第60話 潤とのデート、確かめる気持ち
1. 潤からの誘い
「今度の休み、2人で出かけない?」
放課後、校門の前で待っていた潤が、
美陽の前に立ち、自然にそう言った。
「えっ?」
「せっかく付き合ってるのに、まだちゃんとデートしてないでしょ?」
潤はそう言いながら、穏やかに微笑む。
「だから、2人でどっか行こうよ」
美陽は、一瞬だけ”誰かの顔”が頭をよぎる。
でも、すぐにそれを振り払った。
「……うん、行きたい!」
2. みなとみらいでのデート
デートの日、2人はみなとみらいへ向かった。
「観覧車、久しぶりに乗りたいな!」
「じゃあ、最後に乗ろうか」
最初は、映画を見て、
そのあとショッピングモールでぶらぶらしながら話す。
潤はいつも通り優しく、
美陽が話すたびに「そっか」と頷いてくれる。
(……楽しい)
美陽はそう思った。
3. それでも、“誰か”を思い出してしまう
ゲームセンターでコインゲームをしたり、
カフェでアイスを食べたり、
楽しい時間を過ごしているはずなのに――
ふとした瞬間に、幸大のことを思い出してしまう。
「あ、このゲーム幸大が得意だったな」
「……あ、違う違う」
(なんで、今思い出すの?)
潤が隣にいるのに。
今は潤とデートしてるのに。
4. 潤の優しさと、胸のざわつき
「どうした?」
「え?」
「なんか、さっきからちょっと考え事してない?」
潤が、静かに美陽を覗き込む。
(バレた……?)
「ううん、なんでもないよ!」
美陽は笑顔を作り、ぎゅっと潤の腕にしがみつく。
「今日はすごく楽しい!」
「……そっか、それならよかった」
潤は、美陽の言葉に安心したように微笑んだ。
5. 観覧車の中で、胸に響く言葉
デートの最後に、2人は観覧車に乗った。
「こうしてると、まるでドラマみたいじゃない?」
「そうだな」
少しずつ上がっていく観覧車。
街の灯りが広がる景色の中で、
潤は静かに呟いた。
「美陽」
「……なに?」
「……俺のこと、ちゃんと見てくれてる?」
ドキッとする。
「え?」
「いや……なんか、時々遠くを見てる気がするんだよね」
「そ、そんなことないよ!」
「……なら、いいけど」
潤は、それ以上何も言わなかった。
でも――
美陽は、自分が無意識に”遠く”を見ていたことに気づいてしまった。
6. 確かめたかったのは”幸大のことを忘れた自分”
デートが終わり、駅の改札で別れる。
「今日は楽しかった」
「うん、また次も行こうね!」
潤と別れたあと、
美陽はひとり、電車に揺られながら考えていた。
(潤が好き)
(……そう思ってる)
(でも……なんで、幸大を思い出すの?)
今日は、潤との時間を”確かめたかった”はずだった。
なのに、何度も幸大が頭をよぎった。
(……やっぱり、私、バカだ)
窓に映る自分の顔が、少しだけ寂しそうに見えた。




