第1話 高校生活の始まり(高校1年生)
第一部:高校時代
1. 春の訪れと新たな生活
桜が舞い散る四月の朝。新しい制服に袖を通した生徒たちが、期待と緊張の面持ちで校門をくぐっていく。
「ついに高校生か……」
**高橋幸大**は小さく呟きながら、校門を通った。
その横には、幼馴染の**高瀬美陽**がいる。
「ねえ幸大! 高校生活って、やっぱりなんか特別な感じがするよね?」
「……まあな」
幸大は淡々と答えながら、ふっと口角を上げた。
美陽は小学校の頃からずっと幸大を想い続けてきた。
高校でもまた一緒に過ごせることが、密かに嬉しくて仕方がない。
でも、それを悟られないように、いつも通りのテンションで話す。
2. クラス発表と再会
「えーっと、クラス発表……」
美陽は掲示板を見上げて、自分の名前を探した。
「1年1組……あっ!」
「俺も1年1組だ」
隣にいた幸大が、さりげなく言う。
「ほんと!? やった!」
美陽は嬉しそうに手を叩いた。
「私の名前もあるわ」
**親友の坂本梨沙子**も同じクラスだった。
「やったね、梨沙子!」
「うん、一緒でよかった」
美陽は胸をなでおろした。
3. 新しい出会い
教室に入ると、すでに何人かの生徒が席についていた。
「よっ、幸大!」
背が高く、明るい雰囲気の男子が幸大に手を振った。
**橋本蓮**だった。
「蓮も同じクラスか」
「おう! お前が一緒なら、つまんない高校生活にはならなそうだな」
幸大は無言で肩をすくめた。
その時、別の男子が蓮の肩を軽く叩いた。
「蓮も1組だったんだな」
**長瀬潤**がそこにいた。
「お、潤も一緒か! そういえば、小学生の頃サッカーで一緒だったな」
「そうそう。久しぶりだな、幸大も」
幸大は少し驚いた表情を見せるが、すぐに落ち着いた様子でうなずいた。
「……久しぶり」
美陽はそのやり取りを見ながら、潤のことを不思議そうに見つめた。
「えっと……」
「ああ、ごめん。俺は長瀬潤。小学生の頃、幸大と蓮と一緒にサッカー習ってたんだけど、中学は別だったからな」
「そっか……はじめまして! 高瀬美陽です!」
美陽は笑顔で自己紹介した。
「よろしく」
潤も優しく微笑みながら返した。
――新たな高校生活の中で、彼女はまだ知らなかった。
この出会いが、後に自分の運命を大きく変えることになることを。
4. 昼休みの違和感
授業が終わり、昼休みになった。
「幸大、一緒に食べよう!」
美陽は当たり前のように声をかけた。
「いいけど……どこで?」
「中庭行こ! ほら、桜がきれいだし!」
「はいはい」
幸大はやれやれといった様子で立ち上がった。
二人並んで歩いていると、ふと美陽は幸大の横顔を見た。
どこか、遠くを見ているような表情だった。
「ねえ、幸大」
「ん?」
「なんか、考え事してる?」
「……いや、別に」
幸大は短く答えた。
美陽はそれ以上聞けず、そっと視線を逸らした。
5. はじまりの予感
放課後。
「おーい! みんなで駅前のカフェ行かね?」
蓮がクラスメイトたちを誘った。
「いいね! 行こう行こう!」
美陽も楽しそうに頷く。
しかし、幸大は軽く息を吐いた。
「俺はいい」
「えー、つれないなぁ」
蓮がからかうように言うが、幸大は気にせず歩き出した。
「じゃあ、また明日」
そう言って、彼は一人で帰っていく。
――春の始まり。
それは、すれ違いの始まりでもあった。