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空を飛ぶ  作者: 林来栖
第五章 観るもの
51/113

2

「シャット・ダウン、成功か?」

 水原二等官は目を見開き、腰を浮かす。笠井三等官は、無表情のまま頷いた。

「予定通り、サブ・コンピュータ全て、使用不能です」

 水原二等官は「よし!」と、勢いよく立ち上がった。

 勝ち誇った笑みを浮かべた保安官に、晃は「なにが、起こったんすか?」と、尋ねた。

「サブ・コンピュータのシャット・ダウンって?」

「ああ、申し訳ありません」水原二等官は、照れた表情で、自分のヘルメットの後ろ頭を

ぽん、と軽く叩いた。

「ご存じの通り、我々保安官には、認識票を兼ねた体内送受信機が埋め込まれています。

送受信機は公安本部情報課のメイン・コンピュータに、常に我々の位置情報を送っていま

す。メイン・コンピュータはダイレクトにネットに繋がっているのではなく、五十台のサ

ブ・コンピュータを経由して、ネットの情報を収集、解析しています」

「なるほど、そうか。水原さんたち反センター派の保安官が事を起こすためには、公安本

部に行動情報を知られては拙い。だから、サブ・コンピュータをシャット・ダウンしたん

ですね」

 浅野が片膝を立て、身を乗り出す。真顔で「ええ」と、水原二等官は返す。

「サブ・コンピュータは五十台全てが連動していて、一台だけをシャット・ダウンすると、

他のコンピュータがバックアップ態勢に入り、ダウンしたコンピュータを自動的に修復し

てしまいます。なので、五十台を一斉にシャット・ダウンするウイルス・プログラムを感

染させたソフトを、サブ・コンピュータをクラックしてインストールしました」

 大学で高次ナノ・テクノロジー科を専攻していた晃は、公安内部の反センター組織の力

量に感心した。

 五十台のサブ・コンピュータを一遍にシャット・ダウンするより、メイン・コンピュー

タ一台をシャット・ダウンしたほうが、簡単に思える。

 だが、大企業や大学、公共機関のメイン・コンピュータは、ナノCPUを搭載した計算

機型コンピュータではなく、自動学習型のメガ・バイオ・コンピュータである。自己修復

機能を備え、自らの動力さえ制御し、半永久的に稼働するのだ。

 そんなメガ・バイオ・コンピュータをシャット・ダウンするには、かなり高度なバスの

書き換えの技術を必要とされる。

 時間も技術も掛かる、メガ・バイオ・コンピュータのシャット・ダウンより、計算機型

のサブ・コンピュータにウイルスを侵入させて停止させたほうが、はるかに効率がよい。

 それでも、公安内部のコンピュータをシャット・ダウンするには、よほど綿密な計画を

立てなければ無理である。

「サブ・コンピュータは、我々保安官の行動だけでなく、公安のエアカーも常時追跡して

います。が、シャット・ダウンで浅野副局長とご家族を乗せたエアカーの行く先も、追跡

できなくなったはずです」

 力強く言い放った水原二等官を、麻生は横目で見遣った。

「で、結局、サブ・コンピュータの復旧には、どれくらいの時間が掛かる目算になった?」

「丸一日です」笠井三等官の、無機質な声が答えた。

 麻生は、とうてい片腕とは思えぬ身軽さで、ひょい、と立ち上がった。

「なら、早いところ行動しないとな。敵が混乱しているうちに、陣地を制圧しないと」

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