第68話「偶然の再会」
1. 夜のコンビニ前での出会い
「幸大?」
その声に、幸大は顔を上げた。
そこにいたのは、美陽だった。
夜のコンビニの光の下、
彼女は驚いたように幸大を見つめている。
「……美陽」
「こんな時間にどうしたの?」
幸大は、一瞬返事に詰まった。
「……ちょっと、外の空気が吸いたくて」
「……そっか」
美陽は、それ以上何も聞かず、
幸大の隣に立った。
2. 何も聞かずに、ただ隣にいる
「……何してたんだ?」
幸大が問い返すと、
美陽は「母さんと買い物帰り」と答えた。
「たまたま寄っただけ。でも……幸大がここにいるなんて、珍しいね」
「……まあな」
気まずい沈黙が流れる。
いつもなら、美陽は無邪気に話しかけてくるのに。
今日は、なぜか静かだった。
(俺の様子、バレてる……?)
そう思った瞬間、
「……何かあった?」
美陽が、ふっと囁いた。
3. ふと、こぼれた本音
「……別に、何もねぇよ」
幸大は、反射的にそう答えた。
だけど――
「……嘘」
美陽の声は優しかった。
「幸大、何かあったときって、目をそらすから」
(……っ!)
図星だった。
「……」
美陽は何も言わず、
ただ幸大の顔を見つめていた。
そのまっすぐな視線が、
幸大の胸の奥に引っかかる。
「……俺さ」
ふと、口が勝手に動いた。
4. 幸大が語る”家のこと”
「母さんと、喧嘩した」
美陽は黙って聞いていた。
「……俺、ずっと守るって決めてたのに、
結局、傷つけるようなこと言っちまった」
「何て言ったの?」
「“母さんが俺に甘えてくるんじゃねぇの”って」
その言葉に、美陽の表情が変わった。
「……幸大」
「違うんだ。そういうつもりじゃなかったんだけど……
でも、結局、母さんを傷つけたのは俺だ」
幸大は、自嘲気味に笑った。
「俺、母さんを支えたいって思ってたのにさ……
なんか、結局、俺も母さんのせいにしてるだけだったんじゃねぇのかな」
5. 美陽の言葉
美陽は、しばらく考えてから言った。
「幸大は、誰よりもお母さんを大切にしてる」
「……それが、大切にしてるやつの言葉かよ」
「言葉じゃないよ。気持ちの問題だよ」
美陽は、優しく微笑んだ。
「幸大は、ずっとお母さんのために頑張ってたんでしょ?」
「……あぁ」
「だったら、お母さんもわかってるよ」
「……」
「きっと、お母さんは幸大を許してくれるよ」
その言葉が、
幸大の胸にすっと染み込んだ。
6. 取り戻せるかもしれないもの
「……そっか」
幸大は、ふっと息を吐いた。
「じゃあ、俺、帰るよ。母さんに謝る」
「うん。ちゃんと話せるといいね」
久々に、2人は少しだけ笑い合った。
「じゃあな」
「うん、おやすみ」
軽く手を振って、
幸大は家へと向かう。
7. 予期せぬ夜の始まり
歩きながら、
幸大は美陽の言葉を思い出していた。
(母さんは、許してくれる……よな)
(ちゃんと話せば、大丈夫だよな)
そんな期待を抱きながら、
幸大は家のドアを開けた。
しかし――
次の瞬間、
彼の目に飛び込んできたのは、静まり返ったリビングと、母の部屋の扉が半開きになっている光景だった。
(……母さん?)
胸騒ぎがする。
足が、勝手に部屋へ向かう。
扉を押し開けた瞬間、
幸大の視界に広がったのは――ベッドの上で動かない母の姿だった。




