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まず、改めて今日この場を設けてくださった姫田グループと、担当の安達さんに感謝いたします。
本当にありがとうございました。
今回ご提案させていただいた企画は、姫田グループと、姫田グループがスポンサーになっている阿波ゼルコーバにとってのメリットになるものですが、それをわたしたちが提案することになったそもそもの理由は、わたしのためなのです。
わたしがサンバの楽器奏者としてのイベントデビューを怪我のためにふいにしてしまったとき、落ち込むわたしを力付けようと姉の祷が計画し、段取りを整えてくれたのです。
わたしは子供の頃から優秀な姉と比較されるのが嫌でした。姉に苦手意識を持っていました。
わたしは自分の名前が嫌いでした。名付けた母の考えや価値観は理解ができず、分かり合えないと思っていました。
母がこだわる姫田の姓も嫌でした。
仕事でほとんど家にいない父には何も期待できないと思っていました。
いろいろなものを諦めたわたしは、わたしが諦めてきたものをなるべく遠ざけ、小さな枠の中でささやかに生きていければ良いと思っていました。
わたしは、積極的に誰かと関わろうとはしてきませんでした。
そんな中、出会えたのがサンバです。
初めて夢中になれるものに出会え、初めて居たいと思える場所を見つけました。
でも、そのサンバがわたしの手の中から零れ落ちそうになったとき、それを繋ぎ止めてくれたのは、わたしに関わってくれた、多くの人たちの手によるものでした。
その中には、わたしが関わろうとしてこなかったもの、関わることを諦めてしまったものも含まれていました。
わたしがイベントに出られないと決まった日。姉はおそらくその日のうちにこの計画の絵を描き始めていました。
今年入学して同じクラスになって、最初に仲良くなった友人が、わたしとサンバを出会わせてくれ、そして今も姉妹でこの計画を助けてくれています。
今回ご提案のサンバパフォーマンスを実施するサンバチーム、『ソール・エ・エストレーラ』の代表を含め全メンバーは、新参であり学生の身分でもあるわたしたちの計画を、全面的に後押ししてくれて、今日もチームの代表としてこの場に臨むことを許してくれました。
仕事ばかりで家族に対してあまり意識を向けていないように見えた父。その父の仕事が積んできた信用と人脈で、今日安達さんのお時間をいただくことができました。
その根にあるもの。そもそものという言い方をすれば、母がこだわる『姫田』だったからこそ繋がった縁によって、今日のこの場が実現しました。