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15年目の愛  作者: みいな
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第70話「美陽、幸大の元へ」

1. 鳴り響く電話、急ぐ足


「お母さん! すぐに準備して!」


美陽は、スマホを握りしめながら叫んだ。


リビングでお茶を飲んでいた母親が、驚いて顔を上げる。


「美陽? どうしたの?」


「幸大が……幸大が……おばさんが亡くなったって……!」


「えっ……!?」


母親の顔色が一瞬で変わる。


「とにかく、行かなきゃ!」


「わかった! すぐにタクシー呼ぶ!」


母親が慌ててスマホを取り出すのを確認し、

美陽は震える手で上着を羽織った。


(幸大……お願い、待ってて)


2. 夜の街を駆ける


タクシーに乗り込むと、

美陽は焦る気持ちを抑えきれなかった。


「運転手さん、すみません、急いでください!」


「かしこまりました」


街の灯りが流れる中、

美陽の心臓は早鐘のように打ち続ける。


(さっきまで、幸大と話してたのに)


(あの時、帰らないで、もっと話してたら……)


そんな”もしも”を考えても、

もう時間は戻らない。


「美陽、大丈夫だからね」


隣に座る母親が、そっと手を握ってくれる。


「幸大くん、1人にしちゃダメよ」


「……うん」


美陽は、涙をこらえながら頷いた。


3. 幸大の家の前


タクシーが止まり、

2人は急いで幸大の家へ向かった。


玄関の灯りはついている。


しかし――


何の音もしない。


「……幸大」


美陽は、震える指でインターホンを押した。


ピンポーン――


反応はない。


(幸大……)


「美陽、鍵は開いてる?」


母親の声に、美陽はドアノブをそっと回した。


――開いた。


4. 静まり返ったリビング


「幸大?」


玄関に入ると、

家の中は異様に静かだった。


リビングのテーブルには、

未開封の水と、片付けられないままの食器が置かれている。


空気が重い。


「幸大……どこにいるの?」


美陽がそっと奥へ進むと、

母親の部屋の扉がわずかに開いていた。


5. 崩れ落ちた幸大


部屋の中に入ると――


幸大は、母のベッドのそばに座り込んでいた。


母の冷たい手を握りしめたまま、

ただ、じっと動かない。


「幸大……!」


美陽が声をかけるが、

幸大は反応しない。


顔は青ざめ、目は赤く腫れ上がっていた。


まるで、感情がすべて抜け落ちたかのようだった。


6. 美陽の胸を突き刺す現実


(こんなの……嘘だよね)


さっきまで、一緒に笑ってたのに。

「帰るよ」って言ってたのに。


こんなこと、あるはずない。


「……幸大」


そっと、彼の肩に触れる。


すると、


「……俺のせいだ」


小さな声が聞こえた。


「……幸大?」


「俺が……あんなこと言ったから……母さんは……」


涙はもう枯れ果てていた。


ただ、呆然としたまま、幸大は小さく呟いた。


「俺のせいで……母さんは死んだ……」


7. 幸大を抱きしめる美陽


「違うよ……!」


美陽は、気づけば幸大の背中を抱きしめていた。


「そんなの……違う……!」


「俺のせいだ……俺が……」


「違うよ!」


美陽の声が震える。


「幸大のせいじゃない……!」


「母さんは……母さんは……」


「……幸大のこと、大好きだったよ……」


その言葉に、幸大の肩がわずかに震えた。


そして、美陽の胸に顔を埋めるように、崩れ落ちる。


「……俺、どうしたらいいんだよ……」


「……ずっと一緒にいるから……」


涙が、美陽の頬を伝う。


(お願いだから、1人にならないで)


ただ、それだけを願いながら、

幸大の背中をそっと撫で続けた。



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