一章 狐の嫁入り
欲。それはあらゆるものを求めるもの。散らばっている。あらゆる欲しいをかき集めた。また、“今”の大切さを自分なりに述べた、青春ストーリー
フィクションあり 天気の子などの作品イメージして書いてます。
ただ俺は、勇気が欲しかった。そう思って早3年経った。朝になって俺は体を起こす。夏も真っ盛りだというのにカーテンの隙間から溢れんばかりの日差しはどこか寂しげで異常に冷たく感じた。そう感じるのは自分の部屋が暗いからだろうか、それとも自分の心が暗いからだろうか。どちらにしてもどうでもいい。昔から自分はどうでもいいことに気づく癖がある。自分の勉強机にはくしゃくしゃに丸められた、紙がある。それも少しではない大量に丸められた紙が無造作にぶちまけられていた。時刻は6時になりカーテンを開けると眩しい日差しがさした。生活の気配がする。今日もあちらこちらで生活が始まっている。
「そう言えば優。貴方最近学校は楽しいの?」と聞いたのは俺の母、松野 さゆみだ。
「うん。楽しいよ母さん。」と、適当に返す。それが嘘だって母さんは気づいているのだろうか?母は子供がなにをしているかはすぐに気づくというが、家の母はどうだろう。
外に出て、自転車で学校に行ってる間、自分は色んな人を見る。疲れ切った顔のサラリーマン。小学校に行っている、小学生。様々な人を見る。なぜ見ているのか。自分でもよくわかっていない。学校に着くと、張り付くような粘っこい納豆のような。とにかくしつこい視線を感じる。時々笑う声も聞こえる。教室に入り、作業を始める。鉛筆と紙を出してひたすら描く。あっという間に自分の世界に入り込む。イラストの作成は、自分を別の世界へ連れてってくれる。その世界だけでは自分は安心してほっと一息つけるのだ。いじめ。それは絶対に解決しえない、社会問題だ。時々なろう系などでいじめられてる主人公がやり返してスカッとする展開があったりする。でも実際のイジメはそんなにスカッとする展開になることは望めないだろう。例え先生や、親に言ったとしても、親は、先生に言う。先生は学校のためにうやむやにしようとする。それで終わりだ。なにもしてくれない。
「相変わらずヘッタクソな絵を描くなぁ〜。」
その声を聞いて自分は日本に帰ってきてしまう。気づくと、時刻はもう8時20分。HRの時間間際だ。俺はその声を無視する。どうせ言い返したって意味のない。あたりからも同意の声が響く。へった〜クソ!へった〜クソ!へたくそ。その文字が頭の中をずっとぐるぐる回っていてうざい。そのうちHRが始まりあれだけ言っていた非難の言葉は一瞬にして消えた。いや消えてない、その言葉は自分の心にいつまでも。いつまでも残り続けるのだろう。
放課後に集団での暴行にあった後、帰りには雨が大降りで降っていた。朝の天気予報には雨の文字すらなかったのに。仕方がないので俺は学校で雨宿りしていた。何故自分には安心がないのだろう。どうしたらいじめられないで済むのだろう。などを痛む傷をおともに考えていた。そんな時だった。
「その時に僕は母さんと会ったんだよ。」
「へ〜そうなんだ!ねぇねぇ父さん早く続きを聞かせてよ!!」
「はいはい」
「母さんは僕を見て一言目にこう言ったんだ。」
「貴方も私と同じなんですね」
その声に驚いた俺はすぐにその場から後ろにステップした。後ろに水溜りがあるのもしらず・・
派手な音を立ててあっという間に体はびしょ濡れになった。
「なんなんですか?貴方?びっくりしたせいで体がこんなに・・・」
「すいません・・・。私も傘を忘れてしまったから言っただけですよ?そんな驚かれるとは・・・」
「なんだそうか。いや別に大丈夫ですよ。」
身体にかかった水をカバンに入れてたタオルで拭く。普通は痣ができた時にタオルで応急処置をするために持ってきたのだが・・・。
「雨・・・狐の嫁入りの由来って知ってます?」
そう聞いたのは彼女の方だった。よくよく見れば容姿はかなり整っていて、学校でもとてもモテてそうな顔つきだ。肩まで落としたロングヘアーがよく似合う。俺は急に何を聞いてくるんだと思ったが考えてみた。「狐の嫁入りといえばあれですよね?天気雨の別の言い方みたいな。」
「そう。それです。」
「狐・・嫁入り・・・狐が結婚するときの儀式が雨降らしみたいな・・・?」
「少し惜しいですが、正解は狐が結婚するときの行列を人間に見られないようにするため雨を降らせていると言う逸話があるからです。」
「そうなんですか」
適当な返事をしていると少し彼女の雰囲気が変わったように見えた。なんと言えばいいのか。静かで穏やかそうな顔に少し怒りがこもったように感じた。
「おかしな話ですよね。狐も隠し事をするんです。でも、それを聞いて初めて思ったのは人間みんな隠し事があるのかもと思ったんです。」
「はぁ・・・?」
少し意図が読めない。混乱する俺の頭に容赦なく彼女は言葉を続ける。
「貴方は隠し事がある人でも、その隠し事がどんなに変なことでも、素直に気持ちを受け入れて人を愛さと言うのは可能だと思いますか?」
「えーっと・・・その。」
言い淀んでいると雨が止みすぐに彼女は言った。
「すみません。訳のわからない質問してしまいました。私そういう癖があるんです。それでは雨も止みましたし。 さようなら。」
そう早口で捲し立てて、彼女は行っ・・・
いや待て名前を聞いていない。
そう思った頃にはもう姿は消えていた。
秘密・・・・か・・・・
秘密・・・自分的には永遠の課題だ。秘密をそもそも俺は打ち明けれないからだ家族にも、親友・・・はいないか、彼女はどういう意図で聞いたのか。あっという間に太陽が出てきて蜘蛛の巣についてる水滴に光が反射して眩しい。アスファルトにも少しついた水滴が反射する。光。俺には眩しすぎる。俺は所詮勇気がないだけの逃亡者なのだから。そう思いながら俺は帰路についた。
はい、第一章狐の嫁入り以上で終了となります。改めてこんにちは。冬月 夏八です。この小説は言うなれば新海誠様の天気の子、やスズメの戸締りのように少し、非現実的なことも追加した小説です。
なぜ名前も知らない彼女は、狐の嫁入り・・・秘密について話したのか。そしてここから物語は急展開を迎えます。次回もお楽しみにしてください。それでは!