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15年目の愛  作者: みいな
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第67話 「何気ない言葉が、傷つけた」

1. 穏やかなはずだった夜


「もう、そんなに気を遣わなくていいんだよ」


母が、台所で料理をしながらそう言った。


「今月もちゃんと家賃払えたし、あんたはもっと自分のことを考えなさい」


「……わかってるよ」


夕食の準備をする母の背中を見ながら、幸大は曖昧に返事をした。


(もっと自分のことを考えろ、ね……)


そう言われても、どうすればいいのかわからない。

俺が働かなくちゃ、母さんは生活できないのに。


(結局、俺は”普通”の高校生じゃないんだよ)


2. ささいな言葉が、すれ違いを生む


「そういえば、最近の学校はどう?」


「……別に、普通」


「友達とはうまくやってる?」


「……あぁ」


母の声はどこか心配そうだった。


「ねえ、幸大」


母は少し言いづらそうにしながら、

ふと食器を置いた。


「本当に……無理してない?」


「……は?」


「いつも頑張ってくれてるのはわかってるけど、

あんたはまだ高校生なのよ?」


「だから?」


「もっと、甘えてくれてもいいのよ」


(……甘える?)


幸大は、母の言葉に違和感を覚えた。


(俺は、甘えるなんてできる立場じゃねぇよ)


(それに――)


「母さんが俺に甘えてくるんじゃねぇの?」


3. 我慢していた想いが爆発する


「俺、母さんのこと支えようとしてたんだけど」


「それは……」


「母さんのために働いて、

家のこともできるだけ手伝って、

学校でも何も問題起こさないようにして……」


母は、言葉を詰まらせた。


「でもさ、結局何やっても、母さんは幸せそうじゃないじゃん」


「幸大、それは――」


「俺だって好きでこんな生活してるわけじゃねぇんだよ!」


ガタンッ


テーブルの上のコップが倒れた。


静寂が落ちる。


母の表情が、苦しそうにゆがむ。


「……ごめんね、幸大」


4. 取り返しのつかない空気


幸大は、母の顔を見た瞬間、

自分が言ってしまったことを後悔した。


(違う、そうじゃない)


(そんなつもりで言ったんじゃないのに)


でも、もう遅かった。


母は静かに席を立ち、

「ちょっと……休ませて」と言って、部屋へと戻ってしまった。


幸大は、握りしめた拳を震わせた。


「……くそ」


居ても立ってもいられず、

幸大は家を飛び出した。


5. 冷たい夜風の中で


夜の風が冷たい。


コンビニの自動ドアが開く音がして、

幸大はなんとなく店の前に立っていた。


(俺は、何やってんだ……)


さっきの言葉を思い出すたびに、

胸が締めつけられる。


「母さんが俺に甘えてくるんじゃねぇの?」


あの言葉を、母はどう受け止めただろうか。


「……俺、最悪だな」


ため息をつき、スマホを取り出す。


(帰って、謝るべきか……)


そう思っていたその時、


「幸大?」


聞き覚えのある声がした。


顔を上げると、

そこには美陽が立っていた。


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