第33話 幸大の気づきと、遅すぎた想い
月曜日の朝。
教室に入ると、いつもと同じようにクラスメイトたちの賑やかな声が響いていた。
だけど――
「え、マジ!? 美陽と潤、付き合うことになったの!?」
「やっぱりな~! 文化祭の時からいい雰囲気だったし!」
「お似合いだよね、二人とも!」
そんな言葉が、幸大の耳に飛び込んできた。
――その瞬間、時間が止まったような感覚に襲われる。
1. 予想していたはずなのに
幸大は、無意識に目線を動かした。
教室の真ん中、美陽の周りに人が集まり、楽しそうに話している。
潤も隣にいて、普段と変わらない笑顔を浮かべていた。
「いや、別に隠してたわけじゃないけどな」
「でも、もっと早く言ってよー! びっくりした!」
美陽は、少し照れくさそうにしながらも、笑顔だった。
――その笑顔が、胸に突き刺さる。
(……あいつ、本当に潤と……付き合ったんだ)
予想していたはずだった。
最近、二人がどんどん近づいていたことも。
潤が美陽を誘っていたことも。
でも、それでも――
現実として突きつけられると、思った以上に胸が痛い。
2. 幸大の静かな苦しみ
幸大は、静かに自分の席についた。
耳に入るのは、美陽を祝福するみんなの声。
「二人とも、めっちゃお似合いだよね!」
「潤って、やっぱり男らしいし、リードしてくれそう!」
「美陽、幸せ者じゃん!」
そのたびに、心がどんどん沈んでいくのを感じた。
(俺は、何をしてたんだ)
ずっと、美陽のことが好きだったのに。
言葉にしなくても、伝わっていると思っていたのに。
(……本当は、俺がそばにいたかった)
だけど、もう手を伸ばしても届かない。
3. その日の放課後
みんなが帰り支度を始める頃。
幸大は、教室の端で、ぼんやりと窓の外を見ていた。
すると――
「幸大」
不意に、美陽の声がした。
振り向くと、美陽がひとりで立っていた。
「……話せる?」
「……あぁ」
二人は、いつも話していたはずなのに――
今、この空気は、少しだけぎこちない。
4. 美陽の言葉、幸大の後悔
「……あのさ」
「……うん」
美陽は、少し言葉を探すように沈黙する。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「私、潤くんと付き合うことにした」
「……知ってる」
「……そっか」
幸大の声は、思ったよりも低く、乾いていた。
美陽は少し表情を曇らせながら、それでも続ける。
「……なんか、ちゃんと伝えたくて」
「別に……言わなくても、わかってる」
「……」
「お前が、潤を選んだってことも」
――それが、どうしようもなく、悔しかった。
美陽が何かを言いかけたけれど、幸大はそれを待たなかった。
「じゃあな」
そう言って、幸大はその場を立ち去った。
5. 幸大の決意
冬の冷たい風が、幸大の頬を刺す。
(……終わった)
頭では理解している。
でも、心の中はぐちゃぐちゃだった。
(こんなはずじゃなかった)
(俺は、美陽のことが好きだったのに)
手を伸ばせば、いつでも届くと思っていた。
だけど、もう美陽は、自分のものじゃない。
幸大は、ポケットの中で拳を握りしめた。
(俺は……)
(まだ、諦められない)




