。自分で使ってる気分がしないのが楽しくはないが。
練習も終わったところで、一番気になっていたことを口に出す。
「誰が一番強いの?」
「全然練習に来ない猫津君かな」
部員らしき子が嬉しそうに答えてくれた。
要はサボりか。ん、猫津?
私の脳裏によぎるのは優雅の顏。いや、でもないよね君、っていってたし。
【キーンコーンカーンコーン】
帰宅のチャイムがなり、解散した。
汗が気持ち悪いが、しなければいけないことがあるので、近所の本屋に寄ることにした。え? 本屋で何するか? もちろん薄い本を読むに決まっている。
目の前の横断歩道の信号が赤で、渡れないから考えてみることにした。
猫津って…剣道部オリジナルキャラ? でもそうなら出てくるよね。優雅…な訳ないよね。一番強いとなると、誰だ…。
考え事しているとどんどん足が進む。
すると後ろからグイッと肩を引っ張られた。突然の事に驚いたが、目の前を勢い良くダンプカーが通り過ぎる。それを見て、私は怖くなった。
このまま進んでいたら死んでいたのではないか。前世、トラックにひかれたことを思い出して気分が悪くなる。
…立っているのも辛い。
しかし、後ろにいる人が私の重さを支えてくれている様だ。動くと彼の体温が私の背中が当たって生きている事を実感する。
すると、幾分か気分はましになった。身を預けてしまい、少し恥ずかしいがありがとうとお礼を言おうと振り返る。
「危ねぇ!! また死ぬ気か」
馴染み深い声は低く、怒っているのだと理解した。言葉を発したのは相棒、優雅だった。
そして、私は礼よりも何故彼女が“また”という言葉を使ったのか分からなかった。
「またって何が?」
「あー…」
訊くと優雅はばつが悪そうに目を逸らした。
やはり何か知っている。
「使いたくなかったんだけどね。…発火」
「あんたは…降参」
唱えると指先から炎があがる。優雅はそれを見てはぁ、と盛大に溜め息をついた。
話しやすいようにか、彼女は私を自分から引き剥がし、少し間を空けてから真剣に話始めた。
「…俺は、猫津優雅。前世では黒猫をやってた。んで、あんたは勘違いしてると思うが、性別は男」
「男…?嘘でしょ。だって優雅は…」
「あんたの知っている女は、自分を俺と言ったり、制服がズボンなのかよ?」
彼は嘲笑気味に言った。
俺っこ女子とかいるから優雅もその類いだと思っていた。優雅は男であったのだ。
ははっ、私はまた早とちりで勘違いしちゃったんだね。勘違いのせいで女子だと思われた優雅には窮屈な思いさせちゃったかな。
申し訳ない気分になったのだが、口が思うように動かない。どうやら、車にひかれかけて、優雅の体温が離れた今、生きているという実感がない。
恐怖で口からはひゅーひゅー、と息しか出ない。
「ごめん…」
何で優雅が謝るの? 悪いのは私なのに。
そう思うと目から暖かい涙がこぼれ落ちた。優雅は泣いている私を見ると悲痛に歪んだ顔をした。とても苦しそうで、尚更涙が溢れる。
「俺には、こんな資格ないけど。今日だけは…ごめんな…」
彼は悲しそうに告げると私の背中に手を回した。
その瞬間ぎゅっと抱きしめられた。優雅の体温が戻ってきて生きてると、私は安心した。
そして私は彼の胸で思いきり泣いた。安心感からとどめなく溢れてくる。
「ごめん…なさい…あぅ」
私もただ謝り、嗚咽しか出来なかった。その間、優雅は優しく背中を擦ってくれた。
スキル確認
百合 鈍感
シリ、シリアスが書きたかったんですが…出来上がりに涙。
どうしてこうなった。




