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15年目の愛  作者: みいな
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第5話 林間学習での変化

1. 林間学習の始まり


「明日から林間学習か……めんどくせぇ」


放課後の帰り道、幸大がぼそっと呟いた。


「めんどくさいとか言わないの! こういうの、クラスの絆を深めるチャンスなんだよ!」


美陽が張り切って言うと、隣で歩いていた梨沙子がクスッと笑った。


「美陽って、こういう行事すごく楽しみにするタイプだよね」


「うん! だってみんなで泊まりがけで山に行くなんて、ワクワクするじゃん!」


「俺は布団で寝れないのが嫌」


幸大はため息をついた。


「まぁまぁ、どうせやるなら楽しまないと!」


美陽は笑いながら手を振り、家へ帰っていった。


翌日、朝早くに学校に集合し、バスで林間学習の目的地へと向かう。


「美陽、隣いい?」


バスに乗り込んだ美陽に、潤が声をかけた。


「え? う、うん!」


「おー、俺もここ座るわ!」


蓮が後ろの席に座り、楽しそうに笑う。


「幸大は?」


「……前の方行く」


そう言って、幸大は一人で前方の席に座った。


「なんか機嫌悪くね?」


蓮が笑いながら呟くが、美陽は気づかないふりをした。


バスの中で、潤と美陽は学級委員の役割を確認しつつ、自然と会話が弾んだ。


(潤くんって、やっぱり話しやすいな……)


美陽はそんなことを考えながら、バスの窓の外に広がる緑を眺めた。


2. クラスの班分けと役割


「じゃあ、班ごとに分かれて食事の準備をしてねー」


キャンプ場に着くと、先生から指示が飛んだ。


「学級委員の二人は、全体の進行を見てね」


「はーい!」


「了解っす」


美陽と潤は、みんなが炊事場で作業をするのを見守りながら、フォローに回る。


「おい、火がつかねぇ!」


「水入れすぎだろ!」


あちこちでトラブルが起こるが、潤は冷静に指示を出していた。


「薪が湿ってるのかもな。こっちの乾いたやつ使ってみろ」


「水の量はこれくらいがベスト」


「おおー! さすが潤!」


クラスメイトからも信頼されている様子だった。


「潤くん、頼りになるね!」


「まぁ、こういうのは経験だからな」


美陽は、潤がリーダー気質な理由が分かった気がした。


3. 夜の肝試し


「では、今から肝試しを行いまーす!」


夜になり、先生の声が響く。


「ペアで行動してね。ペアはくじ引きで決めるよ!」


「うわー、誰とペアになるかな!」


「絶対怖いやつと一緒になりたくねぇ!」


美陽もドキドキしながら、くじを引いた。


「えっと……潤くん?」


「お、俺か」


潤とペアになったと分かると、周りから「おおー!」という声が上がった。


「なんか、いい感じじゃね?」


「委員コンビじゃん!」


美陽はちょっと恥ずかしくなりながら、ランタンを持って歩き出した。


「こ、怖くないよね……」


「怖いの?」


「べ、別に?」


「嘘つけ、めっちゃ顔に出てるぞ」


潤がクスクス笑う。


その時――後ろで「ガサッ」と何かが動いた。


「ひゃっ!?」


美陽は思わず潤の腕を掴んだ。


「……ただの風だって」


「そ、そっか……」


潤は美陽の手を見て、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑って言った。


「ま、怖かったら俺の後ろにいろよ」


「……うん」


その言葉が、なぜかすごく頼もしく感じた。


4. 幸大の違和感


「……」


その様子を、少し離れた場所から幸大は見ていた。


「おいおい、めっちゃいい雰囲気じゃん」


隣で蓮が笑いながら肘でつつく。


「……別に」


幸大はそっけなく答えたが、胸の奥がざわつく。


美陽が潤の腕を掴んだ。

潤が美陽に「怖かったら俺の後ろにいろ」と言った。


(……なんで、俺じゃなくて潤なんだよ)


初めて、強く思った。


美陽が自分以外の誰かと距離を縮めていくのが、こんなに嫌だなんて。


5. 雨の中のアクシデント


翌日、クラス全員で登山をすることになった。


「天気、ちょっと怪しくない?」


「うーん、降りそうだな……」


そんなことを言っていると、案の定、登山の途中で雨が降り出した。


「やばい、滑るぞ!」


「気をつけろ!」


美陽も慎重に足を進めていたが、足元の土がぬかるんで滑りやすくなっていた。


その時――


「わっ!」


美陽の足が滑り、バランスを崩した。


「美陽!」


とっさに手を伸ばしたのは、潤だった。


「大丈夫か?」


「う、うん……!」


潤の手が、美陽の腕をしっかりと掴んでいた。


「無理すんなよ。ちゃんと俺の後ろについてこい」


「……うん」


美陽は顔が熱くなるのを感じた。


その様子を、少し後ろから幸大はじっと見ていた。


「……」


もう、気づかないふりはできなかった。


美陽が誰かと近づくたびに、心の奥がざわつく。


それが、ただの幼馴染の感情ではないことも――。

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