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15年目の愛  作者: みいな
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第72話「葬儀での再会、空大との時間」

1. 葬儀の場での再会


母の葬儀が静かに執り行われていた。


親族は少なく、ひっそりとした空間だった。


幸大は、祭壇に飾られた母の遺影をじっと見つめていた。


(……母さん)


どんなに見つめても、

もう二度と母が笑いかけてくれることはない。


そんなことは分かっているのに、

受け入れられないまま時間だけが過ぎていた。


「兄貴」


ふいに、後ろから声がした。


幸大が振り返ると、

そこには見慣れた顔があった。


弟・空大たかひろ


2. 久しぶりの兄弟


「……空大」


「久しぶりだな」


空大は、以前よりも少し大人びた顔をしていた。


福岡で暮らしている彼とは、もう何年もまともに話していない。


「来てくれたんだな」


「あたりまえだろ」


空大は、どこか気まずそうに言った。


「母さんのこと、聞いたとき……正直、信じられなかった」


「……俺も、まだ信じられねぇよ」


幸大の声は乾いていた。


空大はしばらく幸大を見つめてから、

ふっと息を吐いた。


「……兄貴、ちょっと飯でも行かねぇ?」


3. ファミレスでの思い出話


葬儀の後、2人は近くのファミレスに入った。


向かい合って座るのは、

いつぶりだろうか。


「兄貴、ちゃんと飯食ってるか?」


「……まあな」


「嘘つけ」


空大は苦笑しながら、メニューを開いた。


「俺、ハンバーグにするわ」


「……なら、俺も」


やがて、料理が運ばれてくる。


幸大は、何気なくハンバーグを見つめた。


(そういえば、母さんが作るハンバーグ、好きだったな)


ふと、そんな記憶がよみがえる。


4. 変わらないものと、変わってしまったもの


「母さんさ」


空大が、ポツリと呟いた。


「昔、俺が風邪ひいたとき、ずっと看病してくれたんだよな」


「……ああ、覚えてる」


「兄貴のときも、そうだっただろ?」


「……ああ」


母は、決して完璧な親ではなかった。

だけど、ちゃんと愛してくれていた。


「母さん、笑ってるときはすごく優しかったよな」


「……そうだな」


思い出話をするたび、

母がもうこの世にいないという現実が、じわじわと胸に広がる。


(母さん、なんで……)


心の奥に湧き上がる悔しさを、幸大は飲み込んだ。


5. 空大の提案


「兄貴」


空大は、少し真剣な顔をして言った。


「福岡に来なよ」


幸大は、フォークを持つ手を止めた。


「……福岡?」


「父さん、新しい母さんとうまくやってるし、家も広い」


「兄貴が1人でここにいるより、ずっといいと思う」


幸大は、無言のまま空大の顔を見た。


「兄貴、これからどうするつもりなんだよ?」


(どうするつもり、か……)


答えは、まだ出ていなかった。


6. 答えはまだ出せない


「……考えとく」


幸大は、それだけ答えた。


空大はそれ以上何も言わず、ただ小さく頷いた。


「……無理すんなよ」


「別に、無理なんかしてねぇよ」


「兄貴は、昔からそうやって強がる」


「……」


「でも、本当は無理してるくせに」


幸大は、目の前のコーヒーをゆっくりと飲み込んだ。


(……俺は、本当に無理なんかしてないのか?)


答えは、分からなかった。


7. 母のいない部屋へ


食事を終え、2人はファミレスを出た。


「兄貴、また連絡するから」


「……ああ」


そう言い残し、空大は去っていった。


幸大は1人になり、

静まり返った家へと戻る。


部屋の扉を開けると、

母のぬくもりが残っているような気がした。


でも、そこに母の姿はない。


(俺、これから……どうすりゃいいんだよ)


しばらく無言で部屋を見渡し、

幸大はゆっくりと座り込んだ。


8. 眠れない夜、選ぶべき道


その夜、幸大はなかなか寝付けなかった。


この家に、俺1人。


誰もいない。


電気を消すと、余計に孤独が襲ってくる。


(……俺は、ここにいてもいいのか?)


福岡へ行けば、また違う生活がある。


(……福岡へ行くべきなのか?)


考え続けるうちに、

幸大の心の中に、少しずつ1つの答えが浮かび上がっていた。



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