悪魔の願い事 赤薔薇 涼side
切ない系。涼くんです。
涼side
俺は、別に後悔してはいない。悪魔に魂を売ったことに。
魂を売る時に契約をし自分の願いを叶えてもらえる。それを知って売ったことに__…
あいつ、すなわち遥は、俺が帰国する前に病気の兆候が見えた。吐いたり顔を真っ青にしたり、素人でも分かる兆しだった。日に日にやつれていく遥を…それでも笑っている遥を見ていられなかった。
「涼くん…!ねぇ」
「…」
そして俺もあいつを避けるようになってしまった。
あいつと一言でも話せば、目から涙が溢れてきそうだった。痩せ細っているあいつが目に入るだけで、俺の視界がぼやけた。いつも向日葵みたいに、にっぱりとしていた奴がそんな風になるなんて思えなかったのも一部の原因であろう。
でも、俺はあいつが傷ついているとも知らずに無視をし続けた。帰国してあのガイドに聞いたら枕がぐっしょりだったらしい。あいつは涎と言い張っていたらしい。
俺はそれを聞いたときは自分を責めた。こんな俺を嫌ってくれたら楽になれたのかもしれない、そう思う反面、強がりなあいつが俺にはどうしようもなく愛おしく思えて、嫌われたくないとも思ってしまった。
後に俺は、帰国した。8月中旬、蝉が煩くなく頃、図書館で借りた赤い本を手に。
やけに無機質な自分の部屋で赤い本を開いて悪魔に魂を売った。俺の願いを叶えてくれる代わりに。
何でも召喚する者の意思が大きい程、強い悪魔や獣が出るらしい。
俺の悪魔はかなり上位だった。強い悪魔に俺は願った。
あいつが元気に笑っていられるよう…そしてずっと幸せで、いられるよう。
俺だって独占したくないわけじゃない。でもあいつがこんな俺に近づいて苦しむなら、俺はあいつに幸せになって欲しい。
ははっ…こんな風に変われたのもあいつのおかげだな…
でも、願ってしまった。やはり俺も諦めきれなかった。傷付けてしまったのに…
そして…あいつにもう一度会えるように__…
何ヵ月か経って徐々にあいつを忘れていった。ゆっくりあいつの記憶をどこか奥底に封じてしまおうと思っていた。深い深い自分でも届かないようなところに。
俺は生徒会長となり、人に期待と憧れの目で見られるようになった。俺の初めての会長としての仕事、入学式の歓迎の式辞。その時に見覚えのある少女を見つけた。何度も愛おしいと思った色素の薄い髪、愛くるしい笑顔、しっかりと人を見据える意志の強い瞳。見間違えるはずがなかった。驚きと共に一年の間にかなり大人びたあいつの顔立ちに胸が跳ねた。
だけど俺は話しかけなかった。いや、話しかけられなかった。生徒会長というものは案外厄介で近づくことすら出来ない。
その後しばらくして、あいつを見つけた。授業面倒くさいと思い、生徒会しか来ない屋上の上でサボってた。生徒会の評判が悪くならないペースでだが。
すると校舎の裏…人が全く来ないスポットでとても安らかに眠っていた。やっぱ悪魔に憑かれたから、目も格段に良くなった。俺は、悪魔だ。人を不幸にする。
近づいては、いけない…分かっていた。
でも足が進んで気付いたら膝枕していた。俺は笑みが零れて、本能には逆らえないと分かった。
規則正しい寝息さえもが俺を自然と笑顔にしていく。
あいつは、とても幸せそうに寝ていて俺も嬉しくなった。やつれていた頃なんかと比べ物にならないほど元気そうで安心した。
健康的で白い頬、長い睫、観察するだけで日が暮れそうだな…なんて。
俺は、手で遥の前髪にそっとふれて軽くくちづけを落とす。
「ん…」
遥が寝苦しそうに寝返りをうち、俺の服の端っこをギュッと握り絞める。
胸の前に固く握り締めた拳を当て、自分でも押さえきれないくらいの理性を何とか保つ。
静かに寝顔を見ていて意識が遠くなり
思わず寝そうになったとき
目の前の彼女の瞼が重そうにゆっくりと開いていく。
そして二、三度瞬きをして
「はぁ?」
本当に変わらない。まぬけな奇声をあげてるところとか、喧嘩腰なところとか。
でも、この透き通った綺麗な声に安心する。
「……涼くん?…」
彼女は首をかしげる。そんな仕草すら可愛いと思ってしまう。俺は思ったより重症なのかもしれない。平常心平常心。
「…あぁ、久しぶりだな。相変わらず変わらないな。一生。」
やっぱり俺こいつの前では、素直になれね。悪いとは思ってるんだ。本当は、傷付けたくないんだ、ごめんな。
でも遥は、キョトンとして
「何で?何でここにいるの?あんまり人来ないいいスポットなのに…」
なんか俺、来るなって言われているみたいだ。本人に悪気がないのも分かるけどさ。俺は少し頬がひくついた。
「悪かったな…。生徒会室でサボってたら、お前がグースカ呑気に寝てんのが見えたんだよ。サボっててもついていけるし。」
「…ちなみに、何時間くらい寝てた?」
「……… 俺が来てから四時間くらい。やっぱりバカだな。お前一応女なんだぞ」
俺みたいな悪魔が近づいて来るかもしれないんだぞ。中には、悪溺れたやつもいる。
それに遥はそれなりに見た目が良いから。ってそんなことじゃなくて…
「ていうか一応じゃなくて女だよ…きっと…」
眉をハの字に曲げる遥。
昔のやり取りしている見たいで嬉しい。俺は昔に比べて感情表現も下手になった。と言ってもまあ、昔もこんな感じだったけどな
でもこいつは、やっぱり俺の知っているまんまの遥だ。遠くなんて行ってない。それに、きっとなんて…
「ぷ、あははははは」
俺は、手を口に当てて笑いを堪えていたが限界の様で吹き出してしまった。
久しぶりに腹を抱えて笑った。
「何で笑ってるの?あははは」
それから、お互いしばらく笑っていた。
「ご飯食べてくる」
騒がしい奴だな。
知らない間に、また笑っていた。こいつは、笑顔の天才だ。あいつの笑顔で自然と笑ってしまう。
俺はお前にどんどん惹かれてしまう。でも、俺は悪魔。人間じゃない。だからお前は人として幸せになってくれ
お前への『悪魔の願い事』だ。
赤薔薇 涼side終
むず痒切ない。涼くんサイドが多いのは、好意を持っているのが涼くんだけだからです。
本当にごめんなさい。こんなのしか書けなくてすみません。




