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空を飛ぶ  作者: 林来栖
第四章 香りと羽根
40/113

3

「公安の保安部隊が、家に来たんだ。父を反逆罪で射殺したと言って」

「何だって?」自分たちが聞いた話とは違う。晃は、驚きに目を見開いた。

 晃と同じく、公安の保安部隊が動いたことに驚いた麻生が訊いた。

「浅野副局長は、尋香に襲撃されたんじゃないのか?」               

「尋香って?」浅野は眉を寄せ、不審そうに首を傾げる。

「例の女たちのことだ。尋香は、国立免疫センターの私兵なんだ」

 晃の説明に、浅野は「ああ、なるほど」と頷いた。

「そういえば兄貴が、携帯で『尋香が』って言ってた。何のことか、さっぱり分からなか

ったんだけど、例の女たちのことだったのか……」

「それで、浅野副局長は……?」

 保安部隊の話が事実なら、浅野にとっては一大事だ。晃は心配しつつ、浅野の表情を窺

った。

 晃の懸念に気が付いた浅野は、薄く笑うと、きっぱりと言った。 

「大丈夫だ。父は死んでない。イーデルランド大使館に同行してた兄から『襲撃はされた

が、命に別状はない』と連絡が来た。さっきも言ったけど、兄は『尋香が』って言ってた

から、間違いなく襲撃者は例の女たちなんだろう。兄貴は『自宅も襲われるかもしれない

から、用心しろ』とも言ってたんだ。けど、連絡を受けている最中に尋香たちが来て……」

 晃は、その時になって、コリンがいないことに気が付いた。コリンの行方を聞こうとし

た先に、麻生が口を開いた。

「尋香たちが、コリンを連れて行ったのか」

 浅野は硬い表情で「はい」と頷いた。

「尋香の一人が「コリンの姉だ」って名乗ったんです。「世話になっている妹を引き取り

に来た』って。渡しちゃいけないって思ったんだけど、コリンは『一緒に行く」って言い

出して。俺たちにこれ以上の迷惑は掛けられないからって。……コリンが出て行く直前に、

日野に伝えてくれって言った言葉がある。「もう一度、夕焼けのセンタービルを見たい」

って」

 晃は内心、嬉しさとも驚きともつかない思いが湧き起こった。

 夕焼けのセンタービル。朱色に染まるクリスタルの曲線の美しい景色は、晃と美鈴だけ

の懐かしい思い出だ。赤の他人のコリンが、知るはずがない。

 もしかしたら、コリンは浅野の家にあった絵を言っているのかもしれない。しかし、な

らば浅野に告げればいい話だ。晃にわざわざ言伝る必要は一切ない。

 美鈴との思い出を、本当にコリンが知っているのなら、どうしてか? コリンと美鈴と

は、どんな関係があるのか?

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