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冥土じゃん

今日も疲れた。もう会社を辞めたいという思いが日々募る。退屈な俺の人生、つまらない日々をもう終わりにしてしまいたい。そんな絶望の中、帰り道に偶然見つけた。世界が色褪せて見える中、唯一色を持つ場所が

         □

「おい、沖矢、この仕事もやっておけ」そう課長から山のような仕事を振られている俺、沖矢拓海は社畜だ。「わかりました。」と言い自分のデスクに戻り深くため息をつく。また、残業か…しんどい…

 ようやくすべての業務が終わり時計を見ると十一時を回っていた。いつも家につく頃には一時くらい、洗濯やらなんやらしてから寝るとなると、睡眠時間は四時間ぐらいになるだろう。会社を辞めたい、そう思いながら帰路を歩く。すると普段は目に入らないのに、その日はある店名が目に留まった。「メイド喫茶サビ残パラダイス〜仕事のことを忘れましょ?〜」どんな店名だよ仕事のことを忘れて欲しいのか欲しくないのかわからない店名だなと思った。普段なら寄り道せずに帰るのに、この日は残業疲れでおかしくなっていたのだろう。もう会社を辞めたいし、仕事のことを忘れさせてくれと思い、店に入ってしまった。

 入店すると「おかえりなさいませ、ご主人様。」と定番のフレーズを言われて迎えられた。店内はピンクと白を基調としており、椅子や机もその色合いで統一されている。メイドたちは黒と白色のミニスカートのメイド服にホワイトブリムをつけており想像通りのメイドが出迎えてくれた。黒髪ショートヘアのメイドに「こちらの社則を読んで分からない点はございますか?」と聞かれた。社則!?客も社則を守らないといけないのかと思いメイドが手に持っている社則を読んでみると料金の説明や注意点などだった。ただ、最後の一文に「今日も元気によろしくお願いします。」と書いてあるので社畜体質になっている俺は疲れていても「大丈夫です!」大きな声で元気よく言ってしまった。するとメイドから「店内ではご静かにお願いします。席をご案内いたしますね」と笑顔で言われ恥ずかしさからできるだけ体を小さくしながらメイドの後ろをつていった。「こちらの席へどうぞ」と促されて席に座る。「本日お出迎え担当しました三十連勤中の"ほのか"と申します。よろしくお願いします。」と言われメイド側がサビ残パラダイスしてんじゃねえかと心の中でツッコミを入れてしまった。いや、まてそういうキャラ作りの可能性がある。そう思い改めてほのかの顔を見てみるといや、違うわ絶対連勤してるわ。目の隈はメイクで隠しているのだろうがあるのかどうか見て分からないけどこの店への殺意だけは隠れてないわ。紹介がおわるとほのかから「メニューの説明をいたしますね」と言われた。するとほのかは机の上にあったメニュー表を開けて左上から順に説明していく「まずは休憩時間返上コーヒーです。こちらは休憩時間を忘れて働けるコーヒーです。私たちもよく飲んでます。」と可愛く言われた。休憩時間返上して働いてるのねお疲れ様です。俺は心の中で頭を下げた。ほのかは説明を続ける「つぎにホウレンソウ・ジュースです。こちらはメイドさんから「報告、連絡、相談しましたか?」と聞かれる商品です。私のおすすめドリンクはこの2つです。」と言われた。俺は「わかりました。主食系の食べ物とかあります?」と聞いた。するとほのかは「食べ物でしたらオムライス・タイムカード風か納品日ギリギリ・ナポリタンがおすすめですよ」と笑顔で答えた。

なんだこの店、店名のサブタイトルに「仕事のことを忘れましょう?」とか書いてあるのに全然忘れさせる気ねぇ。まあ、一応商品の説明ぐらいは聞いとく?想像と違う可能性あるし?と思い「商品の説明を聞いてもいいですか?」と聞くとほのかは説明を始める「こちらのオムライス・タイムカード風はメイドさんがお客様のオムライスにケチャップで「勤務時間終了」と書いてくれます。ちなみに食べ終わるとこの店から退社もとい帰宅してもらいます。もう一つの納品日ギリギリ・ナポリタンは食べ終わる直前にメイドさんが「もう時間がないですよ!」と焦らせてくる、時間制限付きのナポリタンとなっています。」と可愛らしく慣れた様子で説明してくれた。

この店無茶苦茶じゃね?休ませる気なくね?いや、落ち着けメイド喫茶なら定番のデザートがまだあるじゃないかデザートならゆっくり食べられるんじゃないかと淡い期待をして

「デザートのおすすめってあります?」するとほのかは「デザートでしたらパフェとプリンがおすすめですよ。」と愛想よく答える。続けて「パフェはエクセル・パフェがあります。パフェの層がエクセルのシートのように何層にも重なっていて、食べ進めるうちに「この仕事、いつ終わるんだろう…」と絶望的な気分になれます。プリンは永遠の会議プリン食べ終わった後も、プリンの味が頭から離れないほど濃厚で、まるで会議が終わらないような感覚を味わえます。」と言った。どっちも絶望的な気分にされるじゃんこれもうメイド喫茶じゃなくて社畜殺しの冥土喫茶じゃん。熟考の末に俺は永遠の会議プリンを頼んだ。しばらくしてほのかがプリンを運んできた。「おまじないをかけさせてもらいます。」と言いほのかは続ける「ご主人様、このプリンは一口食べれば、脳裏に刻まれたあの日の議事録、永遠に終わらない議論、そして見つからない結論…それらすべてを思い出すでしょう。美味しくな〜れ萌え萌えキュン♡」と言うとほのかはすぐに他の客のところへ向かった。いや、美味しくならないだろその呪文で最後に定番のフレーズを入れてもマイルドにならないくらいにおまじないの言葉が尖ってるのよ。そうツッコミながらプリンを食べてみると滅茶苦茶濃厚な味で美味しかった。食べ終わり帰ろうとするとどうやらチェキの撮影があるらしく恥ずかしいので乗り気ではなかったがほのか交渉スキルでうまく丸め込まれてしまった。撮影を終えるとどうやら写真にメッセージやらデコレーションをしてもらうらしいのでしてもらった写真をみると下の方に「退勤羨ましいです」と書いてあった。お疲れ様ですと俺は心中でそう思った。店を出て帰路に着く。あの店に行く前は重かった心が少し軽くなった気がした。元気をもらえた気がする。そう思い横断歩道を青信号で渡ろうとするとクラクションのピーーという音が鳴り、俺は車に引かれた。

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