詩 彼が影を踏んでくる
夕方、彼氏が急に私の影を踏んできた。
「何、急に?」
不思議そうに、私は彼を見つめる。
マスカラをつけた色気のある目。
ナチュラルメイクをしているのだが、彼は気づいてくれるだろうか?
彼は首を横に振ると、首を傾げる私に言ってくる。
「こうしていると、2人でキスしているように見えない?」
「え」
私はびっくりし、影を急いで見つめる。
確かに大柄の彼の影が、私の唇を奪っているように見える。
オレンジ色の陽も相まって、情緒的というか、恋しい姿に見える。
私はラブラブな影に照れ、頬を赤く染める。
「どう? 嫌だ?」
「あの、その」
上手く言葉が出ず、カバンをいじる。
嬉しくないはずがない。
少年なような心を持った彼。
彼じゃなきゃ嫌だと改めて思う。
「…確かに、キスしているように見えるね」
「そうだろう?」
彼は自慢気に言うと、離れようとしたので、ブレザーを引っ張る。
「何、どうしたの?」
「もう少しこのまま」
影を見つめながら、私はわがままを言う。
彼は何も言わず、そのままにしてくれる。
いいな、影。
彼からアプローチしてくれないかなと思っていると、突然、頬に柔らかいものが当たる。
「え、え?」
急な出来事に慌てていると、彼はふふ、と笑う。
もうずるい!!
確かにアプローチしてくれないかなと思ったけれど、あまりにも突然過ぎる。
私は頬を押さえ、更に真っ赤になるのだった。




