第48話 ひとりの帰り道 - 捨てきれない想い
1. ひとりになった瞬間
アトリエの扉を閉めた瞬間、美陽は小さく息をついた。
「……はぁ」
幸大と聖羅と過ごした時間は、楽しかったはずだった。
なのに、胸の奥が苦しくてたまらない。
夜の冷たい風が吹きつける。
外の世界は静かで、まるで自分の気持ちを映し出しているようだった。
(もう、関係ないはずなのに)
何度もそう思おうとする。
でも――
幸大が聖羅を支えた瞬間、
彼の腕の中にいたのが自分じゃなかったことが、
どうしようもなく苦しかった。
2. こみ上げる涙
(私、何してるんだろう)
潤と付き合っている。
未来だって決めた。
それなのに、どうして――こんなにも幸大を見てしまうんだろう?
「……バカみたい」
そう呟きながら、足を止める。
目頭が熱くなっていた。
「……っ」
ふと顔を上げると、遠くに見える街の灯りが滲んで見えた。
(まだ……好きなんだ)
(私、まだ幸大のことが好きなんだ)
3. 受け入れるしかない気持ち
気づかないふりをしていた。
潤と一緒にいる時間は楽しくて、
優しい彼に守られているのは、心地よかった。
でも、それは”恋”とは違ったのかもしれない。
「……どうしよう」
涙がポタポタと落ちる。
誰にも言えない想い。
自分でも認めたくなかった感情。
だけど――
もう、ごまかせなかった。
4. 前に進むために
「……もう、戻れないのに」
泣いても、何も変わらない。
幸大は何も知らないし、私には潤がいる。
それなのに、心の奥でまだ幸大を求めてしまう。
「バカだな……私」
冷たい夜風が吹く。
美陽は小さく息を吸い込んで、涙を拭った。
そして、何事もなかったように、また歩き出す。
自分の気持ちにフタをして、前に進むために――。




