第66話 美陽、確信する違和感
5. 確信する気持ち
(もう、幸大は私を見ないんだ)
(もう、私は……幸大の中にはいないんだ)
すれ違ったあとも、
美陽は振り返らなかった。
だけど――
心の奥では、どうしようもない寂しさが広がっていく。
(それなのに、どうしてこんなに胸が苦しいの?)
(私……まだ幸大のこと……)
頭の中に浮かんだ言葉を、
美陽は慌てて振り払った。
(違う! 私は潤といるんだから!)
(幸大のことなんて、もう気にしなくていいはずなのに……)
だけど、どれだけ否定しても、
消えてくれない気持ちがある。
6. 幸大の立場、幸大の選択
すれ違ったあと、
幸大はふっと小さく息を吐いた。
(……やっぱり、目をそらしてしまった)
美陽の姿が目に入った瞬間、
心がざわついた。
でも、目を合わせたら、
自分の気持ちが揺らいでしまいそうだった。
(これでいいんだよな)
(俺は、ただ美陽が幸せならそれでいいんだから)
だけど――
遠ざかる美陽の背中を見ながら、
**“本当にそれでいいのか”**と自問してしまう自分がいた。
7. もう、戻れないの?
家に帰ってからも、
美陽の心はモヤモヤしたままだった。
(あの時、幸大に呼びかけていたら、何か変わったのかな)
(でも、幸大はきっと何も言わなかったよね)
スマホを見ると、潤からのメッセージが届いていた。
「今日は楽しかった! 次のデートも楽しみだな!」
(……私も、楽しみなはずなのに)
なぜか、心から”楽しみ”と思えなかった。
私、本当に潤が好き?
その疑問が、もう誤魔化せないほどに大きくなっていた。
8. すれ違い続ける2人
次の日。
朝、学校の廊下で、また幸大とすれ違った。
だけど、今度は美陽が目をそらした。
(もう、私も気にしない)
(そうしないと、苦しいから)
でも――
教室の扉を開ける前、
幸大はほんの一瞬、美陽の後ろ姿を見つめていた。
それぞれの心に違和感を抱えながら、
それでも2人は”何もなかったふり”を続けていた。




