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15年目の愛  作者: みいな
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第14話 過去編 - 幼い日の出会いと揺れる気持ち

小学2年生の春――


「美陽、お絵かき好きでしょ? 習ってみる?」


ある日、母親にそう言われた美陽は、少し迷った。


確かに絵を描くのは好き。


でも、「習う」ってなると、なんだか急にハードルが高い気がした。


「……うーん、私、上手じゃないし」


「別に上手じゃなくてもいいのよ。楽しく描ければ」


「……そうなの?」


「それにね、この前見学に行ったんだけど、すごく雰囲気がよくて、先生も優しそうだったわよ」


美陽は、少し考えた後、小さく頷いた。


「じゃあ……やってみようかな?」


こうして、週に一度の絵画教室に通うことになった。


初めての絵画教室


絵画教室のドアを開けると、すでに数人の子どもたちが絵を描いていた。


広いアトリエのような空間に、ずらりと並ぶ画材やキャンバス。


先生が優しく迎えてくれて、美陽は少し緊張しながら席についた。


「今日からよろしくね」


「は、はい……!」


と、その時だった。


「……お前、何してんの?」


どこかで聞いた声がして、美陽は驚いて隣を見た。


そこには、なんと幸大がいた。


「えっ、幸大くんもここ通ってるの?」


「まあな」


「知らなかった!」


「別に言う必要なかったし」


「そ、そうだけど……」


まさか学校以外の場所で会うなんて思っていなかった。


「……なんか変な感じ」


「何が?」


「だって、学校の外で会うの、なんだか不思議じゃない?」


「別に」


相変わらずそっけない幸大に、美陽は少しだけムッとした。


でも、それと同時に、「知ってる子がいてよかった」 という気持ちがふわっと心に広がる。


(ここなら、なんだか楽しく絵が描けそう)


2人だけの時間


それから毎週、美陽と幸大は並んで絵を描くようになった。


授業中はあまり話さないけれど、

ふとした瞬間に、互いの絵を見せ合ったり、意見を言い合ったりする時間が生まれる。


「幸大くん、絵、すごく上手だね!」


「まあな」


「ちょっとくらい照れてもいいのに……」


「照れる理由ないし」


「むぅ……」


でも、幸大が黙って美陽の絵をちらっと見て、ポツリと言った。


「お前のも、悪くねぇよ」


「え?」


「……色の使い方が、いいと思う」


「……!」


なんだかんだで、ちゃんと見てくれてるんだ――


そう思うと、胸が少しくすぐったくなった。


美陽にとって、絵画教室はただの習い事ではなく、幸大と一緒にいられる「特別な場所」になっていった。



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