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俺の父親

 田仲隊員は、司に負荷がかからない様に慎重にボートに乗せて対岸に渡る。

 医療資器材バッグの側でゆっくり仰向けに身体を倒すと、軌道に血が溜まり吐血する色と量から損傷部位を判断して手際よく手当を開始していった。

 

「ウゥ……痛い、痛いぃ……。ハッ、ハッ……。身体が焼けるように……あ、熱い」

 

 強い痛みが走るたびに体を動かす司を押さえながら無線機による会話を始める。

『……ガガッ!! こちら01田仲。医療班ポイントC3に急いで下さい! どうぞ』 

『……ガガッ!! こちら02医療班。間も無くポイントC3に到着します! どうぞ』

『……ガガッ‼︎ 02こちら01、了解 終わり』

 

 あえぐように呼吸を吐く司。応急処置はした。

 後は医療班を待つだけだが、このままでは痛みで暴れてしまい傷口が開いてしまう。

 体を押さえ続けるのも難しくなり、田仲は悩んだ末に判断をする。

 

「聞いてください! 今から部分的に局所麻酔を行います。痛みは少しはマシになりますが、あくまで麻酔ですので絶対無理をしないでください!」

 

「ハッ、ハッ……。頼む……早く早く……」

 

 司の返事と同時に針を刺す田仲。


「ハァハァ…… ありが……とう……」

 

<タッタッタッタッタ──>

──足音?

 対岸から髪の長い小学生らしい子が向かって来ているのに田仲は気づくと、救助に向かった子供だと判断しすぐさまボートを対岸に送る。

 

「落ち着いて、そのボートに乗ってください。ロープで引っ張りますので!」


 聞こえた通りボートに乗ると田仲によって無事に渡り終えた綾人は「ありがとう」とお礼を言うと司の元へ走っていく。

 追いかけようとしたが、対岸から杉坂3曹が戻ってくる姿を確認し、田仲はもう一度ボートを送り待機をすることにした。

 

──綾人は簡易ベッドの上で、もがき苦しむ司の横に滑り込むようにして座ると手を握る。

 

「ハァ、ハァ……とーちー!!」

 

「あや……と……どう……した……。ハァハァ……うかない顔して……」

 無理して笑う笑顔は、ぎこちない。

 

「もう話さないで……黙ってていいから……」司の手を更に強く握ると祈るように額に当てる。

 

 田仲は杉坂3曹が乗ったボートを引っ張りながら司に声が届く様に大きな声で話す。 

「後数分で医療班がかけつけます。お気を確かに!」

 

「ハァハァ……。心配ない……大丈夫だ」 

<ブホッ……ゴボッ!!>

 紅色の血が大量に吐き出される。

 

「とーちー……死なないで……」

 

「あや……と……」

 

「うん……」

 

 司は声を出すたびに、力を入れないと話せないのか何回も息を吸いこむ。

「フゥフゥ……み、見てたぞ……。成長したじゃないか……」

 

「うん……」

 

<ゴボッ!>顔を横にして喉に溜まる血を吐き出す。 

「ゼェ、ゼェ……菜桜子と……茉莉を頼む……」

 

「何弱気な事言ってるんだよ。もう話さないでいいから!」

 

「あや……と……俺は……」

 

「うん」

 

「俺は……」

 

「うん」

 

「いい父親に……なれたか……」

 

「何言ってんだ……。とーちー、とーちーは……」

 

「とーちーは、最高の父親だよ!!」

 

「ハハハ……」


「いやだ……死んじゃ嫌だ……もっと話したい事が沢山あるんだ!」

 

<ウゥ……、ゴボッ!!>

 大量の血を口から吐き出す。

  

「死なないで──と、父さ────ん‼︎」

 

司は閉じそうな目を大きく開き綾人を見つめる。

「父さんだって……」

 

そして綾人だけに聞こえる声で呟くと、目をゆっくり眠るように閉じていく。

「──最高だ」

 

<……ウゥ……ガタガタガタッ!!>

 司の身体は小刻みに震え天に向かって声を出す。

「アァアァ………………!!」

「アァ────!!」

「──」

 体から震えが止まり、呼吸をしない。

 

「あ、ああ……嘘だよね……。ふ、ふざけてるんだろ……!?」


「心臓マッサージ開始します!!」


「面白くないってば……」


「気道確保。フゥ────、フゥ────!!」

 

「返事してよ……」


「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10……」


「あああ、うわぁ────とーち──────!! はやく、病院に連れてって‼︎ はやく、誰か、はやく────────!!」

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