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空を飛ぶ  作者: 林来栖
第七章 神の代理人の城
79/113

3

「《B—2》の指定した監視カメラって、あそこのカメラじゃないのか?」

 浅野の指摘に、晃は慌てて振り向いた。

 正面玄関への通路を背にすれば左側になる、晃たちに近い壁の上方に、小型の監視カメ

ラがあった。他に監視カメラは二台、正面玄関を背にして真正面の、二機のエレベーター

の上に取り付けられている。

「壁の、というと、あれだけですね」

 笠井三等官が冷静な態度で、壁の監視カメラの撮影範囲へと歩いていく。浅野も後に続

く。

 晃も二人の横に寄り、監視カメラを見上げた。アクリル板と骨組みの合金の反射光に鈍

く光るレンズの向こうから、《B—2》という、得体の知れない人物が自分たちを見てい

るのかと思うと、何やら薄気味悪くも感じる。

 脇に立つ笠井三等官が、軽く二度、頷くと、突然、二機あるエレベーターの左の一機の

扉が開いた。                                  

「乗れ、ということでしょう」と、笠井三等官は、躊躇なく左右に開いた扉の中へ踏み込

む。

 晃は「大丈夫なのか?」という言葉を飲み込んで、笠井三等官に従った。晃たちが乗り

込むと、扉が静かに閉まった。

『お待ちしていました』という、明らかに人工的な、女声に似せた機械音声が、天井のス

ピーカーから流れた。

 待っていた、というからには、この声の主は《B—2》なのだろう。

 普通、緊急用のマイクでやり取りすれば、互いの声は電話の声とほぼ同様に聞こえるは

ずである。なのに、なぜ《B—2》の声は機械音声のように聞こえるのか?

 もしやこれが《B—2》の肉声なのか? それとも、肉声を聞かれたくないがために、

わざと音声を加工しているのか?

 無機質な音声の不自然さに、晃は不信感を抱く。

「どうして、自分の声で話さないんだ? あんた、本当に《B—2》なのか?」

 やはり《B—2》は、センター側の人間で、自分たちはまんまと罠に嵌まったのか?

 どこからかモニターで自分たちを見ているのであろう《B—2》を睨み付けるつもりで、

晃は監視カメラを見上げる。

 ややあって、再びスピーカーから声が流れた。

『声に関しては、事情があり、お会いした際にお話しします。エレベーターは、地下一階

までですので、地下一階のエレベーター・ホールでお待ちしております』

 音声が終わらないうちに、すっ、とエレベーターが動き出した。一分も経たず下降は終

わり、閉じた時と同様、音もなくエレベーターの扉が開く。

 晃は、アトリウムへ入る時のこともあり、反射的に壁際に体を寄せた。

 同じことを考えたらしい浅野も、反対側の壁に体を寄せた。

 が、笠井三等官は、身構えもせず、平然と扉の中央に立ち、エレベーター・ホールを見

渡している。

 笠井三等官の様子に、大丈夫なのかと、晃はこわごわ首を伸ばし、エレベーター・ホー

ルを見た。

 三メートル四方ほどの地下一階のエレベーターホールには、警戒した保安官や尋香の姿

は見当たらなかった。代わりに、白いウェット・スーツ型の防護服を着た女性が一人、立

っていた。

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