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VENJI: The Throne of Scars  作者: ヴェンスカ
1/16

プロローグ

――ベルナック。中立都市。

天井の抜けた酒場の裏に、それはあった。


看板も無ければ灯も無い。

あるのはただ、壁に打ちつけられた錆びた鉄箱。

誰が呼んだか、それを「復讐箱リベンジ・ボックス」と呼ぶ。


中には毎晩、誰かの“恨み”が詰められる。


『妹を殺したあいつを、地獄に落としてほしい』

『俺の人生を奪ったあの貴族を、跡形もなく消してくれ』

『金じゃない。痛みで払う』


そしてその日――

1通の依頼書と共に、1人の男が箱の前でうずくまっていた。


体は痩せ細り、目は爛れていた。

だがその手には、震えるペンで書かれた**“1枚の願い”**が握られていた。


『俺の娘を売ったあの神父を殺してくれ』

『できるなら、地獄に送ってやってくれ』

『俺の命も、記憶も、全部くれてやるから』


その願いは、

その夜――ひとりの男の足元に届いた。


「……またかよ。こんなクソみたいな話ばっかだ」


黒い外套、灰色の髪、赤く濁った片目の男。

背には、うるさそうな目玉の付いた大剣を背負っている。


「おっ、殺しに行くのか? 行くのか? 行っちゃうのか!?」

「静かにしろ、アーガス」


男の名は、グレイ=ドレッグ。


この腐った大陸に、“正義”を求めるのをやめた男。

“復讐だけが真実”と、割り切った男。


「さて……蜘蛛の巣を張るか」


グレイは立ち上がる。

その足元に、小さな蜘蛛が1匹、静かに這っていた。


次の獲物は、神のふりをした“クソ神父”。

最初の駒を食い破るには、丁度いい相手だ。


その夜、聖職者が一人、教会の鐘の下で首を吊った。

足元には、血の文字でこう書かれていたという。


「お前の正義、いくらで売れた?」


――復讐屋、始動。

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