第8話 夏祭りとすれ違いの夜③
4. みんな、美陽を探す
「くそっ、美陽どこ行ったんだよ……」
幸大は焦りを隠せないまま、人混みをかき分けながら歩いていた。
祭りの雑踏、屋台の明かり、響く楽しそうな声。
だけど、その中に美陽の姿はなかった。
「さっきまでいたのに……なんでこうなるんだよ」
ポケットのスマホを握りしめる。
充電切れだなんて、最悪のタイミングだ。
「……」
一度、深く息を吸って、冷静になろうとする。
(美陽はそんなに遠くに行ってないはず)
元の場所に戻ろうとしているのか、それとも別の道を進んでしまったのか。
(いや、美陽なら……きっと元の場所に戻ろうとするはずだ)
そう考え、祭りの入り口付近へ向かう。
「幸大! いた!?」
後ろから蓮が駆け寄ってきた。
「見つかったか?」
「いや、ダメだ。俺は西側を探したけど、美陽の姿はなかった」
蓮が息を整えながら言う。
「梨沙子は?」
「東の屋台通りを探してる。でも、あの人混みじゃ見つけるのは難しいな」
「……潤は?」
「別のルートを探してる」
「……そうか」
幸大は奥歯を噛みしめた。
(なんで、俺が一緒にいるときにこんなことになるんだよ)
何も言わずに、再び足を早める。
蓮はそんな幸大の背中を見つめ、ふっと笑った。
「お前さ、やっぱ美陽のこと――」
「今はいい」
幸大は言葉を遮るように言い、さらに速足で歩いた。
(今はそんなことより、美陽を見つけないと)
(それだけだ)