第77話「幸大の隣にいるのは聖羅」
1. 幸大と聖羅の距離
美陽は、グラスを握りしめたまま、
幸大と聖羅の様子を遠巻きに見ていた。
2人の距離は近く、
まるでずっと一緒にいたかのように自然だった。
聖羅が何かを囁くと、
幸大は小さく笑った。
(……幸大、笑ってる)
その表情が、あまりにも自然で、
まるで”幸せ”そのものに見えた。
(幸大、今……幸せなんだね)
そう思った瞬間、
胸の奥が痛んだ。
2. 交わることのない時間
「すごくお似合いだよね」
「確かに、なんか雰囲気合ってる」
「いつから付き合ってるんだろ?」
クラスメイトたちの会話が、
美陽の耳に流れ込んでくる。
(……付き合って、どれくらい経つんだろう)
そんなこと、考えたって仕方がないのに。
グラスの氷が、カランと音を立てた。
「……美陽?」
「え?」
梨沙子が、心配そうに覗き込んでいた。
「さっきから、ずっと幸大を見てるけど……平気?」
「……うん、大丈夫」
(大丈夫じゃないなんて、言えないよ)
3. かけられない言葉
一度、声をかけようかと思った。
「……久しぶり」
そう言えば、
普通に会話ができるかもしれない。
でも、彼の隣には聖羅がいる。
幸大は、美陽のことなんか見ていない。
(私が話しかけたら、聖羅はどう思うんだろう)
(幸大は、どう思うんだろう)
そう考えてしまったら、
足が動かなかった。
(もう、何を話せばいいのかも分からない)
4. 幸大の視線
同窓会が終盤に差し掛かるころ、
ふと幸大が視線を動かした。
彼の目が、美陽を捉えた――。
ほんの一瞬、
一瞬だけ目が合った気がした。
でも、
幸大は、何も言わずに視線を逸らした。
(……なんで、何も言わないの)
胸の奥が、
ズキッと痛んだ。
(私たち、こんなに遠い存在だったっけ?)
5. 終わる時間、残る想い
「そろそろ解散か」
「またみんなで集まろうよ!」
明るい声が飛び交う。
美陽も、
梨沙子と一緒に会場を後にしようとした。
ふと、
幸大の背中が視界に入る。
その隣には、
やっぱり聖羅がいた。
(幸大は、もう私の知らない時間を生きてる)
(私がいなくても、幸せに過ごせてる)
それなら――
(私は、これでよかったんだよね)
そう自分に言い聞かせながら、
美陽は会場を後にした。




