第81話「都内の美術大学での再会」
1. 幸大の新しい日常
福岡を離れて数年。
幸大は、都内の芸術大学の美術科で、
ひたすら絵を描く日々を送っていた。
(俺には、絵しかない)
母を失い、美陽とも別れ、
これまで築いてきたものをすべて手放した。
だからこそ、
もう過去のことを考えるのはやめたかった。
絵に没頭していれば、何も考えずに済む。
それが、幸大の生き方だった。
2. 偶然の再会
ある日、大学のキャンパスを歩いていると、
ふいに、誰かの視線を感じた。
「……幸大くん?」
聞き覚えのある声が、背後から聞こえた。
振り返ると、そこには――
聖羅が立っていた。
3. 変わらない微笑み
「……聖羅?」
数年ぶりの再会。
驚いた表情を見せる幸大に、
聖羅は、ほんの少しだけ不安げな表情を浮かべた。
「やっぱり……幸大くんだ」
そして、すぐに
懐かしそうに微笑んだ。
「まさか、同じ大学にいるなんて……びっくりした」
「……俺も」
「ずっと……探してたんだよ」
聖羅の言葉に、
幸大は少しだけ視線を落とした。
4. 変わらないもの、変わったもの
聖羅は、高校の頃と変わらず、
穏やかな雰囲気を纏っていた。
でも――
(どこか、以前よりも儚げになった気がする)
彼女の笑顔の奥には、
何か隠しているような寂しさがあった。
5. 交わされる言葉
「幸大くん、元気だった?」
「まあな」
「……連絡、くれればよかったのに」
「……連絡する理由、なかったし」
聖羅は、一瞬だけ寂しそうな表情を浮かべたが、
すぐに微笑んだ。
「そっか……でも、こうして会えてよかった」
「……ああ」
ぎこちない会話。
でも、聖羅はそれを嬉しそうに噛みしめていた。
6. ふたりの新しい時間
それから、聖羅と幸大は、同じ大学にいることをきっかけに、再び時間を共有するようになった。
授業が終わると、自然と一緒に帰るようになり、
学食で食事をすることも増えた。
聖羅にとって、幸大は”ずっと追いかけ続けた存在”だった。
その時間が、ようやく戻ってきた気がした。
でも――それが”一方的なもの”であることも、彼女は気づいていた。




