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15年目の愛  作者: みいな
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第40話 選べなかった想い、選んだ未来

クリスマス・イブの夜。


冷たい空気が街を包み込む中、美陽は潤と一緒に歩いていた。


イルミネーションが輝く道を抜け、駅へ向かう途中。

ふと、美陽は一つの道を通る。


そこは、幸大がよくいるアトリエの前の道だった。


1. 偶然の再会


(あ……)


美陽の足が、自然と止まる。


窓の向こうには、幸大の姿があった。


彼は一人、キャンバスの前に座り、筆を動かしていた。

淡々と、静かに絵を描いている。


クリスマスなのに、一人で。


(……幸大)


なぜか、その姿が胸に突き刺さった。


2. 目が合う


幸大はふと手を止め、窓の外を見る。


そして――


美陽と目が合った。


一瞬、時間が止まる。


お互い、何も言わないまま、ただ見つめ合う。


美陽は、何かを言いたかった。


だけど、言葉が出てこない。


(なんで……私、ここにいるんだろう)


彼と話したかったのか、それとも、何かを確かめたかったのか。


自分でもわからなかった。


3. 幸大の微笑み


幸大は、静かに美陽を見つめる。


そして――


小さく微笑んだ。


「……」


それは、「何も言わなくていい」という微笑みだった。


「大丈夫だよ」


そんな風に伝えてくるような、優しい表情だった。


幸大は、自分の気持ちを伝えないと決めていた。


それでも、こうして美陽が目の前にいると、

胸の奥が締めつけられるような感覚があった。


(……俺は、お前を見守ることしかできない)


それが、幸大が選んだ答えだった。


4. 立ち去る美陽


「……」


美陽は、何かを言いかけた。


だけど、言葉にならなかった。


(私、今さら何を言えばいいの?)


(もう、私は潤くんと付き合ってるのに)


(なのに、どうして……幸大が微笑んでるだけで、こんなに苦しくなるの?)


「美陽?」


後ろから、潤の声が聞こえた。


美陽は、はっとして、ゆっくりとアトリエから目を逸らした。


(私は、行かなきゃ)


潤がいるのに、幸大を見つめている場合じゃない。


(ちゃんと、潤くんのことを見なきゃ)


だけど、心の奥では――


「行こうか」


潤の声に、美陽はゆっくり頷いた。


そして、何も言わずにその場を去った。


5. 幸大の決意


美陽が歩き去る姿を、幸大は静かに見つめていた。


(……これでいい)


俺は、美陽に何も言わない。

それでも、ずっと好きだった。


今も、忘れられない。


だけど――


(彼女が笑えているなら、それでいい)


それが、幸大が選んだ道だった。


筆を握り直し、静かにキャンバスへと向き直る。


彼が今、描いているのは――微笑む美陽の絵だった。


エピローグ:それぞれのクリスマスの夜


美陽は、潤の隣にいるのに、心のどこかが満たされないまま帰路につく。

幸大は、一人で美陽の姿を描きながら、自分の気持ちを押し殺す。


二人の間には、言葉にできない距離ができていた。


だけど――


まだ、それを埋めることはできなかった。


クリスマスの夜は、静かに更けていく。


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