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のむ
帰宅して缶飲料のプルタブをあけると、「やるならやれ。だがなにも話さぬ」と言葉がきこえた。
わたしが中身をひと口のむごとに、苦悶の声があがる。荒い息とともに、「おまえたちの野心が、いずれおまえたち自身を滅ぼすだろう」などとののしる。それがハンサムな大人の男性を思わせる、低めのいい声なのだ。
なんだか楽しくなって、わざと少しずつのんでいく。
残り少なくなると、声も小さくなった。「姫様、いまおそばに……」
姫にはほど遠いわたしが缶を大きくかたむけ、すべてのみ干してしまうと、それきり夜の自室は静かになった。
どうやらわたしは、ノンアルコールビールで酔える体質らしい。
ノベルアッププラスからの転載。




