表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15年目の愛  作者: みいな
71/91

第71話「喪失と後悔の夜」

1. 動かない時間


幸大の部屋には、

ただ時計の針の音だけが響いていた。


美陽は、ずっと幸大の背中を抱きしめていた。


「……俺、どうしたらいいんだよ……」


幸大の声は、ひどく掠れていた。


美陽は何も言えず、ただ彼の震える肩を感じていた。


(幸大……)


ずっと強がっていた幸大が、

今は崩れ落ちるように、ただ泣いていた。


美陽は、その痛みを少しでも受け止めたくて、

そっと彼の背中を撫で続けた。


2. 母の姿が消える


しばらくすると、

救急隊員が到着した。


彼らが、母の体を運び出す。


「……やめろ」


幸大は、微かに声を上げた。


「……母さんを……連れて行くな」


「幸大……」


「お願いだから……待ってくれよ……」


しかし、誰の声も届かない。


母は、ただ静かに運ばれていった。


そして、玄関のドアが閉まると――


この家から、母が完全に消えた。


3. 幸大の拒絶


その瞬間、幸大はゆっくりと立ち上がった。


「……帰れよ」


「え?」


美陽は、思わず顔を上げた。


「もう、帰れよ」


幸大は、美陽を見ようとしなかった。


ただ、冷たい声で言った。


「お前がいたって、何も変わらねぇだろ」


「……幸大」


「俺のせいで、母さんは死んだんだ」


「違う!」


「違わねぇよ!!」


幸大が、初めて声を荒げた。


4. どうして?


「俺があんなこと言わなければ、母さんは死ななかった!」


「俺が帰る前に、もっとちゃんと考えてたら……!」


「俺が、もっと……」


幸大の拳が、震えていた。


「……俺のせいなんだよ」


「だから、お前はもう俺に関わるな」


「……」


美陽の喉が、詰まる。


「お前が何言ったって、何も変わらねぇ」


「俺は、もうどうでもいいんだよ……」


5. 美陽の選択


「……それでも」


美陽は、小さく呟いた。


「それでも、私は幸大のそばにいる」


「……なんでだよ」


「放っておけるわけないでしょ……!」


「幸大は、大切な人を失ったんだよ……?」


「苦しいのは、当然だよ……!」


「でも、そんな時に1人になっちゃダメなんだよ……!」


涙が溢れそうになりながら、

美陽は必死に言葉を絞り出す。


「私がいるよ……!」


「ずっと、そばにいるから……!」


6. それでも届かない想い


「……もう、いい」


幸大は、美陽の言葉を振り払うように言った。


「お前は、潤のところに帰れよ」


「……っ!」


「俺のことなんか、気にしなくていい」


「俺は……もう、誰にも関わりたくねぇんだよ」


美陽の心臓が、ぎゅっと締めつけられる。


(どうして……)


(どうして、そんなこと言うの……?)


7. 崩れる心


「……わかった」


美陽は、絞り出すように言った。


「でも、幸大」


「私は、絶対に諦めないから」


「何度だって……幸大のそばに行く」


「だから、1人にならないで」


「……頼むから」


幸大は、何も言わなかった。


ただ、美陽の目を見ようとしないまま、

静かに顔を背けた。


「……帰れ」


美陽は、最後にもう一度だけ幸大を見つめ、

ゆっくりと玄関の扉を開いた。


8. 夜の中に消えていく声


家を出ると、

冷たい夜風が美陽の頬を撫でた。


「美陽……」


待っていた母が、そっと声をかける。


「……ダメだった」


美陽の目から、涙が零れ落ちた。


「幸大、1人になろうとしてる……!」


「どうしたら……どうしたらいいの……?」


母は、そっと美陽を抱きしめた。


「大丈夫よ……あの子は、1人じゃない」


「でも、今は……時間が必要なのよ」


「……うん」


美陽は、母の胸に顔をうずめながら、

止まらない涙を流し続けた。


(お願いだから、幸大……)


(1人にならないで……!)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ