第31話 潤の誘い - 誕生日の前の週
放課後の教室。
冬の夕暮れが窓の外を赤く染める中、美陽は机にプリントを片付けながら、ふと時計を見た。
(もうすぐ誕生日かぁ……)
クラスのみんなが何か準備しているのは気づいていたけれど、あえて気にしないようにしていた。
毎年みんなが祝ってくれるのは嬉しいけど、今年はなんだか心が落ち着かない。
そんな時――
「美陽、ちょっといい?」
不意に、潤の声がした。
振り向くと、潤が机に片手をつきながら、美陽をじっと見ていた。
「……なに?」
「今週の土曜、空いてる?」
「え?」
「誕生日の前に、二人で出かけない?」
「二人で?」
思わず、美陽は聞き返した。
「みんなで祝うのもいいけど、俺は二人でちゃんとお祝いしたいし」
「……」
美陽は、少し戸惑った。
潤とは最近、よく一緒にいる。
文化祭、打ち上げ、デート――少しずつ彼と過ごす時間が増えていった。
それが当たり前のようになってきたから、違和感はない。
でも、どこか胸の奥がざわついた。
(……なんで私、迷ってるんだろう)
「……いいの?」
「もちろん!」
潤はにっこり笑う。
その顔を見ていると、不思議と不安が消えていった。
「じゃあ……うん」
美陽は、小さく頷いた。
そのやり取りを、教室の端から幸大が静かに見ていた。
(潤と……二人で?)
クラスの他の連中が片付けをしている中、幸大の時間だけが止まっているような気がした。
(なんで、俺はこんなに胸が重いんだろう)
ずっと、美陽のことが好きだった。
それは変わらない。
だけど、今、彼女の隣にいるのは自分じゃない。
幸大は、手に持っていたペンを強く握りしめた。




