第19話 文化祭 - 揺れる想い、交差する気持ち
2. 準備期間 - クラスの団結と距離の縮まり
「じゃあ、最初のシーンから練習するぞ!」
演劇の練習が本格的に始まり、教室や体育館の一角でリハーサルが行われるようになった。
主演の潤と美陽は、脚本を手に持ちながら台詞の練習をする。
「君に会えてよかった……いや、もう少し感情を込めた方がいいかな?」
潤は台詞を読みながら、軽く考え込む。
「潤くん、結構真剣だね」
「そりゃそうだろ。やるからにはちゃんとしたいし、どうせなら面白い方がいいじゃん?」
潤は軽く笑うが、その姿勢は真剣だった。
一方の美陽は、台詞を覚えるのに必死だった。
「えっと……『私も……あなたのことが――』」
「あー、もっと感情こめて! そう、こう……相手を想う気持ちが伝わる感じ!」
「そんな急に言われても……!」
美陽が焦っていると、クラスメイトが笑いながら声をかける。
「でも、美陽と潤って意外とお似合いかもね!」
「演劇のカップル役って、なんか青春って感じする!」
「もう付き合っちゃえよー!」
「ちょ、やめてよ!」
美陽は慌てて手を振るが、潤は「まぁ、悪い気はしないけど?」と冗談交じりに笑う。
そんな様子を、少し離れた場所から見ている人がいた。
幸大は、特に何も言わずに舞台装置の準備を手伝いながら、美陽と潤のやり取りを静かに見つめていた。
(……楽しそうにやってるじゃねぇか)
(それなら、別にいい)
そう思ったはずなのに、心の奥に小さな違和感が広がっていた。
一方、クラス全体も演劇に向けて団結し始める。
衣装担当、音響担当、小道具担当――それぞれが自分の役割に真剣に取り組むようになっていた。
「なんか、うちのクラス、すごくまとまってきたよね」
「うん、最初はグダグダだったけど、みんな本気になってきた!」
「これ、成功させたいな」
文化祭まであとわずか。
演劇の準備とともに、クラスの絆も深まっていった。