第51話 夜の散策、2人きりの時間
1. 沖縄の夜、自由時間
「じゃあ、俺と梨沙子はホテルでゆっくりするわ」
「俺は他の班の連中と遊びに行く」
夕食を終えた後、班のメンバーはそれぞれ別行動を取ることになった。
「美陽、どうする?」
潤が自然に声をかける。
「せっかくだし、ちょっと散歩しようよ」
「うん、いいよ」
2人は、沖縄の夜風が吹く街へと歩き出した。
初めての、修学旅行での2人きりの時間。
2. 沖縄の夜風の中で
「夜の沖縄、なんか特別な感じするな」
潤がふっと笑う。
「うん。風が気持ちいいね」
「美陽、さっき海ではしゃぎすぎじゃね?」
「え、そうかな?」
「めっちゃ笑ってたじゃん。タコライス食べるときも、幸せそうな顔してたし」
「だって、美味しかったんだもん」
「……そっか」
潤は、美陽の手をそっと握る。
「……潤くん?」
「たまにはこういうのもいいだろ」
美陽は少し照れながらも、握られた手を離さなかった。
3. 幸大の影が頭をよぎる
歩きながら、ふと美陽は海の景色を思い出していた。
青い海、楽しそうに笑う潤、張り合うように泳ぐ幸大。
そして――
遠くから、静かに自分を見ていた幸大の目。
(なんで……思い出してるんだろう)
今、隣にいるのは潤なのに。
手を繋いで、2人だけの時間を過ごしているのに。
なのに――
頭のどこかで、幸大の姿を探している自分がいる。
4. 潤の問いかけ
「……誰のこと考えてる?」
突然の問いに、美陽は息をのむ。
「え?」
驚いて顔を上げると、潤はじっと美陽を見つめていた。
「今、お前、ちょっと遠く見てた」
「そ、そんなことないよ?」
「嘘」
潤の声は静かだった。
そして――
次の瞬間、潤はそっと、美陽の唇にキスをした。
5. 触れ合う唇、胸のざわめき
沖縄の夜風が、そっと2人の間を流れる。
「……潤くん」
「俺のことだけ見ててよ」
潤の低い声が、美陽の耳元に届く。
美陽は、しばらく何も言えなかった。
だけど、ぎゅっと唇を噛みしめて、静かに頷いた。
「見てるよ、ずっと……」
6. 交差しない視線
遠くの方で、幸大はその光景を見ていた。
少し距離のある場所から、2人の影が重なるのを。
「……っ」
幸大は何も言わずに、その場を去った。
何かを言う資格なんて、もうない。
ただ――
彼女はもう、自分の隣にはいない。
それを、また突きつけられただけだった。




