第88話「聖羅の提案」
1. それぞれの思い
ダブルデートが決まった後、
美陽と潤は駅へ向かいながら歩いていた。
「まさか、あんな偶然あるんだな!」
潤は笑いながら言った。
「幸大たち、普通に付き合ってる感じだったな」
「……うん」
美陽は、潤の隣で歩きながら、
上手く笑えていない自分に気づいていた。
(幸大と聖羅……付き合ってるんだね)
(そうだよね、もう私とは関係ないんだもん)
(なのに……なんで、こんなに心がざわつくの?)
2. 遊園地の約束
「美陽、遊園地久しぶりだよな?」
「うん……久しぶり」
「絶対楽しいぞ! 美陽、ジェットコースターとか平気?」
「えっ……いや、ちょっと怖いかも」
「じゃあ俺が隣乗ってやるよ!」
潤は美陽の肩を軽く抱き寄せるようにして言う。
「……ありがとう」
潤の優しさに、美陽は救われる気がした。
(私には潤がいる)
(だから、もう気にしちゃダメ)
3. 聖羅の期待
一方その頃、
幸大と聖羅も帰り道を歩いていた。
「すごい偶然だったね!」
聖羅は楽しそうに言った。
「うん……」
幸大は、少しぼんやりしていた。
「楽しみだなあ、4人で遊園地!」
「……そうか」
「うん! だって、みんなで遊ぶのなんて久しぶりじゃない?」
幸大は、それに対して何も言わなかった。
4. 幸大の違和感
遊園地。
(なんで、俺はこんな提案を断らなかったんだろう)
本当なら、適当に理由をつけて断ることもできたはずだった。
でも、
結局「別に、いいけど」と言ってしまった。
(俺は、何を期待してるんだ?)
幸大は自分の感情が分からなかった。
5. 聖羅の思惑
聖羅は、幸大の沈黙に気づいていた。
でも、
何も言わなかった。
(きっと、幸大くんも戸惑ってるだけ)
(でも、この機会にもっと”2人の関係”をはっきりさせたい)
聖羅にとって、
遊園地で過ごす時間は”ただの遊び”ではなかった。
それは、
美陽に「私が幸大くんの恋人だ」と示すためのものでもあった。
6. それぞれの夜
美陽は、ベッドに横になりながらスマホを見つめていた。
_潤:「来週の遊園地、楽しもうな!」
_ 美陽:「うん、楽しみ!」
送った後、
ふと窓の外を見上げる。
(幸大は……今、どんな気持ちでいるんだろう)
もう関係ないはずなのに。
なのに、
胸の奥がざわつく感覚が消えなかった。




