第39話:クリスマス・イブ - それぞれの時間
12月24日、クリスマス・イブ。
街はカラフルなイルミネーションに包まれ、どこもかしこもクリスマスムードに満ちていた。
幸せそうなカップルや、楽しそうに笑う家族連れ。
そんな賑やかな夜に――
三人の気持ちは、静かに揺れていた。
1. 美陽と潤のクリスマスデート
「なぁ、せっかくのクリスマスだし、ちょっとおしゃれしてくると思ったのに」
「え、これ普通じゃない?」
「いや、十分可愛いけどな」
待ち合わせの場所で、潤はからかうように言いながら微笑む。
美陽は、ちょっとだけ頬を染めた。
(ちゃんと、潤くんとの時間を楽しもう)
今日は、二人で過ごす初めてのクリスマスデート。
「イルミネーション、綺麗だな」
「うん……」
キラキラと輝く光の道を歩きながら、二人は自然と寄り添う。
潤は当たり前のように美陽の手を取る。
(ドキドキする……けど)
だけど、心の奥にある小さな違和感は消えなかった。
(……何かが足りない気がする)
自分は幸せなはずなのに、何かが満たされない。
それが何なのか、美陽はまだわかっていなかった。
2. 幸大の静かなクリスマス
その頃、幸大は一人、アトリエにいた。
キャンバスの前で、静かに筆を走らせる。
(クリスマスなんて、俺には関係ない)
そう思いながらも、どうしてか今日は集中できなかった。
手を止めて、ふとスマホを見る。
画面は静かで、通知は何もない。
(美陽、今頃潤と一緒にいるのかな)
そう考えると、胸の奥に小さな痛みが広がった。
だけど――
(もう俺が関わることじゃない)
何度もそう言い聞かせる。
それでも、心のどこかで美陽が笑えているのか気になってしまう。
3. 交差しない想い
美陽は、潤と二人でカフェに入っていた。
「楽しい?」
潤が微笑みながら、美陽の顔を覗き込む。
「……うん」
美陽は笑って答えた。
だけど――
心の中で、ふと幸大の姿が浮かんだ。
(今、何してるのかな)
アトリエで絵を描いているのか、それともどこかへ出かけているのか。
その答えを知りたくなる自分が、嫌だった。
「……美陽?」
「え?」
「今、ちょっとぼーっとしてた」
「う、ううん! そんなことないよ!」
美陽は慌てて笑うが、潤の表情が少し曇るのに気づいた。
(私、ちゃんと潤くんのことを見なきゃいけないのに……)
なのに、どうして。
どうして、幸大のことを考えてしまうんだろう。
4. 幸大の決意
幸大は、夜のアトリエを片付けていた。
クリスマス・イブだというのに、特に誰とも会う予定はない。
(美陽は、潤と一緒にいるんだろうな)
そう考えると、また胸の奥がズキズキと痛む。
(……でも、それでいいんだ)
俺が美陽を見守ることしかできなくても、
彼女が幸せなら、それでいい。
それが、俺が選んだ道だから。




