第24話 文化祭の余韻と、新たな誘い
第2話:帰り道、潤の誘い
打ち上げが終わり、夜の街に出ると、心地よい秋の風が吹いていた。
「楽しかったね!」
「うん、文化祭が終わっちゃったのは寂しいけど、最高の思い出になったね」
クラスメイトたちは口々にそう言いながら、それぞれの帰路につく。
「じゃあ、また明日ね!」
「お疲れー!」
賑やかだった打ち上げの余韻を残しながら、美陽も梨沙子と一緒に帰ることにした。
でも、その時――。
「美陽、ちょっといい?」
後ろから、潤の声がした。
「え?」
振り向くと、潤がこちらに歩み寄ってきていた。
「ちょっと話したいことがあるんだけど」
「え……?」
梨沙子は、美陽の肩を軽く叩いて微笑む。
「じゃあ、私は先に帰るね」
「え、いいの?」
「うん、気にしないで。じゃあまたね!」
そう言って、梨沙子は軽く手を振って駅へと向かっていった。
美陽は少し戸惑いながら、潤と二人きりになった。
1. 夕暮れの道を歩く
「……どうしたの?」
「ちょっと歩かない?」
「え?」
「別に深い意味はないけどさ、夜風が気持ちいいし」
潤は軽く笑って、美陽の隣に並んだ。
(……まぁ、いっか)
打ち上げも楽しかったし、少しだけ歩くくらいならいいかもしれない。
そう思いながら、二人はゆっくりと並んで歩き始めた。
「楽しかったな、打ち上げ」
「うん!」
「でも、お前、ずっと幸大を避けてたよな?」
「……!」
美陽の足が、ピタッと止まる。
「そんなことないよ」
「嘘つけ。バレバレだったし」
「……」
誤魔化すつもりだったのに、潤には簡単に見抜かれていた。
(やっぱり、バレてたんだ……)
「何かあった?」
「……」
言えない。
幸大が好きだってことも。
幸大に、好きな人がいると知ったことも。
でも、潤の視線は鋭かった。
「……ま、話したくないなら別にいいけど」
軽い口調だったけど、その声にはどこか優しさがあった。
(潤くん、ほんとに鋭いな……)
美陽は小さく息を吐いて、静かに歩き出した。
2. 潤の誘い
「なぁ、美陽」
「うん?」
「今度、二人でどっか出かけない?」
「……え?」
驚いて、思わず立ち止まる。
「せっかく文化祭も頑張ったしさ。ご褒美ってことで」
「ご褒美……?」
「そう。映画とかでもいいし、遊園地とかでもいいし」
「え、そんなデートみたいな……!」
「デートでいいじゃん」
さらっと言われて、美陽の心臓が跳ねた。
「っ……」
潤は、ニヤッと笑いながら美陽の反応を楽しんでいるようだった。
「お前、ほんと反応いいよな」
「も、もう! そういうのやめてよ!」
「じゃあ、行かない?」
「……」
冗談なのか、本気なのか。
でも、潤はまっすぐにこちらを見ていた。
その目が、冗談だけではないことを物語っているような気がして、美陽は少し戸惑った。
(……でも)
幸大を避けている自分。
このままだと、ずっと引きずったままになってしまう。
「……じゃあ、行ってみようかな」
「お、マジ?」
「うん、せっかくだし」
「よし、決まりな!」
潤は満足そうに笑った。
(……いいのかな)
潤と二人で出かける。
それは今まで考えたこともなかったこと。
でも、これが何かを変えるきっかけになるのなら――。
美陽は、心の奥の迷いを押し込めながら、夜風に吹かれて歩き続けた。
エピローグ:すれ違う想い
同じ頃、幸大は駅の近くで立ち止まっていた。
(美陽……)
打ち上げの間、彼女は一度も俺と目を合わせなかった。
それが、すごく気になっていた。
(俺……何かしたか?)
いや、違う。
美陽は、あの日から俺を避けてる。
文化祭の日から。
それが、どうしてなのかわからない。
ただ一つ言えるのは――
(このままじゃ、ダメだ)
幸大は、初めて焦りを感じていた。
でも、その時、遠くの道で見えたのは――
潤と、美陽が二人で歩いている姿だった。
(……なんだよ、それ)
潤が、美陽に何かを言い、美陽が驚いた顔をしている。
そして、少し照れくさそうに頷いたのを見た。
幸大の胸に、鋭い痛みが走る。
(……俺、今、めちゃくちゃ嫌な気分になってる)
それが、どういう感情なのか。
それを、どうすればいいのか。
幸大はただ、その場に立ち尽くしていた。




