第36話 アトリエでの再会 - 幸大と星羅の絵を描く時間
アトリエに広がる、静かな時間。
幸大は、筆を持ちながらキャンバスに向かう。
対面には、同じように筆を走らせる星羅の姿があった。
「……」
「……」
二人の間には、必要以上の言葉はない。
ただ、絵を描くことに集中することで、心が通じ合うような気がしていた。
1. 絵を通じた繋がり
「ねぇ、幸大くん」
星羅が、ふと口を開いた。
「ん?」
「最近、少し雰囲気が変わったね」
「そうか?」
幸大は手を止めずに答える。
「うん。前よりも、絵に真剣に向き合ってる感じがする」
「……まぁな」
そう言いながら、幸大は筆を走らせる。
「最近は、色んなことを考えない時間の方が心地いい」
「……それ、わかるかも」
星羅は微笑みながら、また筆を動かす。
二人は、それぞれのキャンバスに向かいながら、静かに、でも確かに同じ空気を共有していた。
2. 幸大の心の変化
少し前まで、幸大は絵を描いている時間ですら美陽のことを思い浮かべていた。
(今、何してるんだろう)
(潤とどこかに出かけたりしてるのか)
そんなことばかり考えて、筆が止まることも多かった。
でも今は――
「……」
キャンバスの向こうにいるのは、星羅だった。
彼女は、静かに絵を描く。
言葉は少ないのに、なんとなく心が落ち着く。
(……こういう時間も、悪くないのかもしれない)
3. 星羅の視線
ふと、星羅が幸大の描く絵を覗き込んだ。
「やっぱり、幸大くんの絵ってすごいね」
「別に、普通だろ」
「ううん、普通じゃない」
星羅は少し微笑みながら、筆を置いた。
「私、こうして幸大くんと一緒に絵を描いてる時間、好きだよ」
「……」
幸大は、一瞬だけ手を止めた。
だけど、星羅の言葉をどう受け止めればいいのか分からず、ただ「そうか」とだけ返した。
星羅は、それ以上何も言わなかった。
ただ、それだけの会話なのに、どこか心に残った。
4. 影から見つめる視線
その時――
アトリエの窓の外に、ひとりの少女が立っていた。
美陽。
(……幸大)
偶然通りかかっただけだった。
でも、ふと視線を向けた先に幸大と星羅の姿が見えた。
二人は、静かに絵を描いていた。
会話はほとんどないのに、まるでお互いのことが分かり合っているような雰囲気があった。
(……何、この感じ)
美陽は、胸の奥がざわつくのを感じた。
5. 胸の奥のざわめき
(私……何をしてるんだろう)
ただの友達。
ただのクラスメイト。
そう思っていたはずなのに――
どうして、こんなに胸が苦しいの?




