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15年目の愛  作者: みいな
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第2話 新しい日常と揺れ動く心

第一部:高校時代



1. 幼馴染と新しいクラスメイト


新学期が始まって数日が経った。


美陽は新しいクラスに慣れつつあったが、やはり一番安心するのは幸大と一緒にいる時間だった。


「ねえねえ、今日は放課後どこか寄っていかない?」


昼休み、中庭で幸大と並んでお弁当を食べながら、美陽が提案する。


「ん……まあ、どこでもいいけど」


幸大はそっけなく答えるが、それはいつものことだった。


「じゃあ、駅前の新しいカフェ行ってみない? 梨沙子も誘うし!」


「……ああ」


そこへ、後ろからポンと肩を叩かれる。


「よっ、美陽、幸大!」


明るい声の主は、橋本蓮だった。


「なに話してんの?」


「放課後どこか寄っていこうって話!」


「へー、じゃあ俺も混ぜてよ」


「いいよ! みんなで行こう!」


美陽が笑顔で答えると、蓮がにやっと笑った。


「……あ、そうだ。潤も誘っていい?」


「潤?」


美陽は少し考えた。


長瀬潤。クラスの中心にいるような明るい性格で、初日から人気者だった。

彼は幸大や蓮とは小学生の頃にサッカーを一緒にしていたらしいが、美陽はそれまで彼のことを知らなかった。


「いいんじゃない?」


幸大は特に気にする様子もなく答えた。


「じゃ、潤も呼んでくるわ!」


そう言って蓮は教室へ戻っていった。


「……」


美陽は横目で幸大の表情を伺う。


「ねえ、潤くんってどんな人?」


「さあ……昔はそこまで仲良かったわけじゃないし」


「でも、サッカーやってたんでしょ?」


「まあな。別に仲悪いわけじゃないけど、そこまで深く関わったことはない」


「ふーん」


美陽は興味深そうに考えた。


(潤くんって、どんな人なんだろう?)


2. 放課後のカフェで


授業が終わると、美陽、幸大、蓮、梨沙子、潤の5人で駅前のカフェに向かった。


「ここ、最近できたカフェだろ?」


蓮が先頭を歩きながら言うと、梨沙子が頷く。


「うん。評判もいいみたい」


「へー、じゃあ期待だな」


カフェに入り、各自好きなドリンクを注文して座った。


「そういえば、潤くんはどこ中だったの?」


美陽が聞くと、潤は飲み物をストローでかき混ぜながら答えた。


「○○中。家はこの辺だけど、ここの高校は中学の友達が少ないから新鮮だよ」


「へえ、そうなんだ」


美陽は納得しながら、ふと幸大の方を見る。


彼は特に話に加わることなく、カップのフタを指でなぞっていた。


「幸大、静かだな」


蓮がニヤリとしながら言う。


「別に、話すことないし」


「相変わらずだな」


潤が笑うと、美陽は少しほっとした。


潤は話しやすい雰囲気で、誰にでも気さくに接するタイプらしい。


でも、美陽はなぜか落ち着かない気持ちになった。


幸大と蓮の関係性はなんとなく分かる。

けれど、幸大と潤はどういう関係なのか……何か、距離があるようにも感じた。


3. 幸大の変化


カフェを出たあと、帰り道。


「じゃ、また明日!」


蓮と潤が別の方向へ帰っていくと、美陽と幸大、梨沙子だけになった。


「楽しかったね」


美陽がそう言うと、梨沙子も微笑む。


「うん。潤くん、面白い人だね」


「でしょ? すごく明るくて、話しやすい!」


美陽が言うと、幸大がふと足を止めた。


「……美陽」


「え?」


「お前、潤のこと気に入ったのか?」


「えっ?」


突然の問いに、美陽は目を瞬いた。


「いや、ただ楽しかったなって思っただけだけど……」


「……そうか」


幸大は短く答えて、また歩き出した。


梨沙子が意味ありげに美陽を見つめる。


(幸大……今、ちょっと不機嫌だった?)


美陽は少しだけ胸がざわついた。


4. 小さな違和感


家に帰り、制服を脱いでベッドに寝転がる。


幸大の問いかけが、頭の中で繰り返された。


「お前、潤のこと気に入ったのか?」


(なんでそんなこと聞いたんだろう?)


それはただの幼馴染としての気遣いだったのか。

それとも……何か別の感情があったのか。


美陽はスマホを手に取り、幸大とのトーク画面を開いた。


『今日楽しかったね!』


送ろうかと思ったが、なんとなくやめた。


代わりに、幸大のプロフィールアイコンをじっと見つめる。


子供の頃から変わらない彼の雰囲気。

でも、最近はどこか遠くにいるように感じる。


(幸大は、何を考えているんだろう……?)


まだ気づいていなかった。

自分と幸大の間に、少しずつすれ違いが生まれ始めていることを。


――春は、静かに動き始めていた。

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